Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「1000の小説とバックベアード」

 朝からプチ打ち上げに参加してその後マクドで話してたら昼の11時とかで帰ってから寝て起きたらバイトという一日だった。
 日曜深夜にあった「文化系トークラジオ Life」は「大忘年会09」だったのだけど今年の世相を反映したのかわりと暗い感じと言うかコンテンツの話も最後の方や番外編でトークされて最初の方は雑誌の休刊やビジネスモデルの変化、不景気の事など難しめの話でテンションが高い感じはなかった。


 去年だったらサブパーソナリティーの方々が古川日出男「聖家族」などを挙げていて、メガノベルズが脂の乗った作家が同時多発的に出した事もあり、ある種の集大成のような作品が多くて文芸的には面白い年だった。
 今年は村上春樹1Q84」の大ヒットがあったぐらいで、売れるものはみんなが群がるがという二極化が激しくなっているような気がする。お金がないというのはメディアには大打撃で、客がお金を出して冒険をしなくなる。


 売れている小説ならば読むけど、という人が多くなると出版社も売れるものや売れる作家しか出さなくなるし、やっぱり悪循環にしかならない。小説にしろ音楽にしろ、映画にしろ、そういうものはお金を出して時間を使って、時にはけっこうな割合で外れクジを引いていく中で自分に合うものや新しい出会いを見つける、出会っていくことが個人のアイデンティティーの育成に繋がるはずだ。


 佐々木敦さんの言う所の未知との遭遇だ。これができなくなってくるとみんな同じ物に集中するだけで個性的なもの、他者との違いとか薄くなっていくのかもしれない。僕はお金を払う事の意味というか小説を金出して買うことの意味は、外れを引いてもいいということ。
 当たるときの喜びや新しい作家さんや物語に出会えるときは嬉しい、誰かに教えてもらった作家さんや小説もいいけど、自分が見つけた、何となく買ったり目に止まった作品が僕にとって大事なもになった時の喜びは未知との遭遇だ。これは映画にしろ音楽にしろ、そういうエンターテイメント全てに言えるはず。


 でも、ひょっとしたら多くの人は個性とかいらないっすみたいな方向に向かっているのかもしれない。みんなと同じでいいっす、個性とか必要ないっすみたいな感じがわりと世間的には充満している世相なのかなあ。いろんな反動が出てきている?
 安心な生き方とか従来の価値観がぶっ壊れて新しい基準もないままで僕らは模索しているから人と違う事ってのは以前よりも恐いものになっているとしたら、そこに可能性はあるんだろうか、そこに希望の話はできるんだろうか?


 「文化系トークラジオ Life」はcharlieが始まる前に言いたかったというか「希望」の話をする番組だから。今回の放送は暗かった。明るい話題はそんなになかったし、charlieが孤軍奮闘しているようになってしまった。
 全員いると確かにダレるというか積極性がなくなるのは聴いててもわかる。でも、司会というか話を回しているcharlieをサブパーソナリティー陣がもっとヘルプするとかもっとツッコんでいくことをしないとかなり可哀想な感じになってしまう。
 もっと人の話の時に入っていって議論とかしちゃえばいいんだけどみんな個性とか持ち場がわかりきっているからそういう暴れ方はない。だから安定しているけど波乱はない。


 ゲストが来て面白いのはそういう波乱と言うか平穏な空気が乱れるから。東さんや渋谷さんの回が面白いのはキャラクターが立っている人が場の空気を乱していつもと違う雰囲気にしてしまうから。レギュラーメンバーの時にもっと自分を出していこうってことにならないから波乱がないし熱い議論というよりはその人の話を聞いている感じだ。


 今回はテンションが低かっただけに平穏なままに終わった感じだった。番外編では松谷さん(TRiCKFiSH)や伊藤さん(空中キャンプ)が映画の話をして少し違う色も出たとは思うけど。
 「愛のむきだし」の話も出たし僕のメールも読まれたのは嬉しかったけど、小説の話はほぼ出なかったかなあ。「1Q84」話も以前に番外編でしてたしなあ。売れたけど本当にみんな面白いと絶賛した小説だったのかな?


 売れて話題になったからさらに売れた小説だよね。とくにこの作品は。僕はもともと村上春樹作品は苦手で、「1Q84」が出る前に予習で「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」を今年読んだけど「世界の終わり〜」が一番面白かった。
 「海辺のカフカ」は前に読んだけど「1Q84」的なある種の近親相姦的な部分とかカフカって自分の手は汚さずに通過儀礼してとか、納得できなくて本当に苦手。


 今年この作品が売れたのは村上春樹という今日本を代表する小説家の新作が出ると言う期待と、外れないだろうというもの。だってこの小説がホントウニオモシロカッタカ? と僕は自分に問えば「NO」だから。
 作品を読んでからの意見だからどうしようもない。売れていてもダメなもの、自分に受け入れられない作品はあるし、読み応えはあるし読み進めるのは楽しかった。でも内容的には好きじゃない。


 でも、今年一番面白かった小説ってなんだろうなって思い出してもこれだ!っていうものがあんまりなくて。「クォンタム・ファミリーズ」「SOSの猿」は面白かったし、道尾秀介作品をハードカバーも含めて何冊も読んで面白かった。でも、これが一位っていうインパクトがあるものがない。
 ヘタしたらアマゾンで買ったチャールズ・ブコウスキーの最後の小説「パルプ」が一番印象的だったというか、バカバカ過ぎて逆に印象的だった。難しい作品がダメでもないけどなんだかブコウスキーのダメな感じとかの方が読んでて楽しい。


 僕は最近読んだ「アインシュタイン交点」や「あなたの人生の物語」だとか「クォンタム・ファミリーズ」とか小説として面白いけど難しい。僕には絶対に書けないと思う。理解できない部分があっても小説は読めるし、楽しめる。
 ただ、自分が教養がないからわけわからない感じは修行に近い。仲俣さんにお借りしたハヤカワSF文庫とかだと「夏への扉」とかあういう感じのやつが好きだった、すげえ読みやすかった。「クォンタム・ファミリーズ」に出てきたフィリップ・K・ディックヴァリス」とかも面白かった。ディック「ユービック」も面白かったし。


 だから来年はフィリップ・K・ディックや「アインシュタイン交点」の サミュエル・R.ディレイニーを読んでいこうとは思ってて触れてないけど少し興味を持った作家をとりあえず読んでみる。呑み込んでみてからどうなるかは知らないけど。


 深夜の本屋で大塚英志×山崎峰水黒鷺死体宅配便角川ホラー文庫版五巻と田辺青蛙「魂追い」の文庫を買った。「黒鷺」はこの巻で文庫としては出さないことになったらしい、コミックスは売れているのに角川ホラー文庫だと売れないかららしい。
 なのでこの巻は「黒鷺」メンバーの出自というか特殊な能力をもつ彼らの共通項、彼らは何かの殺人事件の生き残りだったというエピソードの編集版。あとがきでは大塚さんがこの作品のハリウッドでの映画化の事に関して書いている。「多重人格探偵サイコ」も同様に。アメリカだと原作者が口を出さないのはおかしいという感じらしくエージェントとかもあって大塚さんがかなり口を出していくことになりそう。


 唐津がアフリカン系アメリカ人とか「黒鷺死体宅配便」が「ピザ屋」かもしれないし、佐々木だけは栗山千明がいいなって書いてた。この企画きちんと通って映画になったら観てみたい。角川は関わってないと契約に角川は入ってないみたいだし。


 田辺青蛙さんは去年の年末の「エクスポ」ナイトでお会いして名刺交換だけしてたらその後に最初の著書である「生き屏風」を送っていただいて読んだ。という繋がりもあって次の作品が出たらきちんと買って読もうと思っていたので買った。本たまっているけど一月中には読む。


 今年が終わるまでに星野智幸「目覚めよと人魚は歌う」と佐藤友哉「1000の小説とバックベアード」の三島賞受賞作品を読み切ろうと思ってるんだが読めるのか、どうか。

文化系トークラジオLife

文化系トークラジオLife

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

クォンタム・ファミリーズ

クォンタム・ファミリーズ

SOSの猿

SOSの猿

パルプ (新潮文庫)

パルプ (新潮文庫)

アインシュタイン交点 (ハヤカワ文庫SF)

アインシュタイン交点 (ハヤカワ文庫SF)

生き屏風 (角川ホラー文庫)

生き屏風 (角川ホラー文庫)

魂追い (角川ホラー文庫)

魂追い (角川ホラー文庫)

目覚めよと人魚は歌う (新潮文庫)

目覚めよと人魚は歌う (新潮文庫)

1000の小説とバックベアード (新潮文庫)

1000の小説とバックベアード (新潮文庫)