Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『ノルウェイの森』


ストーリー
青いパパイヤの香り」「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」のトラン・アン・ユン監督が、村上春樹の世界的ベストセラー小説を映画化。37歳のワタナベトオルは、ドイツ行きの機内でビートルズの「ノルウェイの森」を聴き、18年前の青春を思い出す。当時ワタナベは、親友キズキの恋人・直子に恋をしていたが、ある日突然、キズキは自殺してしまった。キズキを失った喪失感から逃れるように東京の大学に進学したワタナベは、ある日東京で直子に再会するが……。


キャスト:松山ケンイチ菊地凛子水原希子高良健吾玉山鉄二霧島れいか
監督・脚本:トラン・アン・ユン 原作:村上春樹


 読書会のメンバー四人で渋谷シネタワーでお昼に観に行ってきました。↑のストーリーはwebからコピペしてますが、「37歳のワタナベトオルは、ドイツ行きの機内でビートルズの「ノルウェイの森」を聴き、18年前の青春を思い出す。」ってありますがそれは小説の冒頭で映画ではそんなシーンねえよ!とは言っておきます。


死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。


 上記の言葉は小説の上巻のわりと早めに太文字で出てくる一文です。

 
 小説を読んでいるとまだわかりますが読んでいないと唐突に感じられるシーンなどが多々ありますし、映画として面白いかと言えば面白いとは思えない、監督は村上春樹の大ファンだとしてもこれではいかがなものかと思う。


 まずは主要人物ではないサブキャラのエピソードを削りすぎている。ワタナベと同じ部屋の寮生である 柄本時生演じる「突撃隊」のエピソードはない、彼は急に居なくなるだけでワタナベとの関係性は描かれない。
 そしてワタナベと直子を繋ぐものであるレイコの過去のエピソードがまったくない。正直彼女の悪魔のような女の子との出来事は小説でもかなり読み応えあるし、レイコが診療所に入ったことや最後のワタナベとの事に繋がるだけに、それがないのに急に子供と旦那の話が出てくる。そんな話一切今まで出てこなかったんですけど?みたいな。
 

 ワタナベが直子から緑に惹かれるのも正直伝わらないし、直子にはある種の責任感があるって風になるが、ワタナベが揺れ動くとか緑に惹かれているのが伝わらないだけにヤンデレな女よりも健康的な女の子選んだだけじゃんみたいな、葛藤伝わらない。
 親友であったキズキが死んだ事。彼の側に引きずられる直子。キズキとは違い生きることを選ぶワタナベ。直子のシャドウのような緑。
 だいぶいろんなシーンをカットしてしまっていると思う。脚本ダメだろうと思った。本当にこれで村上春樹さんはOKを出したのか?


 エグゼクティブ・プロデューサーに亀山千広の名前をエンドロールで観た時に思った、ああ、「世界の亀山モデル」だ、手にアマルフィー状態だと。


世界の亀山モデル」とは、亀山が「制作」としてクレジットされている映画を称して言う。オリジナルはシャープ・アクオスの宣伝フレーズから。
 TBSラジオの『ウイークエンド・シャッフル』内のザ・シネマハスラー宇多丸が使い始めた。(宇多丸本人は「亀山さんはいい映画もプロデュースしている」と前置きしている)いわゆる2000年代に大きなヒットを飛ばしたテレビ局ドラマのビジネスモデル。演出や脚本に粗がある作品でも、多額の制作費+テレビを用いた大規模な宣伝で押しきって高い興行収入を出すビジネスを揶揄している。


 観終わった後にHD読書会メンバーでいつものようにルノアールで茶をしながら感想言ってたけど、村上春樹早稲田大学で過ごした時期が舞台になっているから学生運動とかあった時期でそれもシーンとして出てくるけどその必然性ってあるのかな?と。


 現代に置き換えてやったってよかったと思うし、監督が村上春樹リスペクトしているとしても大事な部分は零れ落ちているようにしか思えない。
 伊坂幸太郎作品を中村義洋監督が映像化するような大事な部分はきちんと押さえながら映像化するために変える所は変えていくことをしていない。
 

 伊坂作品の台詞を実際の人間が言うと違和感があるのを脚本できちんと変えることをしないと無理がある、違和感が残るのをきちんとしてるように村上春樹作品の台詞を実際の人間が言うと絶対に違和感が出るわけだが・・・。


 松山ケンイチはがんばってたと思うよ、まったく・・・。菊地凛子はきつかったなあ、水原希子は確かに可愛かった。レイコは小説読んでる時はがたいのいい女性を想像してたけど演じた霧島れいかさんはキレイな感じの人だった。


 菊地・水原・霧島のワタナベに関わる女性がみんな胸がないって言うのは・・・、ダメじゃないかな。で、セックスシーンとかで誰も胸出さないってどんなセックスだと。喘ぎ声だけデカイし、エロさがないっすぅ。


 雪原で直子がワタナベにフェラチオしてるシーンをかなり上空から撮ってるシーンなんだ? いるのか? 何してるかわからないぐらい離れて撮って意味あるのか? 『ブラウンバニー』ぐらいやるならやってくださいよ、まったく。


The Beatles - Norwegian Wood (This bird has flown)


 タイトルのビートルズノルウェイの森』の曲が全然活きてない、レイコがギターで弾くの一回だし、ある種の鎮魂歌としての意味とかないし、小説では冒頭に、そして鎮魂歌としての意味があるからいいけどこの映画では意味がない。


 終わりぐらいのレイコとのくだり観ながら映画化されたカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』はどうやってんのかな、観たいなって思ってました。


 この作品は映画館で観なくていいと思います。監督助手に専門の同級生の名前があったけどこれはレンタルになった時でいいと思います。はい、きっと脚本がどうしようもないと思います。小説の表面をなぞって映像化しただけなんで小説読めばいいと思います。


LOST IN TIME - ひとりごと(PV)


 ロストのアルバムを借りました。久しぶりに聴きましたがロストはいいなあと。だいぶライブで観てないなあ。


 人間は生きていけば亡霊のような幽霊と共に生きていくものだし、死んだ人はその年齢で止まるのに自分は進んでその差が開いたり追いついてしまう。僕たちは過去という幽霊と共に死に向かう生き物で、ふいにそちら側に堕ちたり、そっちに逝ってしまった人に引きずられて自らそちらに行く人もいる。


 逝ってしまった人は苦しんでそちら側に逝ってしまったりどうしようもない力で逝きたくなてくも逝かざるえないのだけども、問題はいつも残された者が引き受けていくしかないということ。
 いつだって残された側の方が問題にずっと付き合っていかないといけない、だからこそ残された側には優しさと少しのユーモアが必要になる。


 30年近く生きても優しさとユーモアってなかなか難しいよね。


今年『クッキーシーン』に書いたレヴューです↓。


古川日出男『MUSIC』書籍(新潮社)
http://www.cookiescene.jp/2010/05/music.php


世界の終わり『Earth』(Lastrum)
http://cookiescene.jp/2010/05/earthlastrum.php


くるり『僕の住んでいた街』(Speedstar)
http://cookiescene.jp/2010/06/speedstar.php


東浩紀クォンタム・ファミリーズ』書籍(新潮社)
http://www.cookiescene.jp/2010/06/post-60.php


グループ・イノウ 『_』(GAL)
http://www.cookiescene.jp/2010/06/--gal.php


オアシス『タイム・フライズ...1994-2009』(Sony Music
http://www.cookiescene.jp/2010/06/19942009sony-music.php


浅野いにお『素晴らしい世界〜浅野いにお初期オリジナル作品集完全版〜』(小学館
http://cookiescene.jp/2010/07/post-75.php


ペルシャ猫を誰も知らない』映画(ムヴィオラ
http://cookiescene.jp/2010/08/post-78.php


ザ・ミイラズ『Top Of The Fuck'n World』(Mini Muff)
http://cookiescene.jp/2010/09/top-of-the-fuckn-worldmini-muf.php


快快(faifai)『Y時のはなし』DVD(Headz)
http://cookiescene.jp/2010/09/faifaiydvdheadz.php


リトル・ランボーズ』映画(Stylejam)
http://cookiescene.jp/2010/11/stylejam.php


KIMONOS『Kimonos』(EMI)
http://cookiescene.jp/2010/11/kimonoskimonosemi.php


ドラゴン・アッシュ『MIXTURE』(Victor)
http://cookiescene.jp/2010/12/mixturevictor.php

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 オリジナル・サウンドトラック

ノルウェイの森 オリジナル・サウンドトラック