Spiral Fiction Note’s diary

ライター&「monokaki」編集部スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「週刊ポスト」で「予告編妄想かわら版」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉ーーあだち充と戦後日本の青春」を連載中です。

『退屈な日々にさようならを』試写


監督・脚本:今泉力哉
出演:内堀太郎(今泉太郎/山下義人)、松本まりか(原田青葉)、矢作優(梶原優一)、村田唯(多田佐知子)、清田智彦(清田)、秋葉美希(今泉美希)、猫目はち(星千代)、りりか(星紗穂)、安田茉央(町田貴美子)、小池まり(小谷加奈子)、疋田健人(疋田一義)、川島彩香(須賀川彩)、水森千晴(竹下陽子)、カネコアヤノ(牛越あみ)ほか




「サッドティー」「知らない、ふたり」の今泉力哉監督が、東京と自身の地元・福島を舞台に、映画づくりと死生観について描いた群像劇。映画監督の梶原は、映画の仕事だけでは食いつなぐことができず、ミュージックビデオの仕事を請け負うが頓挫してしまい、思いがけない事態に巻き込まれていく。一方、恋人の映画監督・山下が自殺した女優の青葉は、山下の死体を隠す。そして、とある田舎町で父から受け継いだ造園業を営んでいた太郎のもとに、音信不通だった双子の弟・次郎の恋人という女性から、電話がかかってくるが……。映画専門学校「ENBUゼミナール」の実践的ワークショップ「シネマプロジェクト」の第6弾作品として製作された。2016年・第29回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門上映。(映画.comより)



 渋谷の映画美学校で今泉監督から試写のご案内をいただいていたので観に行った。ユーロスペースとかには来るのだけど、美学校のこの地下のスクリーンは初めてだった。試写の最後の日というのもあって8割型埋まってたような気がする。
 今泉監督作品て二、三作しか観れてないが公園のシーンがよくて印象に残る。今作も公園でのシーンはよかった。それは公園というスペースは個人的でもあり公けのものでもあるけど、そこにいる人たちの共有空間になっていて、出入りが自由だからだろうか、家とかパーソナルな空間でのいい意味で言えば守られた場所、悪く言えば閉鎖された場所の両方であるから世界がどこか開けているように僕は思ってしまうからかもしれない


 140分少しの上映時間なので冗長には感じてしまうのは仕方ない、だからこその余韻みたいのがあるのも確かで。この作品が短くして90分とかにしてしまうとやはり今泉監督の自由度みたいなものや、その場所における時間の特別ではないけど特別にもなる時間を感じられなくなる気はする。


 あと梶原役で出ていた知り合いのぺろぺろくん(と名付けたのはあの会田誠氏だが、今作からは本名の矢作優名義になっている)がすげえよかった。あのダメな感じとか人になんか言われた時の返しやリアクションがかなり劇場で笑いになってた。明らかに僕の前のおっさんは彼が出てくるとかなり笑っていた。ぺろぺろ事件(いつか彼がブレイクした際にはA-studioあたりで鶴瓶師匠に聞いてもらおう)で船木さんと僕が園さんに謝罪したあの一件はぺろぺろくんもっと有名になったら使えるぞ!と思った。


 今泉監督作品はなんか画がいい。ちょっと引いてるのが好きなんだけど、冗長さと相まってなんか眠りを誘う気がする。物語に大きな変化とかアクションがない静かさなのでそうなるのか。まあ、恋人が自殺してその遺体を山に埋めに行くというのは大きな変化なのだが、それもどちらかというと淡々に進む。だからこそいいのだし、別件での梶原が巻き込まれての反応も良くて車でのシーンはかなり笑いを誘っていた。
 劇場で金払って観に行かないとなあ、と思った。劇場パンフレットに燃え殻さんが寄稿してるとTwitterで見て本当にある界隈でブレイクされているんだなって思った。


 終わったら今泉監督とぺろぺろくんがいたのでご挨拶をした。あと上映中ずっとイビキをかいてた猛者がいたけど、試写に呼ばれてるのになかなかだなと思いました。
 山下敦弘監督も観に来られていて実際にお見かけするのは何年ぶりだったけど、そんな感じがしないのは山田孝之のカンヌ映画祭見てるからなんだろうなあ。『ソラニン』が映画化決まった時に下北のライブハウスでアナ観てたら隣に山下さんがいて、まさか『ソラニン』監督してアナの大久保くんが種田なんすかと聞いたのがよい想い出です。


 今泉監督の間みたいなもの、笑いが起きる感じはちょっと伊坂幸太郎作品に近いものがある。伊坂作品の実写化を一度今泉監督でやればかなりニュアンスとかいい感じで表現できると思うんだけどなあ、どっかの映画会社さんやればいいのに。売れてるとか有名な監督と売れている小説とか漫画の組み合わせは飽きたというか外したくないんだろうけど、それで外してる。若手の三十代の監督とかにどんどん撮らせていったほうが次の10年とかに繋がるのにと思う。
 岡崎京子さんの『リバーズ・エッジ』を行定監督でってニュースを観たときにそれなら山戸結希監督とか若手にしたほうが面白い化学反応が起きるかもって思った。
 

 福島での今泉家の食事シーンとか居間でのやりとりとかいいなって、あとショベルカーと女子高生もなんか貞本義行ワールドを思い出したり。役者さんの顔つきがよかったのも観ていて感じたこと。登場人物がそれぞれ関わりがあって、何か繋がっていることは俯瞰しないとわからないんだけど世界を動かしている要因で、まあ僕らの世界というのはそういうものでできている。だから、すごく身近に感じる物語になっていた。僕もたまに考えたりすることではあるけど、例えば僕が知っているけど音信がずっとない友人や知り合いがいて、誰かに亡くなったとか何年か前に亡くなっていたということを知らされたらそれまで僕の中では関わりはなくなっていたけど生きていたその人はいったいなんだったんだろうってこと、人が死ぬというのは存在が、その肉体が消失した時よりはそれを認識した(させられた)時に起きる。そして、誰もが消えていくけど、やはり認識した時にそれは起きるし、空白のような凹みになってしまう。そして、凹んだ部分はそのままに僕らは生きて死んでいく。
 

映画『退屈な日々にさようならを』予告編