ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」
パルコpart3のポーカーフェイスで買った眼鏡が緩くて朝十時ぐらいに着いて店員のお姉さんに直してもらった。
まさしくポーカーフェイスな感じで淡々と作業をしていた。眼鏡が似合う顔の女性というか眼鏡屋の姉ちゃんという雰囲気で、店内に二人きりで会話もなかったので入り口のガラスの向こうが見えたのでそこを歩いて過ぎ去る人をのんびり見てた。
その後、同じ建物の中にあるシネクイントで「ソラニン」を。試写会で観てはいるが、廃校になった三崎高校での「ロックの学園」での試写だったので、場所が美術室だった。
外の光は暗幕のカーテンの端から漏れて、外でのライブ音も聴こえてて、サウンドも二つのスピーカーからだったので知人の自主試作サークルの映画を文化祭で観るような感覚に近かった。
シネクイントの客はほぼ若者だった。大学生から高校生が多い感じかなあ。僕ぐらいの二十代後半から三十代半ばのロスジェネと言われる、「ソラニン」の登場人物が過ごした日々と同時代を過ごした層の方が少なかった。
映画 「 告白 」 予告編
僕は宇多丸さんが「シネマハスラー」で言っていたように映画の予告編が好きだ。なので予告から確実に座って観ている。で、松谷さんが180点と言っていた「告白」の予告を観た。湊かなえ著の原作本は読んでない、が「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督作品というのは知っていてちょっと観ようと思ってた。
「松子」みたいにミュージカル的なシーンもあったりとなんだかよさげだし、面白そうだ。松たか子は好きでも嫌いでもないが。中島監督だと「松子」みたいな感じで暗い話をかなりジェットコースタームービーにしていそうな気がする。
「松子」は映画観た後に原作読んだらまったく違ったんだよなあ、原作はよかったけど映画館で観たような脳内エンドルフィンが出まくりな感じじゃなくて映画は中島ワールド全開で持っていかれてしまった。
そんなわけで「パコ」は観てないがこれは観に行こうと。シネクイントでは「ジョゼ」「松子」等わりかし好きな作品を観れてるし、まあ「デトロイトメタルシティ」とかは「ソラニン」と比べてもライブシーンが残念極まりないとかあったけど、「フィッシュストーリー」はよかったなあ。こっちも高良が出てたけど。今年は最初に観にいったのが「(500)日のサマー」だった。
「(500)日のサマー」はどことなく共感(感情移入)できなかったし、「ソラニン」に感情移入できるのは何の違いなんだろう。「(500)日のサマー」ってよくよく考えると古谷実著「シガテラ」と同じようなストーリーラインなんだよなあ。「シガテラ」の方がひどいというか「思春期の思い込みなんて大人になったら消えちゃうんだよ」っていう最後に豪速球を投げられて現実を見せられる辺りが。
で、「ソラニン」ね。「映画「ソラニン」@「ロックの学園」試写会」に最初に観た時のこと書いたんだけど、今回は観始めてやっぱり映画館の空間の中での暗闇で観る方が集中できるし音もやっぱりよかった。
今、この瞬間は
いろんな現実から目を背けた上で成り立っている。
それでもあたしたちは、この瞬間を、限られた人生を、
どこかに向かって進まなくちゃならない。
観始めて芽衣子が会社を辞めるくだりで思い出したのは、そういえば僕は以前に専門卒業してフリーターになって始めたバイトのドラッグストアを一年ぐらいしてから辞めるって言って一ヶ月行かなかったんだけど、店長の計らいで一ヶ月後に戻った事があって。その間はシナリオを書いてた。
なんかそれで、そのシナリオ書いて送ったらなんかシナリオライターになれるみたいな勘違いというか思い込みをして書いてた。試写で観た時には思い出さなかったのに今回思い出した。
それは「ソラニン」の背景のように今みたいな深刻なリーマンショック以降ではなかった。だからこの作品にあるモラトリアムな時期を過ごしたので余計に感情移入してしまうんだろうし、今もその延長線上にあるから。
仕事を辞めた芽衣子にアイが次の仕事なんかすぐに見つかるほど甘くないよって言っているがたぶん今の社会的な状況だと辞めない方が共感できるというか辞めたくても辞めれない。でも、心身的に耐えられなくて辞めるに辞めれないジレンマで心身ともに壊れていくというデフレスパイラルが深刻化してる。
そういう意味でもゼロ年代のリーマンショック以前の若者の等身大の物語として「ソラニン」はあったはずだし、だからこそ共感を得た。原作漫画が五十万部越えているのはそれを裏付けている。
なんだろう、冴木が種田に言った言葉はやっぱり響くし、この作品って種田が死んでから動き出すんだけど、僕は種田でも芽衣子でもあるような気がしてものすごく温かい気持ちにもなるし哀しくもなるし、笑いたいのに泣きたくなる。
脚本は前に観た時に気付かなかったけど映像ユニット「群青いろ」の高橋泉さんだった。彼らの作品は一度しか観たことないけどこの作品は原作に忠実に流れを壊さないように作られていた。
この物語に救いはあるんだろうか。という問いは僕らの人生に救いはあるんあろうかという問いにも通じる。
彼らの生活は続く。芽衣子・ビリー・加藤のライブが終わるとこの物語は少しだけ芽衣子の新しい生活の始まりと仲間たちを映し出して終わる。例えば彼らの人生であのライブが一番輝いているとしたら、その後の退屈な人生を彼らはうまくやっていけることができるのだろうか。
だから今の僕らはその後の彼らかもしれない。なんとかまだ僕らは生きている。芽衣子は「いつか、この景色が見れなくなる時が来ても、その時までみんなといっしょにいられればそれでいい」と言った。
社会に期待できないそんな空気の中で小さなコミュニティが最後の砦のような、そこがあるからなんとか息抜きができる。それすらも壊れたらと不安にもなる。
ネットでの繋がり過剰さはそういう不安とも結びついていて、本能的に趣味とか話題とか価値観が通じる仲間との繋がりを欲しているのかも。このコミュニティがあるから社会ともなんとか通じていけるというか。
そういう不安の中で生きているからこそ今は現実とネットの両方で繋がりを求めているのかもしれない。
しかし、なんだかうまいことまとまらないなあ。
帰りに246沿いを歩いてたらなんだか泣きそうになった。夏が終わるぐらいまでにやるべきこともわかったし。それをなんとかやり遂げたら少しは前進できるかもしれない。
ラブソング サンボマスター
以前に書いた日記/「嫌われ松子の一生」
観たかった『嫌われ松子の一生』をパルコパート3にあるシネクイントで友人ヤマムーと観てきました。
ここでかつて『ジョゼと虎と魚たち』を観ました。 僕の中で一番好きな作品です。
『嫌われ松子の一生』を観てる間、僕は4回泣きました。 映画館で観るべき映画というものが確かにある、この作品はそういう映画だと言ってしまえる。
キャストも豪華な面々(松子が愛した人だけでも、伊勢谷友介、谷原章介、宮藤官九郎、劇団ひとり、武田真治、荒川良々)だが、なんと言っても中谷美紀演じる松子の人生には恋愛があり、どうしようもない人生のやるせなさ、ただ大事な人と一緒にいたいという彼女の生き様が知らずと頬に涙を伝わせた。
松子の弟役・紀夫の香川照之さんの演技がすごく映画を引き締めていてよかったと思う。
松子は家から縁を切られるが何度かは弟と会うことになる。
愛する家族だったが縁を切らざるおえなくなった姉弟の感情のありかた、その距離間がせつなさを醸し出していた。
冒頭から出てくる瑛太演じる笙は紀夫の息子で、松子の甥にあたるのだが、松子は河原で殺され発見され、彼女の部屋の後処理を父に任された笙は松子を知る人達と出会い、彼女の人生を少しずつ知ることになる。
松子は中学教師クビ→作家志望の青年と同棲、彼自殺→その青年のライバルの作家の愛人→ソープ嬢→ヒモの男を殺害→東京へ行き自殺しようとするが出会った男と同棲→逮捕され服役→服役中に理容師免許を取る→教師をクビになった原因の生徒に出会う→ヤクザになった生徒と同棲→ヤクザ使い込みバレて追い込みかけられて警察に出頭→待ち続ける松子が出所の日迎えに行くがヤクザは彼女をこれ以上不幸にしないために彼女を殴り逃げる→それから何年もの月日が流れて・・・。
まあ、軽くまとめるとこんな感じなんだけどすごいんです。
観てる間ずっと思ったこの監督頭おかしい、狂ってる!
この脚本なんだよ、すげえ、なんだこのエネルギーは、なんなんだよ、この脚本。
働かず、食べて寝て暮らす荒れた生活を送る松子は故郷の筑後川を思い浮かべながら、荒川の河原でずっと川を見ていた。
帰りたくても帰れないその心情、もうただただ涙が溢れてきて止まらなかった。
この映画の好き嫌いは観る人によって様々だろうけど、観て損はしない。タイトルの通り松子の一生を観ながら感じることはたくさんある。
とてもいい映画を観れたと思うし、なんてタチの悪い作品だとも思う。観た後、凹むというか落ちた。とてつもない才能というのは凶器であり狂気だから心の深い部分にズサッと突き刺さる。
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