つい最近ようやくアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『トータル・リコール』を観た。顔が分かれていくあの有名なシーンとか知っていたけど全部をきちんと観ていなかった。
数年前に仲俣さんにハヤカワSFを何冊も貸してもらってフィリップ・K・ディック作品を読んでてハマったというか好きな作家になってから何冊も読んだが彼の作品の映像化したものに興味はあまり沸かなかった。まあ、夏だしド派手なアクションというかリメイクした『トータル・リコール』が公開するからじゃあ前のも観ておこうと。ついでに原作である『追憶売ります』も収録されたディックの短編集『トータル・リコール』も読んでいたのでまあそういう展開の中で。
日付が変わる前に上映が始まる回に。さすがに十人ぐらいのお客さんだったかな。TOHOシネマズ渋谷にて。
監督: レン・ワイズマン
原作: フィリップ・K・ディック
出演:コリン・ファレル、ケイト・ベッキンセイル、ジェシカ・ビール、ビル・ナイ、ブライアン・クランストン、イーサン・ホーク、ジョン・チョー、スティーヴ・バイヤーズ、ボキーム・ウッドバイン、ウィル・ユン・リー、カリー・グレアム他
ストーリー:容易に記憶を金で手に入れることができるようになった近未来、人類は世界規模の戦争後にブリテン連邦とコロニーの二つの地域で生活していた。ある日、工場で働くダグラス(コリン・ファレル)は、記憶を買うために人工記憶センター「リコール」社に出向く。ところが彼はいきなり連邦警察官から攻撃されてしまう。そして自分の知り得なかった戦闘能力に気付き、戸惑いながらも家に帰ると妻のローリー(ケイト・ベッキンセイル)が襲ってきて……。(シネマトゥデイより)
旧作というかアーノルド・シュワルツェネッガー主演版と多々違う部分もありますね。まず旧作の舞台は地球と火星で主人公は行った事のない火星の夢ばかり観て悩んでいて記憶を売っているリコール社で火星の夢をって感じでそれをやろうとしたら実は彼は本当に行っていて消された記憶が甦ってしまい、おまけに妻(シャロン・ストーン、超綺麗)はそれを監視する役目だった。彼の現実は植え付けられた嘘の記憶と世界だった。つうわけで王道SFな火星に向かうみたいな展開で妻は追いかけてきます、もちろん。今作は火星設定はない、それは原作がそうだったので今作は原作のよう部分は踏襲されていない。
『トータル・リコール』は夢に悩まされる男が記憶を買いに行こうとリコール社に行くと封印された記憶が甦り彼の記憶を消したものたちとの戦いと彼が彼自身を取り戻していくというのが物語の基本的なライン。元々短編なんで映画作るとなるとかなりオリジナルなアイディアを盛り込みながら原作の要素を活かすことになる。
今作は世界が戦争後に汚染されて住めなくなっている。ヨーロッパの一部とたしかオーストラリアぐらいな場所のみに人間は住んでいてヨーロッパのブリテン連邦みたいなとこに住んでいるのはエリートというか富んでる側でオーストラリアのコロニーみたいな場所は貧しい人達が住んでいる。この二つのエリアを高速地下トンネルで繋げていて超巨大なビルみたいなものが十数分でその距離を運ぶ、労働者であるコロニー側は毎日それに乗ってブリテン連邦で働いて帰っていく設定。 SFでよくあるような宇宙トンネルがそれに変わってる感じだった。
火星がブリテン連邦な感じなんで前作にあったようなミュータントとか基本的なSFな感じは薄い、ただおっぱいが三つある前作に出ていたような女性も出てくるし、あのシュワちゃんが化けていたおばちゃんオマージュもある。
コロニーはなんかこちらもディック原作の映画『ブレードランナー』の冒頭の未来都市なのに日本食みたいな店とか文化が近未来と西洋と合体してるみたいなアジア文化を合わせてたいたけど今作は韓国や中国的なアジア文化と西洋が合体してる感じかな、ハングル文字っぽいのも見えたし。
主人公であるダグラス・クエイド / ハウザーと夢に出て来ていた黒髪の女、と監視の妻の役割は近いが今作の妻役のケイト・ベッキンセイルの鬼妻な追い込んで来るあの感じは怖すぎる。まあ偽装というか嘘だけど最凶の夫婦喧嘩しかも世界の命運をかけての。ヒロインというか主人公と行動を共にする黒髪のメリーナ役のジェシカ・ビールもよかった。
ダグラスとメリーナを繋ぐ手の傷、これが最後まで大きな意味を持つ伏線になるのだが久しぶりにこんなにわかりやすい聖痕が活きてるの観た気も。
前作を踏襲するのはしてる部分大きいがただミュータントは出てこないのでクワトーというお腹に子供がついてるようなそれが本体みたいなのは出てこないし火星の酸素を巡る話ではなくブリテン連邦が住む場所を拡げるためにコロニーを征服しさらに自分達の富をひろげようとするのを阻むという感じで最終的に守るものや目的は大きく変わっている。
今作は建設業者で働いてなくてロボットを作っている工場で働いていてそのロボットがなんか集団で最後はコロニー目指してやってるんだが、それが『スターウォーズ』画置いソード1か2とかに出て来たしょぼいロボット兵をフォルムカッコ良くした感じであの辺りはそれのオマージュなのかなって思ったり。
その電車にも似た空間トンネルでの戦いは無重力になったりとかして『インセプション』みたいな感じになったりかなりSF映画のいいとこをアクションで随所に使っているように思える。普通に観てて楽しいしブリテン連邦ではホバーカーっていうか空中浮いて走ってる自動車や街が空中に浮いてたりとか近未来な映像で楽しい。
戦いのシーンはダグラス・クエイドがかなり強いけどアクションも見応えがある。手に電話が入っていてもはや固体としての電話ではなく手を電話代わりにしてたり、ガラスとかにその電話が入ってる手をあてると映像が浮かんだりしてパソコンとかテレビ電話みたいにもなるとかスマフォを知ってる僕らにはなんかこういうのがもう少ししたら来る未来なのかなって思えるビジュアルもよかった。
最後に夢落ちか?みたいな引っ張り方をどう裏切るとかあるんだろうけど例の伏線が活きてきたりとか、でも最後に看板にうつる文字は・・・みたいな感じでディックの思い描いた世界観をうまく映像化できていると思った。
ただディックがずっと書いていた自分とは何者かという自分ともう一人の自分、メタフィクションで書いた多層世界感は薄れているし今作で主人公が失われた記憶を探すしわかってどう行動していくか、過去は過去で現在の自分がみたいなのはあるんだけどディック作品ほどのそういうものへの強い何かはあまり感じられない分アクションとか映像がそれを満たしているような気がする。
そんなに内容も難しくないので楽しく観れる映画だと思う。面白かったし楽しめた。この勢いでディック原作の『ユービック』『スキャナー・ダークリー』を新解釈で新世代の監督で映像化してほしい。『ユービック』はある種コメディチックな方が面白そうな気は前からしてる。
映画『トータル・リコール』予告編第2弾
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