先日は休みにしていた。ランニングも休みにして普段寝てない分を取るかのように寝て起きてとしながら、久しぶりに実家以外に電話をしてみたり、読書を一気にしようと思ったり。
「世界の中心で愛を叫んだけもの」があまりにも気が乗らなくて読み進まないからなんか急に西島大介作品を読みたくなったので「凹村戦争」と「アトモスフィア」二巻を読んだ。「アトモスフィア」ってドッペルゲンガーを扱っている作品なんだけどすごく世界観が濃厚でこういうを描けてすごいなって思う、漫画だからできるSF的な作品でもあるし。
それから森達也著「東京番外地」を読んだ。以前途中まで読んで放置プレイをしたままだった。森さんは中央ではなく隅っこや外野から物事を見たりするのが自分の性分だみたいなことを言われている。
森さんの作品「A」「A2」を観ればわかるが、本当の事をメディアが伝えるかと言ったら伝えないし、その現場にいる人たちの気持ちとか迷いなんかはもちろん黙殺されてニュースや報道を見る側に細部がないように伝えられる。
一極集中化してきたのは95年のオウムが発端になったと彼はいろんな場所で話しているし書いている、実際にこの国の臨界点や曲がり角は嫌でもその時代に焦点があたる。上記した「世界の中心で愛を叫んだけもの」を最終回のタイトルのモチーフにしたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が始まった年などサブカル分野でも社会というか歴史でもいろんな事が出来事が一連の流れとして語られる。
そういう語りならば僕のような人間でさえも何となく語れてしまう、僕が読んできた本や年長の人から聞いた事やなんかをまとめればわずかながら形にはできるだろう。
実際にオウム以降にこの国は仮想敵として北朝鮮だったり、未成年の凶悪事件の低年齢化などをメディアが訴えてセキュリティ関連の企業の業績は伸びた。実際問題としては未成年の凶悪事件は戦後ぐらいが最も件数が多く、ここ近年は全盛期の四分の一とかでずっと下がり続けている。しかし、視聴率や雑誌の売り上げを上げようとするとそこには触れないで、隠しておいて少年犯罪がひどくなっているような報道をしている。本質や真実は売れないから、虚飾された記事が踊ってはすぐに忘れ去られる。
ただ、インターネットの普及で今まで声を出せなかった人や隠された真実を知る人がネットでそれを表す事ができるようになり、それを検索して探し出せば知らなかった隠されていた事に辿り着く人もいる。でも、ネットの世界は混ざり合った世界で真実も嘘もいろんな割合で交ざっているから後は見た当人がどう認識して捉えるかというネットリテラシーの問題もある。
オウムにしろエヴァにしろ、同じ年の出来事だけどそれは必然的な事なのか偶然が重なってしまったのかはたぶん、世界を作り上げた存在がいるならそいつしか知らないんだろう。
たぶん、似たような事件が急激にテレビや報道を賑わす時に、ドラッグの問題だったり、95年にこの国の根幹を揺るがす事件やそれを結びつけやすいサブカル的な話題も、女性が男性から金を巻き上げてその男性達が続々死んでいる事件が立て続けてニュースになったりとかは同時多発的に起きているだけで実は関連がないのかもしれない。
本来は関連がなくてもある種の同時性が関連づけやすくなってしまう。そこから意味を見いだすかどうかは受け取る側の問題でしかないし、個別に考える方が実は真実だとか、真実が何であるかは個々で違うんだろうけど、辿り着きやすいのかもしれない。
ただ、何の因果かは知らないが似たようなことが同時多発的に世界では起きてしまう事がある。もともとは地続きな出来事じゃないのに。必然と偶然と取るかで物事の捉え方はだいぶ変化する。
だけど何かが起こるその前触れにはその原因の何かがあるということだけは確かで。バタフライ効果みたいに、まったく遠い原因からそれが起きてしまう事はあるだろうし、カオス理論とか詳しく知らないけど起因しているんだろう。
ここに自分がいるという事は遺伝的な両親がセックスをして射精して着床して妊娠して出産したという事実がある。んだが、僕、すなわち当人が感じている事(見たり聴いたり嗅いだり味わったり触れたり)などは感覚を通して脳内でそれらを電気信号として受け取っているので本当にここに自分がいるのかという疑問は出てくる。
SF的な表現だと円柱のガラスの中に何かの水溶液みたいのがあってそこに脳が浮かんでいてそれらに電極が刺さっている状態でも僕はその信号から勝手に肉体を感じて世界に実存しているとずっと勘違いしていても、それを確かめる術はない。世界の全てが電極からの信号によって表現されるヴァーチャルワールドだったりするのかもしれない。このイメージは昔「世にも奇妙な物語」の中で武田真治さんが出ていた作品で見てからどうもそのイメージが払拭できないままだ、十年とかもっと。
日曜日から今日の月曜深夜にかけて僕はかなり眠った。貪るように寝て起きたら気持ち悪くて動けなかったのでバイトは休んで違う日の休みと変えてもらった。寝ている瞬間は何をしているんだろう。電極の信号が切られてただ世界が止まっているだけかなんて妄想に似た想像もできるわけだが。
何かが起きるときは地下で躍動していたものが同時多発的に蠢いていてリンクするみたいに一気に表面化する感じ、というか感覚。ブームが起きる時なんかもそうだし、なんらかの繋がりはあるだろうけど新しい何かが起きる時には一気に目に見える形になるから一括りにされてしまいがち。それは蝉が地上に出てくるようにそれぞれの穴から這い出て羽化して地上で鳴き始めると「あ、蝉が鳴いてるなあ」で一括りされるような、同じ場所から、地下にはいたけど同じ穴から出てきてないし種類も違ってたりすることはそんなに意識されない。
何かが起きるその前には同時多発的に物事は進行していて、目に見える時になると何かが繋がっているとかリンクしているのがわかるから多発的に見えないだけではないかと寝すぎて寝れないけど体が痛い中で思う。物事にはひとつの原因だけではなくて様々な要因があって、それらが起因して結果が起こるというようなこと。それは緩やかな死だったり、急に親しくなったり、嫌いになったり、とか。
あんまりひとつの出来事だけで構成されて結果が出るという事の方が少ないんじゃないかって思う。いろんな因子が作用し合って何かが起きていると原因を探るのも難しいし、わからないのかもしれない。
森さんが「わからない」と言ってしまうことも大事な気がするのはそんな事を考えるから。けっこう「わからない」ことだらけなんだけど、あんまりすぐに言うとそれはそれでいただけないし、考えてもそうならそう言うのも必要だろうな。
「東京番外地」の中で森さんが演出家の鴻上尚史さんと飲んだ時に舞台のアンケートがここ数年で変わってきたと話をしたとある。「以前なら芝居はわかりづらくて当たり前だった。でも最近は、ちょっとストーリーが込み入ると、『誰が悪人かはっきりしてくれ』みたいな内容が多くなるんだよね」と。
わかりやすさを求めだすと黒か白かになってしまって曖昧な灰色ゾーンすらもないものとしてしまう気がする。社会的弱者を一気に消そうとするような暴力もそこに含まれると思う。
最近僕が読んでいるハヤカワのSFはけっこうなわかりづらさがあるけど僕はそれでいいと思う。全ての事がわかるわけないし、知識や経験がないというのも大きいとしても。作家だって自分が書いたのにも関わらず自分でもわからないものを書いてしまうという所に達してしまうことはあるらしいし、古川日出男氏がそう語ったのを聞いた事がある。
作品が作家の範疇を越えて行く時に、作家が思ってもなかった領域にたどり着いて後から自分で読んでもなんで書けたのかわからない作品になっている方が良い作品らしい。自分の想像で収まる作品はたいした作品ではないし、その先が見たいと。
そういう作品は読者にとってもわからない部分などが存在して、各自がそれぞれに解釈をするしかない。あるいはできない。そのわからない部分ってかなり魅力的なもので、全てがわかるようなら魅力はないのではないかと思う。
とりあえず起きてから道尾秀介著「骸の爪」を読んでいて、途中でブログを書いたのでぼちぼち読書に戻ろう。それにしても昔の作品読んだ後に、以前の活版印刷?なのかな、フォントがかなり小さくページ数の文字が今の文庫よりもかなり多いものを読んでいたら今の文庫がすらすら進む。
「骸の爪」は四百八十ページぐらいあって分厚いけど昔の文庫に比べるとページ数の文字数が少ないので一気に進む、まあ道尾作品は読みやすいっていうのも手伝って。半分を過ぎていた。あと二時間ぐらいで読み終わったらランニングしに行こう。
ランニングから帰ったら短編書いて、それから寝よう。気持ち悪さも消えたしパブロフの犬みたいに一日走ってないだけでなんだか不安だ。まあ、ひとつだけわかってるのは道尾秀介という作家はこれからもっと知名度上がってさらに売れっ子になるというのはわかる、読みやすいし、ミステリーものだし出版社の人もかなり期待しているし、なんと筆もかなり速いらしい、おまけにけっこうな男前。
「ダ・ヴィンチ」でたまに男前・美人な作家ランキングをするように物書きでも見た目がいい方が売り上げに非常に関連するという哀しい現実がある、そういう意味でも彼をもっとプッシュしていくと思う。
「骸の爪」を読みながらのサウンドトラックは「Sigur Rós」「Dirty Projectors」「Girls」辺り。歌詞の意味がわからない方が読書には集中できる。あとは「The Album Leaf」なんかがいい。
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