監督・ジェイソン・ライトマン 脚本・ ディアブロ・コディ
出演・シャーリーズ・セロン(Mavis Gary)、パトリック・ウィルソン(Buddy Slade)、パットン・オズワルト (Matt Freehauf)など
あらすじ・37歳になるメイビス(シャーリーズ・セロン)は自称作家だが、現在はゴーストライターとして“ヤングアダルト”(少女向け小説)を執筆中。バツイチで恋人ナシ、心の友はアルコールと愛犬という彼女はある日、一通のメールを受け取り、故郷へ帰ることに。昔の恋人バディ(パトリック・ウィルソン)と再会するメイビス。いつまでも大人になれない、そんな規格外の彼女が大騒動を巻き起こした果てに見つける“真実”とは……。(goo映画より)
解説・「JUNO/ジュノ」の監督・脚本コンビ、ジェイソン・ライトマンとディアブロ・コーディが再びタッグを組んだ作品。30代後半を迎えいまだに大人になりきれない女性が主人公で、高校時代は周りがうらやむほどの美しさと才能を持ち、自分中心に物事が回っていた主人公。しかし退屈な田舎町を出て20年近くたてば、現実との落差が彼女にも忍び寄ってくる。田舎町に戻れば、みな目の前の現実と折り合いをつけ、幸せそうに暮らしているが、彼女はそれを理解できない。(goo映画より)
前に『キラキラ』で町山さんが去年の年末にこの作品について話していて気になってたので昨日仕事終わりに友だちと観に行ってきた。冒頭でダメ女な主人公はヌーブラを外すというシーンがって聞いててなんかその感じ観てみたいなって思ってた。
2011年12月23日(金)映画評論家 町山智浩さん
今日は、シャーリーズ・セロンの体当たり演技が見どころ!
「アカデミー主演女優賞候補になるだろう。」と町山さんも注目している映画
「YOUNG ADULT(ヤング≒アダルト)」を紹介!
http://podcast.tbsradio.jp/kirakira/files/20111223_machiyama_kora.mp3
かつての恋人に子供が生まれそのメールが届いたメイビスは捨てたはずの田舎に舞い戻りその元カレと復縁しようとする物語。
現在はゴーストライターとして都会で生活をしている女性が主人公だが人の痛みなどをさほど気にしていない人物で彼女にとって高校時代や大学時代は黄金期だった。美人で才能があってモテていたその頃から彼女は大人になれていなかった。
故郷に帰りバーでかつての同級生の男性(彼女にはあんた誰?と言われるが三年間ロッカーが隣だったのにもかかわらず!)と出会う。
彼は杖をついているイケていないマットという人で彼は高校時代にイケイケだった彼女たちがセックスをしていたような学校の裏の森でゲイ扱いされ(実際は違うのだが、ホモちゃんと彼女も高校時代に言っていたっぽい)同級生に暴行され膝を破壊され脳も陥没させられ男性器も正常な状態として機能しないほど傷めつけられ半年学校に来れなかったという思い出したくない過去がある。
彼女にとっての輝かしい過去と彼には思い出したくもない過去。ただ、その田舎町でメイビスの同級生たちは普通に年を取り結婚したり子供を持っている。
マットは結婚していないが密造酒を作っていたり障害者としての苦悩を抱えていきている。彼もまた痛々しい過去としての高校時代から逃れられないでいる。
大人になった同級生たちの前に高校時代の黄金期に捕われたメイビスが現れるが同級生たちはきちんと年を重ねているのにメイビスはあの頃のままで浮きまくるし、次第に彼女にその後(離婚とかetc.)起きた嫌な出来事が出てきて暴走を始める。
マットに元カレのバディとの復縁計画を話すことで次第に高校時代に捕われた二人は少しずつ気持ちが似通って気の知れた仲になるのだけど、そのある種の結末も僕には痛々しかった。
自意識の問題と人はどう大人になっていくのか。はたして誰でも大人になることはできるのか?
Teenage Fanclub - The Concept, Truck Festival 13
メイビスが田舎に向かう車の中で聞くカセットテープに入っている曲↑を何度もリピートする。彼女にとっての黄金期のBGMだから。そしてこの曲は後半にまたしても出てくるのだがその時の彼女の態度がまた・・・。
あと何度もネイルサロンに行って手や足の手入れをするシーンが出てくる。彼女からすると化粧も完璧、ふだんはハローキティがプリントされた服とか着てるけどバディに会う時とかパーティの時とかキメキメでそれが田舎で普通に父親や母親になっている同級生の前で浮くうく。
観ていてすごく痛い気持ちになった。単純に彼女を笑って痛いやつだなと思えない自分が間違いなくいる。
まあ僕に黄金時代や絶頂期なんてものやモテ期もないのだけど彼女の自意識の問題や浮いている感じはなんだかわからなくもないのだ。
メイビスが後半に「幸せが見つからないの」と言う。他人からすれば美人で都会で物書きなんかになっているある種未だに羨望の眼差しで見られている彼女は幸せが見つからないという。
他人が求めるものと本人が求めるものは違う、あまりにも違ってしまっている。あるいはメイビスの同級生たちはすでに持ちえているものを彼女は一生手に出来ないと思っているのかもしれない。
断絶に似た何か。
故郷に帰って十代の想い出や栄光の中で生きていた自分(の延長線上の勘違いをし続けている)ときちんと年齢を重ねている同級生たちの間にある溝と現実を見せつけられてようやくあの頃と故郷を捨てれるような感じ、まるで遅くやってきた通過儀礼のようにメイビスは元居た場所に戻って行く。
だけども冒頭の彼女とは違い少しだけ呪縛されていた過去から開放され自分なりの「幸せ」を見つけるために都会の自分の場所に戻って行く。
この作品90数分のはずなんだけどそれよりも長く感じのはなんだろう、テンポもいいのに。きっと彼女の抱えたものとそのギャップの現実を見せられて時間の感覚が普通よりも重くスローリーに感じられたのかもしれない。
これ日本でもできるだろうなって思った。ただ、日本だと彼女みたいなドレスアップをするか?とか昔の同級生に会う時にオシャレしてほぼ半乳出てますやん!みたいな格好もしないだろうしシャーリーズ・セロンが美人すぎるんだよなあってのもあるけど毎年アホみたいにジブリ作品を再放送するぐらいなんだからこういう映画とか作ってもいいんじゃないかなって思うんだが。
『魔女の宅急便』なんかは女の子の通過儀礼の話だからなあ、宮崎駿作品は民族学的なモチーフがあるから『千と千尋の神隠し』とか他にも諸々。どんだけ大人になれないんだ、この国はとか毒づいておこう。僕も大人になれないのだけどただジブリは嫌いだ。
『ヤング≒アダルト』は僕みたいな人には痛い所を突かれるような作品だった。ひょっとしたらだいぶ経ってまた観たいと思うのかもしれない。
最近はこないだ頂いた樋口毅宏著『日本のセックス』と今度の読書会の課題書である香港の作家の董啓章著『地図集』と白石一文著『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』を平行で読んでます。
董啓章は「香港のボルヘス」と言われているみたいだけど最初に収録されている作品の『少年神農』って過去の神話みたいなのと現在の物語を結びつけている作品はすげえ面白かった。他の二作はまだ読み始め。
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