Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「母なる証明」/「あかり from HERE 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜」

 昨日は走ってから寝ないままで渋谷に歩いて行く、途中まではランニングコースと一緒だ、違うのは246を越えて目黒区に入るか、246を沿ってそのまま道玄坂に行くかで、大粒の雨で池尻大橋から大橋ジャンクションが見える頃にはジーパンがびしょびしょでスニーカーの中まで水が染みた。


 シネマライズの朝一の回、9時15分からの「母なる証明」を観る。客はさすがに十数人ぐらいで年齢層は高め、四十、五十ぐらいのおばちゃんが多めで僕が一番若いぐらいだった。元々この映画に興味がなかったんだけど知り合いの人がかなり良いと日記で書いていたり、映画監督の松江さんもブログで絶賛していて気になってしまったので早めに観ようと思った。


監督・ポン・ジュノ、主演・キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン


静かな町に起こった凄惨な女子高生殺人事件。ある男(ウォンビン)が事件の容疑者として身柄を拘束される。その母親(キム・ヘジャ)は息子の無罪を信じ、冤罪を晴らすべく奔走する――。
殺人の追憶』、『グエムル―漢江の怪物―』のポン・ジュノ監督が、永遠に失われることのない母と子の絆を描くヒューマン・ミステリー。2009年度カンヌ国際映画祭<ある視点>部門正式出品作。


 上記のお二人が褒めていたのでかなり期待値が高まっていたんだけど、これはすげえわ。観ながらゾクゾクした。


 この脚本自体が精巧に綿密に作り上げられている。ミステリー的な要素があり、知的障害を持っている息子の無実を晴らすために母が自ら捜査を始める、冒頭からのフリというか伏線が後半に効いてくるし、その伏線が効いているシーンも次の伏線になりえたりと、物語の展開が無駄がないし、カメラの撮り方も音楽の使い方も効果的で物語に深みを与え説得力を持たしている。


 母親役の女優さんと兵役から復帰したウォンビンの演技が作品の世界に完全に入り込ませる。ウォンビンが演じる知的障害を持っている男の役のイノセント性は彼の目による所が大きいと思う。


 ジンテ役のチン・グって人がいい味出してた。おかんと夜の家で外は雨が降っているシーンで話すくだりとか、雰囲気があってすごくキャラクターが際立っていた。そこでやってる事とおかんへのアドバイス的な部分と真逆に思えるような事を違和感なくしていた。
 刑事役のユン・ジェムンが髪の毛がある温水洋一さんに見えて仕方なかった。僕だけか。


 あと最後の方のシーンでおかんととある人物が話すシーンって日本だと出来ない気がするんだけど。日本だとなんか出来ない以前にプロデューサーとか止めそうな、だからか痛みがズシンと来る。


 まず冒頭から持っていかれるんだが、彼らが暮らしている生活は生活水準が高いとは言えない、その部分をかなり鋭角に描いている。
 殺されてしまう女子高生のバックボーンも次第に明らかになっていくんだけど、その辺りが韓国の今の状態を、最下層的な人の生活を正確に描いているのかは僕にはわからないけどかなりリアルな描写なんだろうと思う。


 不可避なものとか世の中の回り方とか、丁寧に撮っている感じがする。僕はほぼ韓国映画を観ていないんだけどポン・ジュノという名前ぐらいは知っていた。このクラスというかこのレベルの映画を作っているのか、と思うと韓国映画の未来は明るいというか、最初から自国だけではなくその先の世界で勝負できる作品を作っている意識が高く、だからこそこの作品のようなレベルに達しているんだろう。


 原作ありきとかキャストだよりの邦画が本格的に不味い事になっていると思ってしまう。原作ありきでも最悪いいんだけども、そればっかりやってるともはや勝負にならない。見ている先が自国で利益あげればいいやってのと世界基準で作るのではやはり想いが違う。


 今年観た映画だと園子温監督「愛のむきだし」クラスというか届く場所が世界っていうものの作品にある圧倒さを感じる。


「愛のむきだし」@東京フィルメックス
 まあ、最初に観たのは去年だけど公開は今年の一月だった。僕の中では今年のナンバーワン映画。園子温を喰らえって感じだし、増々次回作の海外でロケをする「ロードオブカオス」に期待してしまう。


 園さんの場合は日本でそんなに取り上げられないで評価もあんまりされないけど海外では評価されまくって賞受賞いっぱいしてて、で人気もあるから園さん自身が最初から世界へ目を向けてものを作るっていうある種のねじれがあるとは思うんだけど、韓国映画は自国でのヒットはもちろんだけど最初から世界を見定めている感じだ。

 しっかし凄い映画だった。これ観たら本当にテレビ局主導で局が金出して内容のないイケメン野球とかお面の中身と昭和ノスタルジーの映画を作って客が入ってますみたいなことしてたら本当に邦画危機だ、というかすでにやばいけど。作り手のレベルも意識も客の見方も落ちていく一方なんじゃないかな。


 で、マスコミが取り上げない人は海外で賞取らないと取り上げないし、取っても取り上げないしもっと利害関係を越えた所でメディアがいい作品を紹介してくれるのがいいんだけど、絶対にしないのはわかってるからなあ。


 映画館の外に出ると小雨、濡れた服や靴も微妙に乾いていた。パルコの地下のリブロでようやく津田大介著「Twitter社会論」を見つけ、一緒に「フリースタイル」という雑誌を買った。「平凡コンプレックス」Part3に出てきたムサビ卒業生の相対性理論やくしまるえつこと古川さんがコラボしてたりする。


 ↓前からYou Tubeで聴けたんだけどボスのリリックが気になってて。

あかり from HERE 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜 / クラムボン feat. THA BLUE HERB


 それからタワレコに友人に頼まれたアークティックモンキーズが表紙の「NME」を買って、一階でタワレコ限定シングル「あかり from HERE 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜 / クラムボン feat. THA BLUE HERB」を買う。そういえば「平凡コンプレックス」Part3でクラムボンの話も津田さんがしてたな。

 なんだろう、「スモール・ワールド現象」みたいな、意味的には違うんだけど僕の趣味なり趣向は結局は狭い範囲なんだよな。こないだのさんまさんの番組「ホンマでっか!?TV」でこの「スモール・ワールド現象」のことをしてた。


 実験でアメリカ合衆国国民から二人ずつの組を無作為に抽出し、平均すると6人の知り合いを介してその二人が繋がっていることを実際に示した。というもの。 つまり世界は広いようで狭いし、知り合いを芋づる的に辿ると世界中の誰にでも繋がるってやつ。


 なんらかの意志を持って動くとわりと人と繋がっていくし、そうなると世界は思っているより狭いと感じる、ここ数年特にそう思える。

 
 今日は雨が強いのでさすがに走るのはやめといた。「フリースタイル」の古川日出男×やくしまるえつこ「深夜バス、バスジャック。ジャックお座り」を読んだ。古川さんのウェブ連載の「4444」にも通じているけど掌編だと言葉遊び的な流れというか韻を踏むわけじゃないけど言葉を使って遊びながら、でも真剣にふざけて物語る感じがした。


 今日は↑「あかり from HERE 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜 / クラムボン feat. THA BLUE HERB」をひたすら聴いていたせいもあって、「group_inou」「Shing02」なども聴いてた。ラップの言葉の強さとか韻とかは好きだ、ラッパーのファッションは好きじゃないけど。僕の文体も一度ある人からラップみたいだと言われた事があるから、それは本能的に言葉のリズムとか韻とか好きなんだろう、そこが武器になるとしたらそれをもっと極めていくってのは個性になり得るか。


 「Twitter社会論」は深夜の休憩中に半分まで。かなり読みやすい、読み終わったら僕も始めてしまうのか、しまわないのか。


Life@むさび 「平凡コンプレックス」Part4
 観客からの質問に答える質疑応答コーナー、津田さんがインターネット普及後の個性とかについて話していたり、この番組の力っていうか影響力ってじわじわと強くなっているんだろうなって最近思う。
 元々、やっていることなどで評価されていたパーソナリティー陣とかが絡む事で新しい磁場を作ってさらに力や繋がりを強めていって影響力も上がっているんだろうな、まあ黒幕がある意味で上げチンということは言えるんだろうけど。

母なる証明 (幻冬舎文庫)

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愛のむきだし [DVD]

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Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)

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