Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『失われた日々のあとには祝祭を』

 世界の終わり「Heart the earth Tour FINAL」@Shibuya O-WESTで観てきた。バンド・世界の終わりを観るのは初めてだった。
 メンバーはギター・ボーカルの深瀬慧、ギターの中島真一、キーボードの藤崎彩織、DJのDJ LOVEの四人からなる。


 観客の層としては大学生ぐらいが中心、まあそれは僕らが二十代前半の時にライブに行っていたことと同じ流れで就職し結婚しと次第にライブに足を運んで行かなくなる、行けなくなるので注目されている若手バンドのライブに来る客層が若いのは当然で、彼らが支持する、できるバンドは次第に大きくなっていく。


 彼らのアルバム『EARTH』については「世界の始まりとストレンジ・ニューワールド」や「クッキーシーン」に書いたレヴューとかで書いてはいるんだけど。


「幻の命」from「EARTH」』より


 昨日朝にcharlieがツイートしてた「CINRA.NET」の世界の終わりインタビューを読むといろんな事がなんとなくわかってくる。DJしてるLOVEが二代目だとか。彼らはライブハウスをしてて、「世界の終わり」というクリエイティブカンパニーでもある。コミュニティで世界と向き合おうとしているような感じがする。


 彼は、charlieは「世界の終わりの「幻の命」って、そうとうクレイジーで怖さのある曲だと思っていたのだけど、CINRAのインタビューを呼んでいろいろと合点がいった。彼らはとても10年代的なバンドになるのだと思う。」と書いている。


 でも、デイケイドの始りか前のディケイドの終わりには次の十年代を代表するような人たちが出てきたりするなって思う。1999年にDragon Ash椎名林檎宇多田ヒカルがブレイクしたみたいに。
 Dragon Ashがブレイクした事で明らかにヒップホップシーンはメジャーになり変わったし、Kjが後にインタビューで「友情」「家族愛」的なものを歌うヒップホップやレゲエシーンが出来たのも溢れたのも自分らのブレイクによるある種の功罪だと言っていた。そういう大きな流れができるのが今のような時期だろう。でも、世界の変化でそういうものがこのテン年代にも通用するのかはこれから数年経たないとわからない。


世界の終わり - 虹色の戦争 HD


 最初に幕にプロジェクターからの映像が映し出される。彼らがバンドを始める前に作った拠点であるライブハウス・EARTHを自分たちで作る工程の写真が映し出されていく。


 なんだか青春的な日々が観客に共有されていくような感じで始まった。アルバム『EARTH』自体が7曲なんですよね、曲数から考えると新曲入れても一時間少しだろうと見積もっていた。


 カメラの前の一番後ろで観ていた。幕のようなスクリーンにボーカルの深瀬の影が映り始まる。最初は『青い太陽』だったかな、英語で始まる歌詞だったはず、で『虹色の戦争』『世界平和』まではあってるかな、で『白昼の夢』『死の魔法』と新曲のアコギを使った『天使と悪魔』の三曲があって、『幻の命』で本編終わって、アンコールで新曲『夢(仮)』でラストが『インスタントラジオ』だったような。


 最初に深瀬の声が聞こえて幕が落ちたら、バンドの後ろにはアルバム『EARTH』のジャケットの幕があった。


↓これね。


 彼の声はなんていうか鋭さがあるのに優しさも共存できているような穏やかな強さのようなものが感じられた。
 バンドの音自体は非常に踊れるというかポップなもので、そこに乗せられている歌詞はわりと直球な強い単語を使ったものだったりする。


世界の終わり/幻の命


 ギターの中島がバンドの盛り上げ役というかリーダーのようにMCをしたりと深瀬を助けているような感じだ。ドラムとベースがいないのでDJで音を出しているのだけどスピーカーから出てくる重低音が生ドラムやベースがないとやはりボォーという感じ。
 ドラムかベースがいるともっとクリアな重低音になってサウンドが広がりそうだなって思ったけどこのメンバーのチームワークだからこそできることとかがあっての編成だろうからこれでもいいとも思う。


 深瀬はMCでも言ってたが中学もほぼ行かず高校を中退している。実際はその後アメリカのスクールに通うがすぐに精神的に疲労し、パニック障害を発症し入院している。その後ライブハウスを仲間たちと作りバンドを始めている。


 彼らはライブハウスでの集団、コミュニティを作っている。世界の終わりの最大の強さはそこにある。一人ではどうにも抗えない流れや時代に抗うために、世界を楽しむために仲間と共に世界に対峙し握手をしているような、そういう手段としてのコミュニティがある。


 DJがいることで大きなキャパになっても盛り上がりには事欠かないだろう、会場の熱気がこれからフェス等に出る事でさらに引火し求められて行くバンドになっていくと観ていて思った。キーボードは女性だが、彼女がいることで激しいサウンドの中に動に対しての静が現れているし、激しく弾く時には激しいメロディーが重なる。ギターはバンドのバンマスのように引っ張って行く強さがある。そしてフロントマンである深瀬は明らかにカリスマ性が滲んで出ている。


 彼はステージから観た盛り上がる観客たちをにわかに信じられないような顔を時折しながらも自信に満ちた顔で歌いギターを鳴らしている。彼にとっては十代の頃に行けなかった学校や病気になって入院した日々が自信の価値観や制作する上でのある種のアイデンティティになりえているしはずだし、それが今求められているという喜びに戸惑いながらも応えて行こうとしているようだった。


 僕はそんな彼を見ながら『失われた日々のあとには祝祭を』と先日考えていたことを思い出していた。


世界の終わり/インスタントラジオ

↑ファイナルの最後がこの曲だったがもっとテンション高く速く声の出もよかったと思う、僕が最初に彼らのシングルで聴いて気になったのは実はこの曲なんだ。

EARTH

EARTH