友人の三浦くんに誘われてアップリンクに『この空の花 長岡花火物語』を観に行った。三浦くんは仕事で遅れたので三浦くんの友人で一度お会いしたことのある相野谷くんと待ち合わせし映画を。公開自体は五月ぐらいなんでもう公開自体はだいぶ少なくなっているみたいです。たしかにこの作品の事を行ってる人が言われていたのはよくもわるくもぶっとんでいるということ。
だいぶ前に『シネマハスラー』でなんか聴いてたなあってぐらいの前情報で観る。
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20120609_hustler.mp3
出演:松雪泰子、高嶋政宏、原田夏希、猪股南、寺島咲、筧利夫、森田直幸、池内万作、笹野高史、石川浩司、犬塚弘、油井昌由樹、片岡鶴太郎、藤村志保、尾美としのり、草刈正雄、柄本明、富司純子他
ストーリー:新潟県長岡市に暮らす昔の恋人だった教師の片山(高嶋政宏)から、生徒が創作した「まだ戦争には間に合う」という名の舞台と花火を見てほしいと手紙で伝えられた地方紙記者の玲子(松雪泰子)。その機会を生かし、彼女は東日本大震災の被災者を迅速に受け入れた同地の様子も見て回ることに。市内を旅する中で不思議な出来事と人々に次から次へと遭遇する玲子は、それらすべてが空襲や地震から立ち直ってきた長岡の歴史と密接にかかわってくることに気付く。やがて彼女の旅は、過去、現在、未来といった時間を超越したものへと変わっていく。(シネマトゥデイ)
大林宣彦監督といえば大御所ですが僕はきちんと作品を観た記憶もなくようするにこの作品がきちんと観る大林宣彦作品だったわけですがこれはもう情報の大渋滞のような作品でした。
長岡の花火の話をしていたと思ったら爆弾と花火の構造は同じであるということから長岡に落とされた戦争の爆弾の話、戦争でそこ出身の山本五十六の話、爆弾からの原子力爆弾からの震災からの長崎、広島の原子力爆弾が落とされた話、長岡には模擬原子力爆弾が落とされたこと、京都はAAの原子力爆弾を落とす候補だったこと、かつての恋人に長岡の花火を観にこないかと誘う片山(高嶋政宏)からの手紙をもらった長崎に住んでいる玲子(松雪泰子)が長岡に向かいそこで出会う新聞記者の和歌子(原田夏希)が取材した戦争体験者の話、片山が高校の先生でそこでやっている演劇部の顧問に戦争の舞台がやりたいと言ってくるいつも一輪車に乗っている花。そして戦争を元にした演劇とかつて戦争中に背負っていた幼い我が子を失った女性の戦争体験の紙芝居、そして長岡花火を作っている花火師の一族の話、その人の祖父からの花火の歴史、リメンバー・パールハーバーな日米の戦争の傷痕をいかに回復するか、花火師が戦争後にソビエトに抑留されていたことなどがもう縦横無尽に混ざり合うという情報過多がすごい。しかもテロップで戦争って言ってるシーンでも下に戦争とかそういう単語出まくりですよ、おまけに片山や玲子がナレーション言ってるのかなって思ったらふつうに歩きながら言ってるなと思うと彼らがカメラ目線で観客に語りかけてくる!!!という荒技をかましながら花火師や紙芝居をされてる方のモデルの実在の方へのインタビュー映像が挟まれて行く。
もうなにがなんだかわかりません、なんなんでしょうこの作品はぶっとぶ過ぎててもはや途中から笑えてくるけど同時にすげえ怖い。なんでこうなるんだっていう境界線を越えてしまった創造を目の当たりにしてビビる。
まあ、一言でいうとこれは小説のマジックリアリズムを映像化したらこういうことになるんじゃないかなと。現在と過去が交互とかじゃなくてね、タクシー乗ってる玲子の横の道を模擬原子力爆弾が落ちてなくなった農家の人達が通って行って彼女に手を振ったりして現在と過去が画面の中に同居してるし、ずっと一輪車に乗ってる花は紙芝居をしている老婆の娘だし、でも一歳でなくなってるのに高校生で老婆の横にいるし〜、まあ一輪車に乗ってる少女は完全にこの世のものではないのがこの世のものな人達と普通に交流しちゃってるし!
やっぱりリアリティラインが完全に崩壊してる。最後の方のナレーションは大林監督自身がしてたりとかするし、長岡から出資とかしてるはずなんだけどたぶん尾道みたいな観光映画になるようなものを期待していたはずだ。これはよくもわるくもすごいとこに行ってるんだけどこれ観て長岡行って花火みたいとは思えないよなあ。
高嶋さんが玲子と別れた18年前の雨の日の回想のシーンで玲子が急に「わたしたち戦争なんて関係ないのに」とか言い出すし高嶋さんは「戦争!」って言うし「痛いな、この雨痛いなっ!」とか言う台詞があってなんなんだろうこれはって。
あと山下清さんが冒頭に出てきて長岡花火の切り絵が出てきて花火師のじいちゃんが山下さんが来た時に実際邪魔だって追い払ったらしいんだけど作中の中で山下清を演じるがたまのドラマーな石川浩司さんなんですよ、で花火師のじいちゃんは柄本明さんなんだけどこれは最近柄本明さん出過ぎでちょっと味があるじじいを柄本さんだけにオファーしすぎじゃね?映画界よと思う所もあります。
映画体験としては面白いと思う。よくもわるくもぶっとんでて確かにこんな映画は観た事がない。
が、戦争についてこれだけ言及し過去の歴史とその地方の、ここでは長岡花火と結びつけて現在に結びつけて未来に生きる子供たちに想像力を託そうとするのならばもっと観やすいほうがよくないか、全方向に散乱銃を撃ちまくってるようなまとまりのなさは否めないし嫌悪感すら沸いてしまう可能性が高い。
震災後に自然災害の地震の問題より原発の問題が大きくなってしまった。背景はいろいろあるんだけど日本は基本的に自然災害で過去に記録されるように大災害を乗り越えてきた国で日本人の思想や文化の根源にはそうやって儚さをもっている。家屋は紙や木で出来ていて基本的には朽ちて行くものか文化財のように何十年に一度土台などを入れ替えて存続させていく。それはこの国が自然災害で何十年、何百年に一度は地震や火山の爆発によって暮らしが奪われてきたからだ。それでも失われた後にはまた作り直して再建し未来に繋げてきた。しかし今回の原発の爆発は失われた後にほぼ作り直す事が不可能に近い、あるいは何世代もかかっても終息が難しい。
映画の中ではパールハーバーの事が出てくるがそれならもう少し日米の関係というか戦後のアメリカが日本にしたことも描くっていう阿部和重「神町サーガ」や『ニッポアニアニッポン』とか彼なりの天皇小説であり日米の関係を描いた小説のようが射程距離も広いし深く感じる。震災後に僕のなかで阿部作品がまた強く響くのはこの状況において日本を考える時にどうしても戦後の日米関係から考え直していくことが始点になるから。
長いレンジで歴史を繋げて現在へ落とし込む、多層的な世界をメタ化する表現は速度が遅いはずの小説がやはり向いているのだとよく思う。本当に『シンセミア』と古川日出男著『聖家族』における震災前に描かれたはずの東北をめぐる物語のその先がどこに向うのかが僕としては一番気になる。
観終わったあとに三浦くんと合流して三浦くんに映画を薦められて来ていらした脚本家の金子二郎さんと僕らで飲みに行ってこの作品についてトーク。金子さんの脚本された『ギャルバサラ』が面白そうなので近々借りて観ようと思います。
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