Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『恋愛小説』

 今朝、下北みたいな場所を自転車で帰っていたら歌声が聞こえて窪地にあるカフェで曽我部さんが歌っているからおりてライブ見るという夢を見た。で、ライブ終わりに曽我部さんに近づいていったら「ああ、碇本くん」って言われた所で目が覚めた。
曽我部恵一「汚染水」【Official Music Video】




 大盛堂書店さんで椰月美智子さんの『恋愛小説』の文庫が出たので買いに来たら今月の推し文庫だった。前にハードカバーは貸してもらって読んでいたので文庫になったら買おうと思っていた。けっこう分厚い。
 その時に読んだ感想は椰月さんってリア充なんだなっていうか、たぶんそういう単語とかも気にしないという意味で本当にそういう人なのではないかという。椰月さんの本で最初に読んだのが『ガミガミ女とスーダラ男』だったのもあって、気さくな方なんだろうと思うし同時に本音でガツガツ言える人でもあるんだろう、同時に細かい部分を無意識に見れているというか拾える人だからこそ書ける小説だなと。
 『恋愛小説』は男性の受けが悪いとか言ったらしい書評家の人がいたとかいないとか、たぶんその人は気づいてない。小説を書いている男が、書きたい男がこの作品を読んで嫉妬する事を。これってすごく書いてみたい恋愛小説の形なんだけどやっぱり男性作家ではどうしても書けないというか辿りつけないものがある。書ける人はおそらく同性愛者の方だったりとかするんじゃないかなあ、女性と男性の作家は異性を主人公に書いたりできるけどこの小説にあるものはやはり男性作家では辿り着けないものがあると思った。
 主人公の美緒が二股というかズルいとか共感できないとかいう人も中にはいるだろうけど「はい、この人と別れた。だから次に付き合おう」てなるか? 気になったる時点でラインでもなんでもいいけど気あるよアピールとかデートじみたものをするのが女性だけではなく、男女どっちもするわけで、彼氏がいても彼女がいてもどうしようもないとりあえず行き場のない気持ちをはぐらかすようなセックスだってするわけで、で体の相性とかよかったらさ、付き合ってる相手ともうセックスもしないし、しててもマンネリで冷めてたりしたらそっち行くよね、やっぱりさ。でも、めんどくさいのは付き合ってる人への愛着だったりするわけで、これが所有欲だとか諸々さ、どうでもよくなってても別れるとかなると出てくるわけだから揉めるわけですよ。
 ぬおー、三角関係になっちゃうねみたいな。で、その自分の想いとかを彼も好きだけどサスケも好きだしさって美緒はなっていって、そういう時にズルいとか僕はあんまり思えなくて。人間ってそういうものだよなって納得した。美緒みたいな彼女と付き合っていたらもう振り回されちゃうね、イライラしちゃうね、でも別れられないんだろうなあ。で自分がサスケだったら相手に対して申し訳ないけど超うれしー、でも同じようなことが起こるのかなとか思っちゃうね。美緒という人物と他の登場人物たちの恋模様の書き方とその後の話を同じような文章の中で書いていく。何年か後にあの時はみたいな話が挿入されるのでこれは過ぎ去った恋だったものなんだなとわかる。
 彼女や彼はいまを生きているんだ、今読んでいるこの恋物語を得て今はどんなになってんだろうなって思う。僕はそういうエピローグや登場人物のその後みたいな文章がすごい好きなんです、だって生きているっていうか現在進行形があって中には死んだりする登場人物もいるんだけど、僕らだって今を現在進行形を生きながらもたまに過去を振り返ったりするじゃん。過去っていう地層の上に立っていて戻れないのを知っていると同時に前を向いて今をなんとかやっていくことしかないのだから。
 椰月さんの小説は今を生きている感じがするんだよなあ。この作品とは窪美澄さんの『よるのふくらみ』と併読するといいではないかなって思った。どちらも欲望についての話だと思うから。『恋愛小説』についてはもう一度読んで感想を書いてみようと思います。



 春日太一著『なぜ時代劇は滅びるのか』もゲット。大盛堂&ブックス・ルーエ&八重洲ブックセンター本店合同フェアな文春の目崎さんに新潮の金さんの選書もよろしくです!

曽我部恵一 BEST 2001-2013

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ガミガミ女とスーダラ男 (講談社文庫)

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恋愛小説 (講談社文庫)

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よるのふくらみ

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なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

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