Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『八日目の蝉』@ビルボードライブ東京

 乃木坂にある東京ミッドタウンにて三池崇史プレゼンツ第三回『大人の空間』inビルボードライブ東京に昨日夜行ってきた。
 前回の第二回は三池崇史監督×園子温監督×役者の吹越満さんのトークの後に園子温監督『冷たい熱帯魚』を観賞した。
 で、ロッキンの雑誌『CUT』にて三池×園対談が掲載された号を買ったわけだが、すごく久しぶりに『CUT』買った。で、後ろの方の試写会プレゼントに第三回『大人の空間』の三池監督×永作博美トーク後に『八日目の蝉』を観れるのがあったので応募、まあ当たるという不文律で観に行ってきた。


 友人の編集者の朱江ちゃんとビルボードライブ東京にて待ち合わせし軽くビールを飲みながら始まるのを待つ。前回も司会してた映画会社のお姉ちゃんが出てきて三池監督と永作博美さんが舞台に登壇し始まる。



 三池さんは夏休みぐらいに公開される自分の実写版の映画『忍たま乱太郎』の宣伝も挟みつつトーク。詳しい内容は→「第1子を出産した永作博美、『八日目の蝉』で見せた母の演技に三池監督も「各賞を騒がせる」と絶賛!!

 永作ちゃん顔ちっちゃ、手が細くて長い感じの全身を使って話す感じだった。三池さんはマイペースというか前回観た時の感じかなあ。永作さんは本谷有希子の舞台『幸せ最高ありがとうマジで!』で一度観た事がある程度。
 前回のゲストだった園子温監督作品だと映画『気球クラブ、その後』や『時効警察』でアネゴ探偵寂水先生やってたりする。






スタッフ
監督: 成島出 原作: 角田光代 脚本: 奥寺佐渡
キャスト:井上真央永作博美小池栄子森口瑤子田中哲司市川実和子平田満劇団ひとり余貴美子田中泯風吹ジュン


ストーリー:子どもを身ごもるも、相手が結婚していたために出産をあきらめるしかない希和子(永作博美)は、ちょうど同じころに生まれた男の妻の赤ん坊を誘拐して逃亡する。しかし、二人の母娘としての幸せな暮らしは4年で終わる。さらに数年後、本当の両親にわだかまりを感じながら成長した恵理菜(井上真央)は大学生になり、家庭を持つ男の子どもを妊娠してしまう。


 角田光代さんの原作本も読んでなくてNHKでやっていたドラマ版も観ていないというほぼ内容知らないままで観賞。席は前回の反省を活かして一階はトークを間近で観れるんだが映画が観辛かったので今回は二階のスクリーンのちょい右寄りのところで。


 三池さんも言っていたがこの作品はわりと男としてはしんどいというか痛い。この作品にある彼女たちが背負わされてしまう事は男性(作中では田中哲司さん、劇団ひとりが演じている彼女たちの妻子ある不倫相手)の身勝手さが招いている。それに対しての母性というものが到底太刀打ちできるものではないと。


 原作を読んでいた朱江ちゃんと観賞後に話した所に寄れば原作をけっこう飛ばしているみたいらしいのだが違和感もなく物語として上手い作りだったなあと思った。地震以後涙腺がさらに弱まっているので二回ほど泣いてしまった。


 血の繋がりは本当に大事なものなのだろうか? 血というどう足掻いても切っても切れない呪詛でありあるいは救いであるこの鎖。不倫相手の子供を誘拐し俗世間から関係を切っている新興宗教団体に逃げ込んだ希和子。


 僕が好きな野島伸司脚本『世紀末の詩』において血の繋がらない親子について百瀬教授が言った印象的な台詞がある。


『愛とは、時の流れに関連があるんだろう。同じ時を長く過ごし、互いに呼吸をし、それが互いの肉体の細胞に加わる。だから引き離される時、血の滲むような肉体の痛みをも伴うだろう』


 希和子はとある新興宗教団体から逃げ出しそこで仲の良かった友達の実家を子供を連れて尋ねる事になる。舞台は最初に東京、その後大阪に、そして友達の実家の香川へ舞台を移す。


 ここで岡山からフェリーに乗って香川に行く二人なのだが、希和子が手に持っている紙袋が天満屋! ここ中四国出身の人間からするとリアリティあるわというかナイス小道具さん。と物語に関係ないことを思ってました。


 子供を誘拐して捕まるまでの希和子と大人になった恵理菜の現在が交互に展開されるのはいいと思う。ただなんだろう写真屋の親父役の田中泯さんの無駄遣いな感じというかあんな鍛えているというのがわかるしなやかな肉体を持った写真屋が田舎にいるだろうか?


 わりと重要な役の小池栄子が男性恐怖症的な感じなんだが、彼女も本谷有希子舞台(劇団、本谷有希子 第15回公演『甘え』)で観たけどその時は実の父に脅えている女性という役柄だったんだけど彼女の脅える感じの挙動不審な演技ってリアルな感じも多少するんだけどどうも笑ってしまいそうになるんだよねえ、なんだろう顔と雰囲気がツボに入りそうなのと『恋愛寫眞』でのサークルクラッシャー的な映画をぶち壊したあのイメージが抜けない。


 希和子と恵理菜をある意味では同じ境遇にした事で物語としてはまあそうなるよねとは思うんだけど母性というものの逞しさと力強さが感じられる良作だった。
 希和子が捕まる時に恵理菜の事に関して言ったあの台詞はやっぱり「母」になるというのはそういう事なんだろうと思った。


 年齢的にも同級生とかが出産して親になっているんだけど子育てをしているお母さんが観ると僕とはまた違った感想になるんだろうなと思う。まあ、不倫してるカップルで行くのだけは絶対にオススメできない作品でもあるが。


 85点とかぐらいっすねえ、なんとなく。公開は月末から。


 終わった後は乃木坂から表参道まで青山霊園の夜桜を観ながら散歩しながら話しながら歩いた。で昨日のわりとデカめの地震は電車の中だったのか歩いている最中だったのかまったく気付きませんでした。


 昨日は斉藤和義さんの『ずっとウソだった』が話題になってたけど今ustでライブ配信してる。さっき仙台の話になって伊坂幸太郎さんの話になった。伊坂さんは『幸福な朝食 退屈な夕食』を聴いて作家になろうと思ったんだよね。


斉藤和義 幸福な朝食 退屈な夕食

八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)