Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『ヒューゴの不思議な発明』

 朝起きて『フォーゼ』の録画したのを見ながら時計を見ると九時過ぎ。なんか映画観に行くかなと思いTOHOシネマズ渋谷のサイトを見た。
 こないだ『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』観に行った時に予告で観て気になっていた『ヒューゴの不思議な発明』の時間を見ると十時前に初回、チャリ飛ばせばなんとかなるとwebでチケを取って着替えて246の坂をチャリで上って映画館に。チャリ本気で漕いだら十数分後には道玄坂だった、息が切れる。


 予告で気になるのは原作好きな『宇宙兄弟』で予告の作り方が上手いので予告だけ上手い事になってなければいいなと思う。
 あと『白雪姫』を原作にしているシャーリーズ・セロンが邪悪な女王で出演している『スノーホワイト』と第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが実はヴァンパイア・ハンターだった!という内容の映画『エイブラハム・リンカーン:ヴァンパイア・ハンター』のやつね!


ヴァンパイアハンターリンカーン』 - オリジナル予告編 (日本語字幕)


シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』本予告

↑前作の映画は観てないけどこれも面白そう。リンカーンのとかは予告映像流れてないけど今年やるよみたいなアナウンスあってホームズの予告観たら日本でやるとしたら明治維新ぐらいの頃で洋服を着始めた日本男子とまだ着物の女性もいる世界で伊藤博文とかが物怪を狩るとか、そういう民族学的な物語をカラフルでスペクタルな作品とか面白いかもって思ったけどそれ大塚英志原作の『三つ目の夢二』がほぼそれじゃんって思い直した大塚英志脳orチルドレンな僕。



監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:エイサ・バターフィールド、クロエ・モレッツ、サシャ・バロン・コーエンベン・キングズレージュード・ロウなど


ストーリー(あらすじ)
世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの冒険ファンタジー小説ユゴーの不思議な発明」を、マーティン・スコセッシ監督が3Dで映画化。駅の時計台に隠れ住む孤児の少年ヒューゴの冒険を、「映画の父」として知られるジョルジュ・メリエスの映画創世記の時代とともに描き出す。1930年代のパリ。父親の残した壊れた機械人形とともに駅の時計塔に暮らす少年ヒューゴは、ある日、機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持つ少女イザベルと出会い、人形に秘められた壮大な秘密をめぐって冒険に繰り出す。主人公ヒューゴを演じるのは「縞模様のパジャマの少年」のエイサ・バターフィールド。イザベル役に「キック・アス」「モールス」のクロエ・モレッツ。2012年・第84回アカデミー賞では作品賞含む11部門で同年最多ノミネート。撮影賞、美術賞など計5部門で受賞を果たした。(映画.com)


 3Dで観賞。まあ立体的だあと思ったのは最初の頃だけで別に3Dじゃくてもさほど問題はない気もする。





 駅の時計塔に暮らし駅の時計のゼンマイを巻いたり点検している孤児のヒューゴが出会った老人と父の形見として修理をしていた機会人形を巡る物語で最初はわりとミステリー的な物語かと思っていたら老人の孫娘っていうか老人夫妻と住む少女のイザベルと出会って老人の過去と機会人形が動き出して描いた絵を謎を解き明かして行くんだが、最終的には映画賛美な感じに物語は終結していく。


 主人公のヒューゴのエイサ・バターフィールドの表情は『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスを思わせるような瞳というか表情があったように感じられた。僕だけかもしれませんが。
 ヒロインのイザベルは『キックアス』で有名になったクロエ・モレッツが演じていてまあキュート。ボーイミーツガールな感じになるのかなって思ったけどそうでもなかったかな。





 大人になったねえ〜ってまだ15歳かよっ。


 今作では巨匠マーティン・スコセッシ監督の映画愛というかリスペクトが最後の方で爆発してますけど↑な「『映画の父』として知られるジョルジュ・メリエスの映画創世記の時代とともに描き出す」ってありますけどそりゃあ批評家から絶大な支持を集めるよって思う。そこに家族でも楽しんで観られる内容に映像的な面白さがある。今作には『映画は夢を見せる』というメッセージが根本にある。


 一番気になったのは鉄道公安官をサシャ・バロン・コーエンが演じている事だった。出た瞬間に笑いそうになった。『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』『ブルーノ』で彼にハラハラドキドキ大爆笑させられていた僕にはツボ。




 ↑同一人物です。最低で最高に面白いモキュメンタリー作品。ブラックジョークすぎて面白くて怖い、アイロニー満載で人間の本質とかえぐるしタチが悪い。二年前の誕生日に『ブルーノ』観に行って爆笑しすぎた。
 彼ははロンドンのハマースミスで中流階級の家庭(正統派ユダヤ教ユダヤ人家庭)に生まれている。彼のモキュメンタリー作品を観ると文化的なテロリストのようにも感じられた。


 樋口毅宏著『テロルのすべて』のレヴューにも書いたんだけど<アラン・B・クルーガー『テロの経済学』によると「貧しくて教育レベルが低いひとがテロリストになる」というのは間違ったイメージで実はその真逆で「少なくとも中流以上。教育を受けてきたエリートがテロリストになる」>ってのと彼のイメージが重なる。


 公安官の制服もコスプレにしか見えなかったけどおいしい役どころだった。いいスパイスだなあ、日本だと鳥肌実さんが近いタイプだろうけどタブーに挑みすぎてるけどきちんと演技もできるんだなって。
 彼はアカデミー賞会場の入り口のグリーンカーペット(だっけ?)で独裁者の格好して骨壺に金正日の遺灰っていうの(という設定)を入れたのを持ってそれをレポーターにぶっかけてその人に『君は今金正日を着ているねっ!』って言ったらしい。でアカデミー賞の会場には入れなかったらしいけどね、役者で呼ばれてたのにね。

 
 映画自体は面白かったです。ただ映画は夢を見させるってのはわかるんだけどなあ、僕は創作物に関してはそれだけではないとずっと思っているのでそれだけでは足りないと思う。


大塚英志著「僕は天使の羽根を踏まない」文庫版あとがきより


 少し前、物語の中途で現実を突きつける類の小説が嫌いだ、と、ある優れたノベルズ作家が書いているだか発言したらしい、と誰かのコラムで読んだ記憶がある。ああ、それは例えばぼくの書いてきた小説のようなものを指すのだろう、と思った。作者は読者が小説のページを開いている間は読者が現実ではない世界を生きる権利を保証すべきだ、というのが多分、その作家の考えるプロとしての作家なのだ、と思う。それはそれで正しい。しかし、ぼくは中途でしばしば物語ることを放棄するし、読者に小説の外側の世界をいつも突きつけようとする。なるほど、しばしの間、夢を見ていた読者にとってぼくは迷惑で無責任な小説家なのだろうが、しかし、ぼくにとって小説は夢を見せるためではなく、醒めさせることのためにある。
 それは小説だけではなく、まんがや批評めいた文章や、あるいは大学の教壇で授業をすることを含めて、ぼくの表現はすべからく、夢を見せるためではなく、夢から醒めさせるためにある、と言える。


 僕は大塚英志さんの影響をずっと受けているのでこの考えに賛成というかこれが創作物には必要だと思っている。
 放射能が舞う世界で現実の先にある夢を見るためには現実を見据えた上で次の世代や幼い子供が現実と地続きの夢を見れるための環境作りや大人の姿勢が必要だと思う。その時に夢ばかりを見させても仕方ない、現実を見据えてからその先に夢があるべきだと思う。


 だから去年の夏に試写で観てから2012年の今年暫定一位なのが園子温監督『ヒミズ』なんですよ、僕には。園さんはいつだって今ある現実の先を見据えて作品を作り出している、過去の事件や出来事にインスパイアされていても現在とその先に向けて物語として構築している、できる作家だからこそ届くしエッジがあるのだと思う。


 『ヒューゴの不思議な発明』は素敵な映画だと思うし、映画賛美な部分もあって歴史を掘り起こす感じがあるので映画好きには評価高いのもわかる。だけど一つだけ言わせてほしい、ヒューゴは機会とか老人の過去への気持ちを修理はしたけど不思議な発明なんかしてねえよっ! つうか修理工であって発明家じゃねえし!


 明日はシャーリーズ・セロン主演『ヤング≒アダルト』を仕事終わりに観に行きます。こちらもかなりの評判なので気になっていたので。


 数日前に小沢健二のUst見た感想としては悪い意味でかなりヤバい。復活した前のライブCD三昧組ともろもろ付いたボックスを売るという過去の縮小再生産で金集めは普通に考えておかしい。なぜファンはニューアルバムを作らない事に抗議しないのか。
 ナタリーのライターの名前を出して諸々指摘してるあの感じはその辺もチェックしてるぜ的なアピールは本当に計算高くクレヴァーだなと思う反面、ある種の脅しに似ている。
 アルバムを出そうと思えば出せたけど出さなかった発言もオリジナルアルバムを『毎日の環境学: Ecology Of Everyday Life』以降出してない時点でそれは言うべきではないと思う。


 渋谷系の王子様は旅に出て王になって帰還したと前のツアー最終日を観た後にブログに書いたんだけど違うのかもしれない。
 彼は九十年代とその頃の想い出の中で抱いているオザケン像だけを愛するファンたちの想いという檻にずっと幽閉されている王のようだ。旅立って戻ってきても彼はそれに捕われている、檻の外のファンには新しいアルバムなんかいらないよ、九十年代の王子様でいてほしいという願いを聞き入れたらご飯は食べれるのだから。ファンは愛おしいオザケンを真綿でずっと首を締め上げ続けている。


 拝啓 小沢健二さま 


 あなたはその檻から幽閉された場所から飛び出して九十年代を捨て去って現在進行形のニューアルバムを作り上げそのツアーをするべきだ。
 昭和はとっくに終わっている、九十年代も過ぎ去った。なのに終わらない昭和と終わらない九十年代の中で死んだように生きるぐらいなら真綿で首を絞め続けるファンを殴りつけて黙らせて消え去るべきだ。


 僕は今回のツアー「東京の街が奏でる」で新しい小沢健二の曲が少しでも多く聞けるのならば本当に嬉しいのだけどね。

三つ目の夢二 1 (リュウコミックス)

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bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD]

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テロルのすべて

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僕は天使の羽根を踏まない (徳間デュアル文庫)

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