Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「ノーボーイズ ノークライ BLUE ver.」

 日曜の朝、あと二話で終わるのか、どう考えても話が終わるとは思えない「ディケイド」を見る。このシリーズ本当にぶっ壊れてます。キャッチコピー「全てを破壊し、全てを繋げ!」のように破壊者です、ぶち壊してます。誰もが思うでしょう、映画版もですがもはやご都合主義でしかない。


 平成ライダーが描いてきたであろう、この混沌のゼロ年代でもはやなくなった勧善懲悪ではなく、制作サイドが試行錯誤しながら呈示してきた新しいヒーロー像を壊したと言う意味では凄い。
 これだけ無茶した次の「仮面ライダーW」はよほどひどくない限り面白くなりそうだ。再生のための破壊なのか、放送回数がなくて破綻しただけの物語だったのか。


 宇多丸師匠の2009/08/24 ザ・シネマ・ハスラー仮面ライダー ディケイド オールライダー対大ショッカー」」配信。
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20090822_hustler.mp3


 まあ、そうなるわな。確かにこの映画肯定する人は映画「ルーキーズ」泣いた奴を馬鹿に出来ないというか同レベルってのは僕と同意見でした。「ザ・シネマ・ハスラー」としても面白い回です。
 ショッカー隊員が人間魚雷として飛んでいくシーンで宇多丸さんも爆笑、でしょ、あれコントでしかないでしょ。でも、映画館で笑ってたの僕だけだった・・・。


 渋谷のシネマライズに行き、「レスラー」以来なんでワンクール以内に一度はここに来てます。キム・ヨンナム監督、渡辺あや脚本、砂原良徳音楽。音楽の砂原さんって人は僕は知らなかったけど電気グルーヴの元メンバーなんですね。


 主演 妻夫木聡、ハ・ジョンウ、出演 チャ・スヨン徳永えり、イ・デヨン、キム・ブソン、貫地谷しほり柄本佑あがた森魚。僕が観たかったのは第一に渡辺あやさんが脚本だった事。僕は「ジョゼと虎と魚たち」がめちゃめちゃ好きで「メゾン・ド・ヒミコ」も好きで、以前はNHKトップランナー」にも観覧に行きました。

 
 ストーリー
 ヒョング(ハ・ジョンウ)の仕事は韓国から日本に住むおじ・ボギョンの元に密輸品を運ぶこと。日本側ではいつもボギョンの手下・亨(妻夫木聡)が迎えに来ていた。ある日ヒョングは少女・チスが荷物として入った袋を運ぶことに。だがわずかな隙に少女は逃亡。ヒョングと亨が何とかチスを捕まえると、彼女は「ボギョンから金を奪ったパパを見つけてくれたら5,000万円ずつあげる」という。ヒョングは亨に無理やり巻き込まれ、彼女の父親を探すことになるが…。


 主役は二人ですが、モノローグ的な立場から言えばヒョング(ハ・ジョンウ)がメインかな。
 渡辺あや作品で「天然コケッコー」は原作あるので、除くが、「ジョゼと虎と魚たち」では恒夫(妻夫木聡)が足の不自由なジョゼ(池脇千鶴)と出会い、彼女と彼女の祖母が暮らしている家に最初はおいしいご飯目当てで行くようになりやがてジョゼと恋人になる。


 最終的には恒夫がジョゼを捨てるとも言えるし、ジョゼはこの人は一生うちのそばにはおらんやろうと中盤で思うなど、男女の想いの差が描かれる。しかしながら家というもの、家族(孫と祖母)の家に転がり込むという意味では家族的な居場所を描いていた。好きな人と一番怖いものを見たいと動物園で虎を観に行くジョゼとそれを可愛いと思う恒夫。


 しかし、ジョゼはこの幸せが続かないと知っている。ラブホテルで幻想的な、古代魚が部屋の中で舞う。それは障害者と健常者の恋というよりは人生でほとんどの事を諦めた彼女が夢見たファンタジーとしてのメタファー。隣で寝る彼が彼女の諦めの人生の中で現れたファンタジーであり、消える現実だった。


 だから二人は家族というものになれない。恒夫は祖母が亡くなって一緒に住みだした家を出て、香苗(上野樹里)の元へ向かう、その途中で自己嫌悪から踞りながら嗚咽する。
 彼女を捨てた弱い自分への自己嫌悪と別れてしまえば想い出なんて淡いものにならない彼女との関係性を。ジョゼはおんぶしてくれた、一緒に隣にいてくれた恒夫がいなくなり、電動の車いすを乗り颯爽と商店街を走る。
 彼女の顔は一瞬だけ自分に訪れた夢を失ったが、それを受け入れた強さを兼ね備えた女性のそれになる。


 この最後での男女の対照的な描き方が僕にはとても強烈で印象的で、男の側の視点で恒夫の弱さに共感してしまった。この作品に漂うある意味でのファンタジーさも好きだ。犬童一心監督の打率の低さの中で、これと「メゾン・ド・ヒミコ」だけは僕の中でヒットした。


 「ノーボーイズ ノークライ」の事を書かないといけないが、「ジョゼと虎と魚たち」のことばっかり書いてしまった、好きだからしょうがない。ので、「メゾン・ド・ヒミコ」は簡潔に。


 この作品はゲイのための老人ホームを舞台に、ゲイである父親を許せない娘と、そこで暮らすゲイたちの様々な生き方を描いている。卑弥呼田中泯)は、かつてゲイバーのママだった男。彼はゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を作り、自らも他のゲイたちと共にそこで暮らしている。しかし彼は癌の末期であり、死期が迫っていた。
 卑弥呼には沙織(柴咲コウ)という娘がいる。彼女は、母親と自分を捨ててゲイとして生きることを選んだ父親を許せないでいた。卑弥呼の恋人である春彦(オダギリジョー)はそんな二人の関係を修復しようと、老人ホームでの高額なバイトを沙織に持ちかける。


 とてもわかりやすい構成なのだが、父に捨てられた娘。家族を失った人が主人公でありながら、ゲイであるが故に家族と住めない、家族と縁を切った、切られたゲイの老人たちが身を寄せる「メゾン・ド・ヒミコ」という擬似的な家族の中に彼女は次第に入っていく。互いが失ったものを、補う場所としてのホーム。だからこの作品はもっと家族というものを描いている。


 家族とは本来血が繋がった親近者の最小単位のコミュニティ。だが、血が繋がってなくても寄り添う事で血が繋がっていることよりも強い絆で結びついている家族もある。父に捨てられた娘だが、末期癌の父との繋がりを完全に否定はできない、彼の生き方も許せない、だけど完全に縁を切る事もできない。血の繋がりほど切っても切れないものはなく、優しくもあり恐ろしいものでもある、それが血の繋がり。


 では「ノーボーイズ ノークライ」で家族はどう描かれているか。ヒョングは幼い頃に母に捨てられた、母は弟を連れて自分のもとを去った。だから彼はおじに拾われ彼の仕事の非合法的な仕事をしている。おじは彼を息子だと思っているといい、彼の息子(柄本佑)が次男で、お前が長男だと言う。
 亨はヒョングのおじの組織の下っ端であり、家族はボケた祖母、妹、妹の子供の男の子三人。うち一人はヒョングのおじの息子との子。一番下の子供は手術をしないと長くは生きれない。


 対照的な二人。家族に捨てられたヒョングと家族を捨てたいけど捨てれない亨。冒頭からわりと暗めの色で展開される。画面的には明るくない、暗めの色合い。これは二人の心の中に住むどうしようもないものが溢れ出ているようだ。
 物語としては少女・チスが荷物として入った袋を運ぶことになり、亨の策略により巻き込まれたヒョング。彼がヒョングの叔父も欺き、大金を手に入れようとしていることがわかり殴り合いになる。亨はずっと韓国語で話しているがここで感情の発露というか日本語で金に決まっている、金のためだと言う。


 ボロボロな亨の家に転がり込むことになるヒョングとチス。言葉の通じない亨の家族と二人、亨の家族は韓国語が話せない。だが、二人はこの家に入り込んで溶け込んでいく。そこで亨の抱えている問題の深さを知るヒョングは、彼の行動を否定できなくなっていく。彼のしていることはこの家族のためだと身にしみてわかってしまう。


 おじの息子が亨の家を深夜に訪れ、チスを匿っていることがバレてしまい、一家全員とチスとヒョングを車に乗せて逃げ出す。ヒョングは亨に子供三人の中で誰か一人を置いていくとしたら誰だと聞く。亨は一人の名前をだし人見知りもしないしこいつなら一人でも生き延びていけると言う。ヒョングはなぜ母が弟を連れて出て行ったのか理解する。


 チスの父親の居場所を少しずつ掴み始める。しかし、おじから亨に巧い事お前は乗せられて使われていると言われ、チスを連れてきたら許す、さもなければお前の母親を殺すと脅される。
 ヒョングはいなくなったと思っていた母親の存在をほのめかされ、揺れる。母を救うためにチスを連れて行こうとするヒョングと亨は殴り合いになるが、ホテルでチスが父親を見つける。
 最初に掴んだ情報の人物は人違いだったので、ここはかなり強引なご都合主義が発揮されるが。


 亨は自分がチスを殺した事にして事務所に俺を連れいけ、だからチスの父親から金をもらったら絶対に家族に届けてくれと車に乗って走り出す。途中でヒョングがサイドブレーキを引いて亨を引きずりだして一人で事務所に向かってしまう。


 冒頭のシーンでヒョングはボートに寝転んでいる。彼は韓国から山口へ運び屋として働いている。ボートは波の揺れで止まる事はない。一度彼は山口に近づいた時に人魚に掴まれて海へ落ちてしまう。そこでおじに届けていたキムチの下に麻薬が入っていたことを知る。その人魚が後に亨の妹だったことが判明する。彼女は彼から麻薬を奪おうとしたが失敗したと。


 事務所でボッコボコにされるが亨たちの事を話さないヒョング。大雨の中、息をしていない彼は重りのコンクリートに繋がれて海に投げすてられる。沈んでいく中で大きなヒラヒラ光る尾の付いた人魚が彼を見つける。そしてクライマックス。


 「泣くなよ 王子 もし 目が覚めたら 笑ってやるよ」


 最後のシーンで僕は泣いてしまった。ああ、僕の好きな映画だ。あまり一般的に受けはよくないかもしれないけど僕の好きな物語だった。


iLL / DeadlyLovely


 ↑エンディングでiLL「DeadlyLovely」が流れ出す。この歌の感じが映画にとてもよく合っていた。僕が渡辺さんに憧れがあるのは僕の好きな物語構造の脚本を書けるからだし、彼女は基本的に才能があるからだけどオリジナル脚本を書いている。「しな丼」現在は「プレイワークス」から世に出た唯一と言っていい才能でもある。映像作家・岩井俊二氏が主催する「プレイワークス」プロジェクトがきっかけでデビューした人は彼女と「虹の女神」で脚本協力した齋藤さんぐらい。


 僕も「プレイワークス」メンバーとして所属してはいるが、彼女らを除く「プレイワークス」メンバー9割以上は世に出れてない。それは単純に僕らが金になるような作品を書けないということが圧倒的な理由だし、プロデューサーの目に留まるようなものが書けていないからチャンスもないというどうしようもない事実。


 だから余計に彼女の作品は僕には眩しい。




 昨日は湿度が低くて風が少しあって陽は出ている小春日和な感じで過ごしやすかった。観終わった後は新宿のブックファーストへ。イラストレーターの中村佑介さんの画集「BLUE」のサイン会に。
 僕は第二部の回だった。第一部はトークとサイン会。これに行きたかったけど整理券がなくなってて第二部の方へ。一人一人にイラストとサインを書いていらしたので三十分以上押したかな、仕方ない。僕らのあとに第三部という追加もあったんだけど、その回はどのくらい押したんだろうか。


 三十分押しみたいに書店員さんに言われて隣のカフェでお茶。でまた集まってサイン会に。



 順番が来てイラストを書いてもらって、目の前でマジックの線が人の顔に〜、いやあ凄いなあ。僕絵心ないというかまったく絵が上手くないので羨ましい。で、mixiとか中村さんのブログで少しコメントとかで絡まさせてもらっているのでちょいとお話をして、実際に会うのは初めてだった。十月に東京で講演があるみたいので遊びに行きたい。


ASIAN KUNG-FU GENERATION「新しい世界」


 中村さんの書いたアルバムのジャケットの世界が動いているPV。そういえば昨日朝起きた時に日曜はわりと見る「ボクらの時代」を見た。ゲストはリリー・フランキーみうらじゅんアルフィー高見沢。
 なんか濃いなあって思ったけどおもしろおっさんトークだった。リリーさんの肩書きはイラストレーター、みうらさんはイラストレーターなど。などって!

 
 イラストレーターで世に出てる人ってなんかバンドというか同時に音楽活動してるんだなあ、中村さんもしてるし。僕もあんなフラットなおっさんにはなりたいなって、エロいこと言っても問題のない健全なスケベさも持ち合わせてるフラットさ。
 まあ、グラサンしたらみうらさんっぽくはなるけどね、ロン毛だから。でみうらさんも言ってたけど黒グラサンかけてロン毛だとみうらさん、黒グラサンでスキンヘッドだとサンプラザ中野くん宇多丸さんになる。

 
 僕は禿げない家系なので、このままロン毛を続けるとみうらじゅん寄りになりそうです。でもグラサンしないけど。リリー・フランキーさんが主演した「ぐるりのこと。」は確かによかったし、リリーさんは演技がうまい。


「ぐるりのこと。」
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20080613
 ↑これもシネマライズ観たんだよなあ、東京の単館系だとここのイメージが強い。


「文化系トークラジオ Life」「Life政策審議会」Part5&6配信。
http://www.tbsradio.jp/life/2009/08/2009816lifepart5.html
http://www.tbsradio.jp/life/2009/08/2009816lifepart6.html


 サイトの下の方に番組中で流れたBGMの曲も出てるんですが、Part5ではThe Ordinary Boys「Maybe Someday」がPart6ではMGMT「Kids」と僕のリクエストした曲がかかってたみたい。リスナーももっと曲のリクエスト出したら黒幕が普通にBGMとかで使ってくれるんじゃないかなって。


 The Ordinary Boys(解散しちゃったけど)のフロントマンであったサム・プレストンがソロでアルバム出すみたいなことをスヌーザーに書いていた。

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

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メゾン・ド・ヒミコ 通常版 [DVD]

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No Boys,No Cry Original Sound Track

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Force(初回生産限定盤)(DVD付)

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Blue

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ぐるりのこと。 [DVD]

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