Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「生活」

 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の前売り券が発売されてみたい。
 第一弾は 第1弾 “アスカ” 貞本義行描き下ろしイラスト&特典:EVANGELION 50% BE@RBRICK 携帯ストラップ "アスカ” ver.で第二弾はレイverで第三弾マル秘まであるらしい、公開は6月27日ってことは月一回ずつverが変わるんだろうなあ、三回買ったら三回観に行くことになる、まあ観なくてもいいが商売としては上手いと言うか姑息と言うか、まあ買うファンがいるのでいいのだろう。まあ、なんだかんだ言っても観に行くわけだが。
http://www.evangelion.co.jp/


アスカ「そっか。私、笑えるんだ」
シンジ「僕はもう、誰とも笑えません」
マリ「・・・・そうやっていじけてたって、何にも楽しいことないよ」


 庵野監督の実写がわりと好きだったり、「ラブ&ポップ」と「式日」の空気感は好きだけど、でも実写で失敗している。
 最後の勝負で、あるいはガンダムが世代を超えて携帯の機種変のように変わるみたいに終わり損ねた80年の反復だった90年代を象徴することになってしまった「エヴァ」が与えてしまったものを回収、あるいは再構築するためにゼロ年代に新しい「エヴァ」を始めたんだろう、だって岩井俊二と対談してたマジックランチャーで二人とも「エヴァ」(庵野)と「スワロウテイル」(岩井)の続編やるとしたらは最終兵器だって言ってたんだけど。岩井さんが「スワロウテイル」の続編作ったら作ったでかなりショックだが。


「ねえ、シンジ。キスしようか」
「え? 何?」
「キスよキス」
「したことないでしょ」
「うん・・・」
「じゃ、しよう」
「ど、どうして?」
「それとも怖い?」
「怖かないよ。キスくらい」
「じゃ、いくわよ」


砂上に横たわっているシンジとアスカ。
何もせず、触れ合わない二人の手。


↑最初のシナリオでは「気持ち悪い」ではない。

THE END OF EVANGELION―僕という記号

THE END OF EVANGELION―僕という記号



 だいたい何かをやり直そうと元あったフレームで再構築しようとすると人は失敗する。


 「アムニジアスコープ」も中盤を越えた。この小説はなんだか読んでて自分自身が「アムニジア」=「記憶喪失」になったみたい。本当に読んでると古川日出男作品読んでるのと同じような言語体験。なんか掴めそうで掴めない、輪郭がわかるのに急にぼやける、でもなんらかのイメージや触感のようなものを残していく。


 「めちゃイケ」は小栗旬とナイナイの三軒茶屋ロケ。ツリボリでロケしてる時にその前を通ってバイトに行った時は機材車とか人がたくさん集まっていたけど、あのツリボリも放送でまたお客が増えるだろうなあ。「Summer Snow」での弟役が最初の印として残ってるけど「GTO」の方が先に出たドラマだったんだなあ。


 途中でナイナイと小栗と絡んだ森三中の黒沢はきちんと芸人でいることの事実。他の結婚した二人はもはやタレントに成り下がっていて、黒沢だけが面白いことができる。女芸人が恋をしたら終わりだと前からよく聞く言葉だが、彼女を見るとそれは真実だと思う。
 お笑いに関しては恋してキレイにかわいくなったら、どうしようもない、笑えないのだから。お笑いと言う分野でも音楽でもファン層は基本的に女性だ。お笑いのライブに行く人の多くは女性だ、音楽にしてもたいてい男がステージにいたらファンの多くが女性だ。女性がステージにいたらたいていの場合ファンは男の割合が増える、でも音楽は音があるからいいのだ。
 これは松本さんが言っていた「チ○コは見ても笑えるがマ○コ見て起つやつはいても笑うやつはいない」と言うことに通じるのかも。


 昨日はレジしてて殺意が、人がいないのは仕方ないにしても。なんで一番忙しい終電ぐらいのzero時ぐらいから急に一人で休むことなく30分間ぐらい連続で打ち続けさせられるのか、誰か客がケンカ売ってくれたら最高に申し分なかったのに、でいなくなった人はのんびりタバコを吹かしていたそうで、それは何より、もはや人として認識はしない。
 打っててストレスと怒りで足が貧乏揺すりみたいに震え出した時はもう無理だと思った。これで手当もねえし評価もされねえしってアホすぎてムカつくのを通り越して笑って、そこを越してずっとローテンションで解りやすい怒ったオーラと雰囲気で終始レジにいた。
 朝番の仕事探してしばらく中番して辞めていくか、深夜でもまだなんか楽しいものか自分になんらか得られるものをした方が精神的にいい。このままだと精神バランスが崩れたら、悲惨だ。
 最近レジ中に浮かぶ物語が暴力的なことと陵辱的なことばかりでもう何かが崩落しかけていることは目に見えている。だけど僕自身が暴力を振るったり陵辱的な行為を犯さないのはしたとしてもその先のことがきちんとイメージできる、想像が働くからだ。働かなくなったら終わりだ、だからその物語を書いたりするということは僕に取ってなんなのかと問うならば答えはある。


「初心者のための「文学」大塚英志著より
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20080728


 現実には人は人を殺してはいけない、しかし、同時に人はある場合において「形而上的」に、かつ「象徴的に」人を殺すことは必要なのだと村上春樹はいうのです。


 つまりここで人を殺してはいけない、と主張することと、人を殺す表現を混同してはいけない、と言っているのです。人を殺す表現をやめてしまえば、もしくは禁じてしまえば、人は人を殺さなくなる、というほどに人も世界も単純ではありません。むしろ、人が殺され血を流す物語は描かれ続ける必要があるのです。


 物語が作中で人を殺し続けることは象徴的にそれが行われ続ける必要があり、そして、人はあくまでも象徴的に人を殺すのだ、ということの意味を考えるためにそれらの物語はあります。だから、村上春樹もぼくやぼくと同じように人殺しの原因と名指しされた作者たちもまた人殺しの物語を書き続けていかなくてはならないのです。世界が「現実」であり同時に「象徴」であり続けるために、です。


 だからぼくは現実の世界の戦争に反対し、そして物語の中で人を殺し続けるのです。
 
 
 没になった映画のノベライズコンペに出した僕のノベライズ。


 瞬間、目を閉じる。瞼の裏は毛細血管が透けるような赤だった。汗ばんだ首に冬の渇いた風が当たり気持ちがいい。耳たぶよりも少し伸びた髪が風に踊らされている。
 目を開けると人工的に作られた様々な色で溢れた世界。資本主義に利用されるだけの赤と白の祭典クリスマスで街は賑わっている。
 そんな新宿の繁華街の大通りを愛車の「FLOVAL FLYER」で一気に走り向ける。1980年代に生まれた傑作24インチクルーザーだと買う時にBMX専門店の店員に言われたが今22歳の久遠圭、彼は周りからはケインと呼ばれている。彼にはどうでもよかった。生まれたのが80年代後半のケインには懐かしさなどなく、全体的にブラックで統一されたデザイン、サドルと前輪を支えるフォークとハンドルバーの対照的な白さがよくて一目惚れして買っただけだ。
 ブラックに染まりきれない車体が自分とダブらせると思い始めたのは買ってから乗り始めて少し経った頃だった。彼は本来彼女だった。
 少し眺めの睫毛、アーモンド型の大きな目ときりりとした二重、大きくもなく小さくもない鼻、きりっとした形よい唇。男性にも見えるが女性にも見えなくもない、中世的な雰囲気を醸し出していた。
 ケインは歌舞伎町のおなべクラブで働いている性同一性障害の女性で体はイジっておらず、恋愛対象ももちろん女性だった。
 歩道を歩くコートやダウンジャケットに身を包む歩行者達を避ける様にケインは車道を駆け抜ける、できるだけスピードを上げて。
 フライターグの朱色のナイトライダーという肩がけバッグからイヤフォンのコードが伸びている。聴いているのは以前客として来た中学校で音楽教師をしていると言っていた40過ぎの女が教えてくれたチャイコスキーの「序曲1812年」だった。
 最初は眠いありきたりなクラシックだと思っていた。家で聴いていて眠りそうになったケインだったが、曲が次第に盛り上がり、後半部分では本物の大砲の音が聴こえてきた時には「なんなんだ、この曲は」と思った。それからは無性に大砲の音が聴きたくなったりすることがあり聴くようになった。
 「序曲1812年」が脳内に響く、コルネットトロンボーンが伸びきって演奏される、そして管楽器群、弦楽器群、打楽器群が咆哮していく。それに後押しされるかのようにケインが車道をBMXで駆けると面白い様に車が端に避けていく。車が左右に避けた道を不思議に思いながら走る。今、一発目の大砲が耳元で発射された。
 ケインの後ろを救急車が緊急を知らせる赤いライトとサイレンを鳴り響かせながら近づいてくる。ケインはその不穏な空気を感じて後ろを振り返る。左右に避けた自動車の間を救急車が走ってきている。ケインは体の重心を左側にかけて救急車を避ける、救急車はケインの横を走り向ける。スピードを落としたBMX、左に寄っていた自動車達が動き出すのに邪魔される形になって端に停まる。
 ふと空を見上げると青い空に白で縁取りされたような真昼の月が浮かんでいた。視線をまっすぐに戻し救急車が行った先を見て再びペダルを踏み出す、車輪がスムーズに動き出しそれが軽快な音を生み、ケインの体に伝わってくる。


 高層ビルがこれでもかと空に近づこうと伸びている西新宿のビル群の一角にある新宿中央公園。昼過ぎでこの界隈のビルに勤めるサラリーマン達が束の間の休憩をしているが、周りは救急車とパトカーが到着しており、警官が威嚇するように立ち、サラリーマンやOLが食事帰りに立ち止まり何事があったのか興味深そうに覗いていて普段とは違う慌ただしさだった。
 救急車を追って来たケインはBMXにまたがったままで様子を窺っている。名前負けしている新宿ナイアガラの滝が見える。ケインは遠巻きに警察や救急隊の動きを見る。黄色いテープが張り巡らされ警官や鑑識が草むらの中で現場検証をしているのを大勢の野次馬が取り囲んでいた。野次馬の一人が「うわっ、すげっ、あれ死んでんじゃねえ?」と言いながら指を指した方向に腹から大量の血を流しているスーツを着た浮浪者が倒れている。見るだけでは物足りない野次馬はその現場を携帯の写メで撮っている。誰に見せるというのだろうか、腹から血を流した浮浪者の画像を。「どいつもこいつもくだらない、お前が代わりに刺されりゃよかったんだ」とケインは心の中で軽く毒づく。
「あのー、通報された方いらっしゃいませんか?」とまだ二十代半ばに見える健康そうな警官が周囲に聞いている。浮浪者は担架に乗せられて運ばれていくが途中右手がだらんと垂れて、事の顛末を野次馬たちに語る。浮浪者にしては奇麗な、垢で汚れていないすらりと長い指を持つ手だった。
 担架に運ばれる際も野次馬達は写メを撮り、仲間内で興奮しながら話をしている。日常の中にふいに乱入した腹から血を流して死んだ浮浪者を前に気が昂っているのだろう。
「すごーい! こーゆーの初めて見たー」とどこか不自然な高い声がする、その声の主は綾乃だった。見た目は女性のなりをしているがある種のコスプレの趣味が高じ、本来持ち合わせていた人にうまく取り入る処世術を活かしておカマになった男だった。性転換もしていないし、恋愛対象も女性というエセおカマだった。しかし、彼女の仕草は少し大げさに見えるが女性のそれだった。口を押さえる手は綺麗にネイルアートされておりピンクのラインストーンできらびやかに彩られている。服装も歌舞伎町を歩いている風俗嬢のような紫色のモンクレールのダウンジャケットにミニスカート、ブラックのレザーブーツでしっかりと戦闘態勢の状態だった。
 そんな綾乃とは対照的な格好の女が野次馬の中に佇んでいた。上半身は男物の少し大きめな赤色のナイキのジャージで下は高校の制服のスカートを履き、背中の真ん中ぐらいまである長い黒々した髪を後ろで束ねている18歳の小雪だ。ジャージの首元は何度も洗いクタクタになり、少しほつれている。その目は真っ赤で泣きはらしたような顔で浮浪者が運ばれていく救急車の方向を見ている。野次馬達は救急車が走り出すと興味を無くしたように散り散りと去って行く。小雪は浮浪者の木元が倒れていた場所を凝視している、赤で染まっていた地面が少し黒色に変わっていた。誰も小雪に気付かない。遠巻きに成り行きを見ていたケインも小雪には気付かないでBMXを漕ぎ出して立ち去っていった。


 新宿のビルとビルの間によく見かける小汚い外見の飲食店。ここもまた同じように両隣をビルとマンションに挟まれている中華料理屋「龍宝」。テーブル席が六席とカウンター席があるが昼時の店内の席はほぼ埋まっている。新宿で店を構えて二十年近く経った店内は品があるとはいえない、壁は煙草の煙と調理の臭いなどで薄汚れていて元々の壁の上に一枚茶色のベールを被せたような色合いになっている。
 厨房では太った中国人店長が中華鍋を振っている。黒い前掛けには店名「龍宝」と金色で入っている。丸々と肉付きのよい顔だが、奥にくぼんだ目と低くつぶれたような鼻からは店長の厳しい人柄が表面に出ているようだった。その横で大きめな中華包丁で次々と野菜を刻んでいくバイトのヨンビン。店長と並ぶといつもより人の良さそうな温和な顔が強調される、いつも笑っているように見えるので時折店長から怒られたりもする。
 ホールから空いた皿を下げに来るケイン、私服の上に店長達と同じように店名の入った前掛けをしている。ケインは流しでそのまま溜まった皿やコップを洗い始めると店長がイラつきながら言う。
「ビビはどこに行った?」「白菜買いに行きましたけど」とヨンビンが笑顔で答える。「すみませーん」とホールから客の声がして天の助けとばかりヨンビンが「はーい」と返事をしてケインを見る。ケインは皿を洗いながら面倒くさいなといった表情になる。
「白菜に何十分かかってんだ」杖をとり悪い右足を引きずりながら歩き出し「サボテンじゃないのか?」と語気を強めて店長が言う。
「サボテン?」と皿を洗いながらケインは聞き返す。「そこらでサボってんじゃないのか?」と返され、ヨンビンが「見てきますよ」と言うがそれよりも先にケインが「あ、オレ行ってきます」と厨房から出ていく。
 天井からは豚肉の塊がぶら下がり、積まれたダンボールからは白菜が飛び出ている、散らかっている食料庫。
 地を這うような冷蔵庫のモーター音と男女の荒い息づかいが聞こえる。食料庫の扉をあけてケインが入って来る。隙間からビビのほっそりとした足と店長の奥さんであるママの太く短い足が見えて二人がバックでセックスをしているのが想像できた。またかよとうんざりしながら「ビビ!」と呼ぶと「わっ」と驚いたビビは腰の動きを止めてゆっくりと物の間から紅潮した顔を出した。無表情のケインと目が合う。少し安心したように「・・・・ケインか」とビビが言うと「仕事」とそっけなく言って食料庫のドアを閉めるケイン。


 岩井俊二氏からすると僕の文体(このノベライズ)はラップのようなものらしい。だからどうしろと?


Syrup16g「生活」

静脈

静脈

動脈

動脈

the last day of syrup16g [DVD]

the last day of syrup16g [DVD]