平凡な日常が唯一の救いであることを退屈な毎日の中で僕らは忘れていく。
悪意や狂気やあるいは境界線を越えてしまった他者の絶望の散乱銃が日常に飛び交っている、当たってないつもりでも確実に傷つけられている。 古谷実はこの痛さを淡々と描く、救いは・・。
童貞だった岡田くんもまあ彼女とやっちゃって、そこはさらっと書かれていた。でも初めての日に三回やったとか、灯りをつけて裸見たいとかまあ健全な男子はそうなると思う。だいたい中学・高校時代に彼女いなくて二十代になって、ましてや大学とか出るぐらい以降まで童貞を引き延ばすとかなりの確率で岡田くんと同じようなことはすると思う。という部分に共感するが、その彼にとっての幸せに近づいてくる悪意が裏表になって、笑えていたのに笑えなくなってしまう。
岡田と安藤のシャドウになっている生きていてやりたいことが人を殺したい森田、彼が狙い始めたのは岡田の彼女。しかし、森田の同級生とその彼女は森田を殺そうと決意する。かつて彼と彼が人を殺した事でずっと強請られている彼、彼女は森田を殺すことしかないと彼を説得する。
「稲中」でのギャグ路線からこちら側に完全に移行した古谷実。彼の書く漫画の笑えることは僕らが体験してたり痛感した事だったりする。彼女ができるかどうかが最初の問題、できたとしてもそれは終わらない。彼女ができたらできたで増える問題の方が実はやっかいなことを知ってしまう、なぜならそれは個人の問題でもありながら他者との関係性の問題だから。
そして悪意が蔓延するこの時代の狂気がその彼女ができた幸せと悩みのすぐ隣にいる。例えば渋谷の公園通り、手を繋いで歩いている付き合い初めのカップルの隣を昨晩人を絞め殺した人間が普通に歩いている、それは哀しいぐらいに可能性はある、ただその悪意が彼らに及んでいないだけのこと。
毎回彼の作品を読んで思うのは付き合う事になる彼女や主人公に好意を持つ女性たちが美人で巨乳であること、彼氏・主人公はいたって平凡な男子であるかカッコわるい。そういう恋人は確かに存在しているけども、この設定が一番のアイロニーだ。読者のほとんどがそんなことにはならないから。
- 作者: 古谷実
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清志郎追悼号を作って
http://www.ro69.jp/blog/shibuya.html?2009/06/06#a21540
↑ロッキンの渋谷社長のブログ。読みたくて近所に行ったがなかった。ロッキンのサイトだと初版は売り切れたので重版待ちみたいだ。アマゾンだとまだ買えるみたい。
忌野清志郎1951ー2009 ROCKIN’ON JAPAN特別号
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園子温監督公式サイトの「アンカーズだより」の更新がなかったのでしばらく見てなかったらここ二ヶ月ぐらいでわりと更新されていた。写真がカッコいい、しかし新作「ちゃんと伝える」のサイトは表示されるのだが、まだメニューとかないのね。
「ハゲタカ」の映画は観に行こうと思ってチケを買った。しかし、台本がけっこう変わったらしいので、サブプライム問題とか派遣切りとか、そこらへんを入れたことでどうなっているのか少し心配。
『ノーボーイズ,ノークライ』No Boys, No Cry
http://www.noboysnocry.com/index.html
妻夫木聡×ハ・ジョンウ×脚本:渡辺あや作品も観に行きたい。「天然コケッコー」以来渡辺あや脚本観てないしなあ、期待しとこ。
足の不自由な少女・ジョゼの恋愛を描いた『ジョゼと虎と魚たち』(03)、優しさと残酷さが同居するシナリオが高い評価を受けた『メゾン・ド・ヒミコ』(05)の2作は、韓国でも大ヒットとなった。これを受け、韓国の映画会社クラゼピクチャーズは両作の脚本を手がけた渡辺あやに熱烈なラブコールを送り、本作の企画が実現するに至った。ってイントロダクションにあるんだけど「ジョゼと虎と魚たち」が受けた背景には渡辺さんを見いだした「しな丼」(現在はプレイワークス)の主宰である映像作家・岩井俊二氏の「Love Letter」が韓国でヒットしたこともなんらかの関係はあるのだろう。だからこそ渡辺さんが「しな丼」に応募してプロデューサーに見いだされて「ジョゼ」を書く流れにも繋がっている。
「天然コケッコー」は主演の夏帆がかわいくてよかった、一緒に出てた岡田将生がけっこう売れてしまった感じ。そんな彼も連ドラ「オトメン」で初主演するまでに。岡田演じる主人公・正宗飛鳥は、高校剣道部で全国制覇を果たすなど質実剛健の日本男児。しかし、スイーツや少女マンガが好きで、料理、裁縫が得意という乙女心を持つオトメン。そんなオトメン男子校生とかわいらしいがおとこ気あふれる転校生・都塚りょう(夏帆)のラブコメディー。
立場が逆になってるような気はするが。
『天然コケッコー』観た時の感想。
山と田んぼに囲まれた田舎が舞台、小中学校合わせて6人の学校で唯一の中学二年生・右田そよを主人公に、東京から転校してきた大沢広海との関係、兄妹同然の学校の生徒達との卒業するまでの1年間を描く作品。
山下監督に3月に会った時にも聞いた、ANAを観に行った下北のライブハウスで偶然会った時もこの映画の事を聞いた。 脚本の渡辺さんは『ジョゼと虎と魚たち』から好きになったライターさんでトップランナーの観覧にも行った。
くるりの音楽は東京に来てから僕の想い出とともあるし、邦楽のライブに行くキッカケを作ってくれたバンドだった。 エンドロールには専門の友人が制作主任としてテロップに出ていた。終わってすぐに観たってメールをした。
話にはすぐに入っていけた。スクリーンに映る映像は僕が見慣れたものにとても近い匂いがした。 田んぼ、あぜ道、田舎特有の建物の雰囲気、人の感じ、時間のゆっくりさ、どれもが自分の故郷を思い出す要素があった。
僕の知っているものにとても近かったから。観ていると懐かしくなってきた、帰りたいなって思った。それらが僕を育んだものだったものと同様の在り方をしていた。
そよたちが話す方言も、舞台は島根みたいなんだけど、僕は岡山生まれの岡山育ちだから、まったく同じような言葉というわけでもないのだけど親近感が沸いたし、方言っていいもんだよなって思う。離れて解ることというものも確かにあるんだと。
祭のシーンでの神楽とか出てきて、地元も祭の時期になると神楽やっててよく観に行った。神楽を観るのが好きな子供だった。 祭の時期には相撲大会があって、勝つと山盛りの10円玉を片手で鷲掴みした分だけ賞金でくれるっていうのがあったなあって脳裏をよぎった。
濃密なゆっくりとした時間が流れていた。
映画の魔法がかかっていた。監督、脚本、原作、音楽、キャスティング全てが奇跡みたいな時間を描き出していた。 山下監督は女の子を撮るとキラキラして、男を撮るとダメダメな感じになる。その両方の差が撮れるのがすごいなあと思う。
そよたちはキラキラしている。そのキラキラはやがて終わりの時期を向かえてしまうんだけど、だからこそキラキラと輝くし、同時にせつなくもある。
この映画の魔法がかかった作品は映画館で観た方がいい、絶対に。うん、間違いなく。
こんなに祝福された映画は家でDVDで観ても感動はするだろうけど、あの雰囲気を映画館で観る事でキラキラが増すんじゃないかなと感じる。
最後のシーンでそよがする行為はその魔法を自ら解くかのように、今までの時間にサヨナラするかのようにゆるやかな静かなシーンだった。 観る人は終わりが近づいているのはわかっている。 僕はほんとに終わってほしくなかったし、でも終わってしまうことはわかっている。
そよは新しい場所へ、向かっていく、それまでの場所とは別れを告げて。 くるり『言葉はさんかく こころは四角』が流れ出す、何回も聞いている曲だ。 映像と音が重なって、目に涙が潤んできてしだいに零れていく。 ああ、終わってほしくないんだ、終わらないでほしい、この濃密でゆるやかなキラキラしている時間が。
終わった後には3時間ぐらいあるかのように感じられた。2時間しかないはずなのに、時間が本当に濃密でゆるやかにそして優しくてせつない時間が流れていたから、もっと観ていたかった。
観終わって思ったのはすごくいいものを観れたという観れてよかったありがとうという気持ちとこんなタチの悪い作品作らないでくれよという気持ち。
『天然コケッコー』は風景がとても鮮やかだ。子供達の成長を見守るように、四季ごとに舞う。 この映画には色彩が溢れて舞っている。 それが余計にキラキラとせつなさを増す要素になる。
この作品は時間が経てば経つにつれ、輝きが増してくる作品なんじゃないだろうか。
中学を出て早10年以上が経ってる、だからまだ思い出せるけど。これが日々が過ぎてあの日が遠くなるにつれてもっと輝きが増すだろう、過ぎ去りし日々への想いがこの作品をさらに響かせることになるだろう。
ゆるやかにしなやかにつよく、そしてせつなくやさしい。 色彩が舞う、子供達の笑顔が、笑い声が響く。
春、あぜ道の両脇にふわふわと揺れる薄ピンク色の桜が舞っているとても短いシーン。
その細いあぜ道をカブかスクーターに乗っているおじいちゃんがゆっくりと走っていく、とてもゆっくりと。 僕の知っている時間の流れがそこにはあって、あの短いシーンもなんだかすごく色彩あってゆるかやな時間が流れていた。
この作品すごく好きです。
色彩が舞っているんだ、そしてやさしくてせつない時間が。
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