作家の渡辺淳一氏が亡くなったらしい。と聞いて最初に浮かんだのは『週刊ポスト』で連載中の樋口毅宏さんの『愛される資格』だった。
樋口さんがオマージュすると復活するか『タモリ論』みたいにいいとも終わるとかポスト連載の『愛される資格』は渡辺淳一氏オマージュと言われていたし。青山真治さんの『ユリイカ』が九州のバスジャックや園さんの『紀子の食卓』のレンタル家族とかその後起きた事件を予感してたみたいになってるよなあと思った。
作家として時代の空気みたいなものを無意識に先に書いたり予見してたみたいに数年後とか少し時間が経つとわかる作品を出すときはエッジが利きすぎてる状態なんだろうか、同時多発的に同じテーマや題材を扱う人が出てくるのとはまた違うセンサーかもなあ。なんて思ったり。
元ネタはチャールズ・ブコウスキーの『死をポケットに入れて』なんだけど。大盛堂書店さんでやらせてもらっているフェアにブコウスキー『町でいちばんの美女』を選んだ。ブコウスキー読むならやっぱり『町でいちばんの美女』と『ありきたりの狂気の物語』の二冊だと思う。
外文で選んだのはこちら↓
25・レイモンド・カーヴァー『頼むから静かにしてくれ』
村上春樹作品は苦手だけど村上春樹訳のカーヴァー作品は大好きです。映画専門学校時代にシナリオの先生にお前はカーヴァーを読めと薦めてもらって読んでから彼の短編小説の面白さに気づけた。アメリカ人作家のアル中とかそういう作家の狂気が滲む日常への視線の切れ味に惹かれてしまう。
26・フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
僕が生まれた年になくなったディック、その年に公開されたこの作品が原作の『ブレードランナー』で死後、評価が高まることになるその皮肉。新装版の装丁は最高だが、タイトルがモジられて幾度も使われるということが本当にすごいよこのネーミング。
27・ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』
アメリカにおける移民の作家たちの活躍が注目される中で日本の読者が入りやすいのはジュノ・ディアスだろう。この作品は非モテをテーマにしながら日本的オタクカルチャーを持ち込んでいるのにそこに母国の歴史が同時に描かれている。アメリカは移民という外部からやってきた視線から描かれる事で今の多民族で様々なものを内封した現在を描かれたがっているようだ。
28・ジェファニー・イーガン『ならずものがやってくる』
二十数編の短編で成り立っているが時間軸がズレていたり登場人物たちが交互にリンクしていたりして物語の細部を繋げることで長い時間を丁寧に描いていて本当に巧いと思う一冊。連作短編集の中でも珠玉の作品だと思う。いつかこんな物語を紡ぎたい。
29・マイクル・コーニイ『ハロー、サマーグッバイ』
震災以後に読むと意味合いが変わってしまう作品というものはあるのだけどこの一冊も変わってしまった一冊だった。SFのボーイミーツガールの最高峰とも言われる作品だがやはりラストシーンについては読んだ人と語り合いたい。
30・デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』
読んだ時にカーヴァーやブコウスキーを連想させる短編集なのだが、キレッキレで最低な人間ばっかりなのになんだろう、この勢いとかああ僕もこの中にいると幻惑的に思ってしまうのは、人間の本質を書いてるからか? 君の中に咲いた欲望と絶望を見る。
31・フォークナー『八月の光』
三回読み始めて挫折して四回目で読み終わった時には買ってから数年経っていた。読み始めて進んで行くと正直混乱する。フォークナーという作家に対峙するには最低限いろんなものを読んでからのほうがいいのかもしれない。登場人物たちが交差していくが読み終わるとひとつの町に何年か住んでいたような気にすらなる。
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』よりも最初に選んだのは『スキャナー・ダークリー』と『ヴァリス』だけどこちらも絶版みたい。で変えたり他の作家さんに変えた。『ヴァリス』で僕が読んだのは創元社のものだけど今月に新訳版がハヤカワから出るのですごく楽しみ。
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