Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「脳内ニューヨーク」

 朝家を出てシネマライズに。Vampire Weekendのライブを観に来た地元の友人とは渋谷で別れた。ブート屋なんかを回るらしく、別行動になった。先週も「母なる証明」を観に来たばかりだけど。先週に引き続き、火曜がライズの千円デーにもかかわらず水曜日に来てしまった。



 ストーリー/「マルコヴィッチの穴」「エターナル・サンシャイン」の人気脚本家、チャーリー・カウフマンの初監督作。妻と娘に家を出て行かれ、行き詰っていたニューヨークの劇作家ケイデン・コタードは、自身が思い描くニューヨークを実際のニューヨークの中に作り出すという、壮大な芸術プロジェクトを構想するが……。ケイデン役にフィリップ・シーモア・ホフマン、彼を取り巻く女性たちにミシェル・ウィリアムズキャサリン・キーナーら豪華女優陣が集う。


 タイトルと監督が気になっていたので観た映画。監督のチャーリー・カウフマンは「エターナル・サンシャイン」の脚本家ってことは知っていたので期待していた。二時間四分の映画だけど実際はもっと長く感じた。テンポのいい映画とは言えないと思う。実際にタイトルの「脳内ニューヨーク」的な世界はもちろんあって、そこが後半の舞台になる。


 主人公のケイデンのダメっぷりな感じとかはもろに文化系男子で、この作品の感覚はミシェル・ゴンドリー監督「恋愛睡眠のすすめ」の主人公に通じるものがある。と思ったけどチャーリー・カウフマンが脚本を書いた「ヒューマン・ネイチュア」「エターナル・サンシャイン」を監督したのはミシェル・ゴンドリーだった。こいつらもろに文化系男子的な匂いがすごい、作品の中にもろに。



 「エターナル・サンシャイン」は好印象だったんだが、僕は「恋愛睡眠のすすめ」はイマイチだったなあって思ってて。僕をカテゴライズすると文化系男子に入るのもあるんだが、文化系男子よりな主人公だと同意するか自己嫌悪を覚えるかどちらかだ。


 「脳内ニューヨーク」は嫌悪は特にないんだが、ケイデンに特に感情移入できなかったので彼が泣いてもあんまり響かなかった。でも、この作品に流れている生きて死ぬ事ってのは避けられないテーマだし、出会った人とは絶対に別れて行くことを描いているのは好きなんだが、けっこうケイデンって彼の側にいる女性四人、出て行った嫁も含めて性的な関係を持ってしまうし、結婚したり離婚したり、長い年月がかかって昔は結びつかなかった女性と人生の最後で一緒に過ごしたりとしている。


 まあ、女性と別れて孤独になって泣いたりもする。ケイデンの脳内イメージのニューヨークを作ってそこにはスタッフでもあり俳優でもある数多くの人がいて、何年、何十年経ってもそのプロジェクトはなかなか完成しないんだけどその人たちから必要とされているし、なんだかんだかで周りにいる女性とねんごろな関係になっては、前の女性への想いを断ち切れなかったりとダメダメな事をするけど、全然お前は不幸じゃねえしって思う。


 あんたのその立場は普通に考えても不幸じゃないし、孤独なのは自分が一番必要と側にいてほしい人がいないことだけど、その原因を作ったのはケイデン本人だったりもする。まあ女性側の想いとケイデンとの想いの相違があったりもするけど、人はわかり合える時もあるけどすれ違っていく。それは一度に起きた事が原因になることもあるけど、掃除しないと部屋の隅でほこりが次第に溜まっていくように日々知らない間にお互いの中のわだかまりが積もって崩壊する。


 人間関係は難しい、時間が解決することもあるし、さらにひどくなる場合もある。話し合って理解できることもあるし、信頼関係が築ける場合も、でも逆効果で決裂して縁を切ることも起こりえる。合う合わないというのは大きい、どうしても無理な人は無理だったりするし、時間と関係性が変わると変化はあるのかもしれない。
 努力して歩み寄ってもダメ時はダメだ。合う人とは波長が近いから長く関係は続けられる、話し合って想いを伝えて、理解して、しようとして受け入れれるかということ。


 そういえばケイデンって物語上で男の友人が皆無だった気がする。愚痴言ってビール飲んだくれて話を聞いてくれる男友達がいない、そりゃあ女に逃げられたりとか別れたら孤独感増すわ、ひとりぼっちだし。ケイデンに必要なのは女性もだけど、わかり合える友人だったんだろう、それが違和感だったのかな。


 今思い出したのはこの映画に似てるかどうかは微妙だけど「素粒子」って映画がよかったなあ、似てる映画じゃないだろうけどなんか思い出した。「脳内ニューヨーク」は嫌いじゃないけど好きにもなれない感じ。ケイデンを日本人でやるなら劇作家の岩松了さんで。先週の「母なる証明」が凄すぎたからなあ、真逆の雰囲気だから先週の毒が抜けてないのかな。


 僕はなぜかアメリカインディーで好きなのが「ドニー・ダーコ」と「ゴーストワールド」。この感じ好きっていう僕のツボにちょうどいい雰囲気。




 その後友人と待ち合わせして先日行った「UT」近くのTokyo Hipsters Clubという店に。二階のフリースペースでは「文化系トークラジオ Life」のサイトで「元The Stone Rosesのあの人から!」からで紹介されていた元ストーン・ローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイアの個展があった。そのお店自体もオシャレな感じだった。
 作品はそんなに多くなかった。例えば人の形をしたパターンを何個も書いていたり、とか繰り返し的な感じを覚える絵というかアートだった。店にあったデカメのキャンドルとか少し欲しい感じだった。


 深夜の本屋でスティーエリクソン「エクスタシーの湖」という新刊が出ていた。海外の小説なのはわかるんだけどほぼ三千は高いな、前の「黒い時計の旅」もペーパーブックの「zeroville」も訳して読んでないから読むとしてもだいぶ後だ。


 朝帰ってから走る、風が冷たすぎ。ずっと「ライムスター宇多丸のウイークエンド」のPodcast聴いて走ってた。途中で何度か吹いた。



 ミシェル・ゴンドリーが監督したPV
Sheryl Crow - "A Change Would Do You Good" b/w music video


The White Stripes - Dead Leaves And The Dirty Ground

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