Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『百瀬、こっちを向いて。』


監督・耶雲哉治
出演・早見あかり/百瀬陽、竹内太郎/相原ノボル(15歳)、石橋杏奈/神林徹子、工藤阿須加/宮崎瞬、ひろみ/田辺真治、向井理/相原ノボル(30歳)他




人気アイドルグループ「ももいろクローバー」の元メンバーで女優の早見あかりが初主演を飾った青春映画。人気作家の乙一が、別名義の中田永一として発表した原作小説を映画化した。新人文学賞を受賞した記念に母校から講演を依頼された30歳の小説家・相原ノボルは、卒業以来15年ぶりに帰郷し、当時を回想する。冴えない高校生だったノボルは、ある日、尊敬する先輩の宮崎瞬から、ショートヘアで野良猫のような鋭い目つきの美少女・百瀬陽を紹介される。瞬には学校のマドンナ的存在の神林徹子という恋人がいたが、百瀬と付き合っているという噂が流れて困っており、ノボルに百瀬と期間限定で付き合うふりをするよう提案。ノボルと百瀬は嘘の恋愛関係を始めるようになるが……。自身も恋愛小説家として活躍する狗飼恭子が脚本を担当。監督は本作がデビュー作となる耶雲哉治。30歳の小説家になったノボル役を向井理が演じる。(映画.comより)




 新宿ピカデリーにて鑑賞。原作の中田永一乙一)さんファンの友人とともに。レディースデイだったためか劇場自体は非常に混雑していた。基本的にはバルトで済ませてあとはテアトル新宿とかに行くので久しぶりに来たがやはりこのシネコンは非常に作りが悪いというか悪すぎると思う。まあ、改善しようにもできないと思うが。


 上映二週間ほど経ったぐらいか。原作の小説は乙一さんが別名儀である中田永一名義で出してヒットした作品であるし、元ももクロメンバーだった早見あかり主演の恋愛ものということで最低限の需要はある作品だと思うし、僕はももクロにはてんで疎いので中田永一原作だし観に行こうかなって思っていた人。劇場は水曜日というもあるだろうが女性の比率が高かった。


 小説家になったノボルが地元に戻ってくる。そこで駅を降りているとある広告が目に入る。明らかに意図的に主人公であるノボルが気づくので当然ながらなにかあるんだろうなと思うと過去と未来を繋げる回想と駅から出て再開した子連れの神林徹子とお茶をしながら現在の景色と展開されていく。
 乙一さんっぽいなと思うのはやはり後半のほうのダブルデートで徹子が瞬に渡すある花だろう。冒頭の喫茶店での子連れの徹子の娘がさくらでありさくらの花言葉をすらすらと言える彼女があの日渡した花の意味を作家になったノボルが花の本を買って調べてあの日のあの頃の出来事のもうひとつの側面がわかるというのは乙一さんっぽいなっとやはり乙一さんを角川スニーカー文庫で読み出した僕としては思う場所であったりする。


 青春ものならではというのは少女であるひとりの女の子が大人の女に変わっていく端境期にフィルムに残すと言う部分だろう。僕は彼女の顔と名前ぐらいしか知らなかったけどやはりその時期にある彼女が青春映画に写ることが画面から伝わる。明るさとなにかどこかしら不満そうでもあるその顔の変化は十代の少年だったノボルに僕ら観客には眩しい。

 
 そんな百瀬と付き合ってるふりをするはめになったノボル。十代の男女が好き嫌いと別にしても手を繋いだり一緒にいれば想いが芽生えても大事になるのは至極当然でもある。だけど、想いについて考えたり自分の想いの先を知っていてどうにもならないからこの状況であるという時にやはり想いの行き先はこの状況を作り上げた、展開してしまった人物に行き着いてしまう。物語はどうしてもそこに向かっていく。


 ノボルの友人であり共にレベル2である友人の田辺を演じる第二PKのひろみがとてもいい。作家になったノボルと話している大人になった徹子が中村優子さんなのだが、キレイなお母さんだけど向井理と向き合うと高校の二個上って設定にしては二人が向かい合っていると高校の先輩後輩にどうも見えなかった。ごめん、そこは僕には大人になった二人がどうも見えなかった。だけど、故郷だからもちろんとある田舎だろうし先輩はずっと外に出ずに子育てをしているならば僕と同学年ぐらいの32、3歳ってことだから老けてみえるっていうかそういうことでいいのかな。なんか僕には先輩後輩な感じよりも親戚の年の離れたお姉さんと向かい合っているみたいに感じられた。




 早見あかりと小説家の柚木麻子は顔と声の系統近い気がした。なんとなくだけどね。
 作家が書きたい過去の青春だなあという感じもあった。現在と過去をというあの感じだと浅野いにおの短編集『世界の終わりと夜明け前』収録『東京』にも近しいものがあるね。

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

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