Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『告白』

 水曜日は最近休み。雨の中渋谷パルコpart3のシネクイントへ。水曜日はレディースデイで女性は千円なので8割は女性客。朝一の初回で6割ぐらい席は埋まってた。感じとしては二十代後半から四十代ぐらいの女性。
 三十代後半以降は何人かで来ている感じ。物語に出てくる中学生を子供に持つ人も興味あって来ているような、まあ内容的に観たら子供のことすげえ心配になりそうだけど。


 僕は前にここで観た『ソラニン』の半券を持ってきていてリターン・システムで同じく千円で観た。なんだか腑に落ちない気もするが。




監督・脚本/中島哲也
原作/湊かなえ
出演/松たか子岡田将生木村佳乃


ストーリー・女教師・森口悠子の3歳の一人娘・愛美が、森口の勤務する中学校のプールで溺死体にて発見された。数ヵ月後、森口は終業式後のホームルームにて「私の娘はこの1年B組生徒二人に殺されたのです」と衝撃の告白をし、ある方法にてその二人の生徒に復讐する。そして4月、クラスはそのまま2年生に進級。犯人のひとりAはクラスのイジメの標的になっていた。そして、もうひとりの犯人Bは登校拒否し、自宅に引きこもっていた…。


Radiohead - Last Flowers (Live at the Basement)


 ↑レディへが挿入歌って最初思ったけど合ってた。というか全編で使われている音楽や曲は違和感なく作品と調和して映像を盛り上げている。


 公開されて評価も高いしお客さんもだいぶ入ってるみたい。原作が湊かなえの小説で『本屋大賞』の一位を受賞。今の所『告白』までは一位は映像化されている。というか一位を取る作品は取る前から映像化に動いているんだろうが。原作小説は読んでいないままで観た。


 すでに観ている人から観てない方が楽しめると言われていたのもあって。今wikiで原作小説の流れを見ているが映像化で変更されているのは第三章「慈愛者」の下村(生徒B)の姉視点で語られる部分か、姉は一瞬も出てこない。そこは下村の母の告白という形で脚本になっていた。


 松たか子演じる森口の終始淡々と語る雰囲気はこの作品で重要で本来は娘を殺された母親なので感情移入しやすいはずなのに僕はできずに森口と生徒たちをある意味では非常に客観的に観れた。彼女が仕掛けた復讐に関しては僕は否定できない。


 大事なものを奪われた人が復讐として相手を陥れる事やその人の大事なものを奪う事はいけないとかいうつもりはない。
 松たか子が発する雰囲気がかなり活かされていて彼女は好きではないがこの役を演じる上で適任なんだろうと、監督が選んだのはこの映画を成立させるために不可欠だったんだろうと観ながら思えた。


 犯人の二人に関しては「A」(西井幸人)「B」(藤原薫)は共に母性が大きく関わっている。作品自体にあるのは「母性」を巡る物語と言うかどうしても人間に必要である母親の存在が物語において比重を占めている。


 「A」は新年度からイジメに遭う。彼に制裁を与えればポイントが入り等現代的な携帯コミュニケーションやネットも扱われていて携帯を高校生以降になって普及して持った僕らよりも携帯が当たり前に幼少期からある世代の携帯コミュニケーションというかそれによる関係性や距離感、強制的なクラスメールは普通に怖い。学校の形態は子供を巡る環境はとても複雑になってしまっているんだろう。


 それに反比例するような岡田将生演じる熱血教師の寺田の悪意のないだけに悪意になってしまう人の良さや熱血指導は人を追い込み。物事をさらにアルクして行く。自己中心的である彼は相手の事を考えていると思っているが実際はまるで考えれていないので「B」が引きこもり家庭訪問することが物事を悪化させていくのにも気付かないし利用される。彼と一緒に家庭訪問する学級委員長の美月(橋本愛)は原作では「B」の幼なじみという設定らしいが特にそれは描かれず、委員長ということで寺田と「B」宅を訪れる事になる。


 美月も登場人物の中で「告白」という章的な感じで物語る人物で重要人物。AKB48が作中に出てくるので最初はAKBのメンバーかと思った。数年後ブレイクしてると思う女の子。『Seventeen』のモデルらしい。


 彼女と「A」の関係性が出来上がるのは川上未映子『ヘヴン』の「僕」「コジマ」のように孤独なものであるが故に結びつく感じに似ているというかこの関係性はある種普遍性があるんだろう。


 美月が額から血を流すシーンは哀しいシーンだけど美しくも見えた。二人が屋上というか屋根にいたり一緒にいるシーンは岩井俊二っぽい感じというか、そんな撮り方というか雰囲気だった。


 森口が仕掛けた復讐によって二人の少年は追いつめられていく。壊れいくものと壊れないもの、少年法で人を殺しても罪にならない生徒に与える制裁。彼女はきちんと仕掛けて追いつめて行く。


 中島哲也監督がバケモノだと思い知らされる作品。本当にクオリティが高くて圧倒的だった。今年の終わりには今年の映画ランキングの上位に軒並み入るだろう。観た後に考えさせられる部分があり、空白的な部分は観客それぞれが埋めるしかないので重い作品でもある。


 森口にも「A」「B」にも感情移入は特にしなかった。可哀想だなって思ったのは美月だな。彼女が可哀想なのはただ巻き込まれて真実を告げた事による悲劇。


 ゼロ年代初頭に岩井俊二監督『リリイ・シュシュのすべて』があったようにテン年代の初頭に中島哲也監督『告白』が同じように中学/高校と思春期の未成年を描いたことはきちんと観客の記憶と日本映画の歴史の中に残るだろうなと思う。


 岩井さんは『花とアリス』(04)から七年振りに長編監督脚本作品『Vampire』が来年公開予定。今はカナダで撮影しているらしい。撮り終わったら公式サイト『円都通信』が『岩井俊二フィルムフェスティバル』として再始動するらしい、PWメンバーだけど末端だからよくわかんねえし、たまにしかメール来ないし。


 今週末は大森立嗣(大森南朋さんの実兄)監督『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』観に行って、二十日は専門の友達の只石と北野武監督『アウトレイジ』と今月は邦画祭り。


 渋谷まで歩いていく途中で急にiPod touchの音が出なくなった。音楽聴かないで歩くのはけっこう寂しいなと久しぶりに思った。帰って復元したら復活したけどこうなると壊れる最終章に足を踏み入れたのと同じ事だな。


 帰りにタワレコoasisラストアルバム『Time Flies...1994-2009』と14日初来日ライブをするThe Drumsデビューアルバム『The Drums』を買った。


The Drums - "Let's Go Surfing"


 今年最も注目されてる若手バンドのThe Drums。まあThe Beach Boysなんだけどね、オマージュっていうか、もろに、もはや。ポップな音楽とかある意味での懐古主義なのかなあ。
 でもポップな表現が一気に表面化しているのは時代の流れなんだろうし、暗すぎてどうしようもない時代へのアンチとして求められるんだろう。ゼロ年代があまりにも出来の悪いパロディみたいに救いがなさすぎて。


 意識的にポップを表現する事で流れを変えようとしている人が牽引していくと思う。様々なジャンルで、これは僕が受ける感じだけど。いろんなものがポップでカラフルなものに包まれて緩やかに消費されていく。
 これまでと違う方向へ持っていこうとする流れを信じたい、時代は何もしなくても変わるけど何もしないのは悪いことじゃないけど、面白い方へ楽しい方へ行く方がいい。感覚的にそうなればいいけど、考えた上でそうなってもいいんだろうし。


Oasis - Champagne Supernova

 
 メンバーのギャラガー兄弟の兄・ノエルが脱退した事で実質オアシスは解散終了した。ノエルと弟・リアムの兄弟喧嘩はつねにあったし、こうなっても特に不思議はない。今までよく解散しなかったものだ。ニルヴァーナカート・コバーンがショットガンで自らの頭をぶち抜いた1994年にデビューしたのがオアシスだった。


 彼らはイギリスの国民的なビッグバンドだし世界的も売れたバンドだった。日本でも売れたし未だに車やビールのCMで今回のラストアルバムで初めてアルバム収録になった『whatever』は使われている。実際に彼らは『Champagne Supernova』みたいになったと思うけど大きな物語が終焉した。だから始まる次の物語があるはずだと思うし、思いたい。

 それがThe Drumsか別のバンドなのかは年々わかってくるし時代が証明してくれる。終わったと思った僕らの世代のバンドで空中分解していたThe Libertinesが奇跡のようなリユニオンしたことでどうなっていくが一番の期待すべきことだけど、こいつらはまたケンカして解散とかピートがドラッグで捕まったりといろいろありそうだけど。


The Libertines - Live in MTV - Up the Bracket & Time for heroes


 ピートのおかげで彼らが日本でライブすることはできないけど、まあリユニオンしてくれるだけでよしとしよう。


 あと『The Drums』の国内盤の歌詞の対訳は僕がお世話になっているというかレヴュー書かせてもらっている『クッキーシーン』の編集人(長)の伊藤英嗣さんなのでもしお買い上げの際には日本版をよろしくお願いします。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

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イン・レインボウズ(2枚組)

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ザ・ドラムス

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タイム・フライズ・・・1994-2009(初回生産限定盤)(DVD付)

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ベスト・オブ・ザ・リバティーンズ~TIME FOR HEROES

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