Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「NO THANK YOU FOR THE MUSIC」

 朝読みかけで後半部分に突入していた辻村深月著「凍りのくじら」を一気に読み切る。若尾というキャラの暴走というか痛々しさがなんとなくわかってしまうのはあんな感じの人物が身近にいるのか、自分もその片鱗、可能性が多少はあるのかとSF(少し・不安)になってしまう。


 別所というキャラも最終的にはミステリーっぽい感じに落とすためのトリックだったのか。道尾秀介作品を最近読み始めたせいか、文字トリックというかギミックでそんなに驚かない。道尾作品だと「向日葵の咲かない夏」でのギミックを受け入れたらたいていの小説のトリックorギミックは装置としてありだと思うような気がする。


 著者が漫画家の藤子・F・不二雄さん、「ドラえもん」に影響を受けてリスペクトしているのがわかる作品。小説の中の主人公の女の子の父親が最初から最後までキーマンだった。父の呪縛と祝福が物語にあるのが女性作家らしい感じもした。


 待ち合わせの有楽町へ。電車の中で森達也著「東京番外地」の文庫を読む。永田町行きだったけど事故かなんかで他の路線に乗り換えて、とかその間読んでた。第一弾 要塞へと変貌する「終末の小部屋」を読んだ。そこは「東京拘置所」と呼ばれている、かつては「巣鴨プリズン」として第二次世界大戦のA、B、C級戦犯が収容されていた。以前に読んだ柳広司著「トーキョー・プリズン」の舞台が「巣鴨プリズン」だったんだけど、今の「東京拘置所」だとは知らなかった。


 「東京拘置所」には収監されているのはほとんど未決囚。裁判の被告人で、結審して刑が決まれば刑務所に移送される。ライブドアの堀江さんのほうに保釈されて娑婆に出てくる人もいるが死んで死体になって初めて外の外気に触れる人たちもいる。
 死刑囚の刑は死刑になること、刑が執行されるまでは未決囚扱いらしく、拘置所に勾留される。


 死刑という生命形に懲役という自由形が加わるので、確定死刑囚を刑務所に入れる事はできない。「東京拘置所」には麻原彰晃連合赤軍永田洋子もここに勾留されている。彼や彼女がそこから出る時には死体になっている。


 「死刑」という制度がありながら僕らはその実態をほぼ知らない。僕が無知なのもあるけどほとんどの人が死刑囚は「東京拘置所」にいるなんて知らないだろう。こういうことを学校でなんで教えないのか、知らないから世界と自分がどう結びつくか知らないんだ。選挙権だってその意味がどういうことなのか実感もできずに二十歳になって選挙権だけが与えられても重みがない。


 でも、そういうことを教えないのはきっと国や政府が本当のことをいかにうまく隠すか。国民が賢くなり過ぎては困るからっていうのが大きいんだと思う。そういう意味ではネットでいろんな事がいろんな意見が出てくる事で隠そうとしたことも隠せなくはなってきているかもしれない、それがネットの希望かも。


 有楽町に着いてから園子温監督「ちゃんと伝える」を月曜に観ようと思ってビックカメラの中のシネカノンに行った。22日から公開で舞台挨拶があったのでエグザイルのAKIRAファンがたくさんいた。で受付で聞いたら当日券しか販売がないそうで、買えなかった、月曜に満員電車乗って有楽町に来て買うしかない。平日の朝一の回なら混まないだろうし。


 園さんの「愛のむきだし」ではAAAのファンの女子高生が初日舞台挨拶の席を八割方占めていた。映画観るマナー糞だった、映画中に平気でおにぎりとか食ってたからなあ、で「ちゃんと伝える」はエグザイルファンばっかりだろう。まあ主演がどちらも人気あるから女性客が多い。まあ、仕方ないんだけど女子高生よりはだいぶまともだと思いたい、平日の初回ならまだ客も少ないだろうからゆっくり観れると思いたい。


 近くでお茶して出たらビックカメラの周りに女性がたくさん集まってた。出てきたバンが囲まれて動き辛そうだった。AKIRAファンなんだろう、すげえなと。実際に人気あるのが伝わった。園さんはふらっと歩いて帰りそうだもんな、園さんには会いたかったけどやっぱり会えなかった。


 「愛のむきだし」でも思ったけど、AAAのファンの女子高生が園子温という世界で勝負できる監督の作品を観てしまったことでそっち側(映像とかクリエイター)に引っ張られる子も少しはいるんだろうと。それは希望になりえるし、人生を過ってしまう方向にも引っ張る。


 AAAもエグザイルも普通に考えたら一般的に知名度があって人気のある人たちだ。園さんは一般的には知られていない。その組み合わせもある意味で面白いなあと思う。


 次回作である初の全編英語となる映画『ロード・オブ・カオス』では『トワイライト〜初恋〜』のジャスパー役で注目を浴びたジャクソン・ラスボーンが主演する。ブレイクしてギャラが高騰する前に契約したらしい、さすが。
 「紀子の食卓」で吉高由里子を世に出したし、映画俳優としてブレイクする前にオダギリジョー主演で「ハザード」を撮ったし、役者を観る目が凄いんだと思う、世に出る前の才能を見抜く。だからたぶんAKIRAもけっこう出来てるだろうなあって思う、というか思いたい。


 それから歩いて日比谷公園に。野音にてbonobosのワンマン。かなり前方のBエリアで通路側だった、始まる前からビールを飲みながら蝉の合唱を聞いていた。野音に来たのは専門の時の知り合いが蒼井そらの紹介で東京ダイナマイトのライブが見える事になって誘ってもらったのとSyrup16gのワンマン。

 
 bonobosのライブは平和的な感じだった。ボーカルとベースが同じ麦わら帽子で付き合ってんのか?と思って終わって聞いたらそうらしい。スーパーカー的な事ですね。


 なんかcharlieのよく言うサークルクラッシャーのイメージが沸いた。演劇系に多いらしい、大人計画女教師は二度抱かれた」ではそれも描かれてた。


 サークルクラッシャー/男性の割合の多い文化系サークルやそれに似た性質を持つ職場に少数の女性が参加した後で、その女性をめぐる恋愛問題によって急にサークル内の人間関係が悪化し結果的にサークルが崩壊する現象がある。このときの女性を指す呼称。ただし、そう呼称される女性への揶揄を念頭に置いた言葉ではなく、サークルが崩壊したという状況およびその主因となった男性たちへの揶揄を念頭に置いた言葉として用いられる。


 問題はというと一番前のエリアはAでそこは入る時にスタッフにチケ見せないともちろん入れない、僕らはBでわりと前の方。で立ち見がいたのかな。で、立ち見が余裕でBエリアに入れる、つまりスタッフがいない。で、僕らは通路側で通路のAとの仕切りの前にスタッフがいた。通路スタッフの前に数人の客がいて音に合わせて踊ってた。


 その中の一人の馬鹿がライブ中に写真を撮った。デジカメだから液晶画面が夜の野音ではムカつく明かりになる。それ以前にライブ中のアーティストの写真を撮るなんてマナー以前の問題だ。ファンなら絶対にしてはいけないことだ。アーティストの権利を侵害している行為。さすがに少ししてスタッフが注意した。その後も僕らはそいつらが気になって仕方ない。席ありなのだから通路の前で観るのはルール違反だからだ。でスタッフも全然注意しない。カメラマンも撮影でいたけど、そいつらがいたらその前方までは行けない。


 さすがに途中でその前方のスタッフに言いにいった。「席ありなんだから通路で観てるのはおかしいでしょ、注意してください」と。そう言うと彼は「この人たちは関係者パスがあるのでAには入れないですがどこでも観れるんです」みたいなことを言いやがった。明らかに途中から後ろから来たやつもいたし、最終的には終わった後にそいつら僕らのかなり後方部分の席に荷物取りに戻ったんだけどね。


 まあ、関係者だとしようか。関係者がそういう態度取るか、普通。関係者がライブ中に写真撮るような愚かな行為をするのか? そんな連中が関係者だったらどうしようもない。設営スタッフも少なすぎる。bonobosは確かメジャーからインディーレーベルに変わったはずだ、その影響なのか。きちんとスタッフも集められないならライブはすべきじゃない。


 僕らの払ったチケ代はスタッフの給料にだってきちんとなっているはずだ、bonobosは平和的だった。それだけに残念すぎる。最初から曲を聞き込んでなかったからあまりノレナカッタ、おまけにそいつらと使えないスタッフの行動のおかげで一気に冷めた。ビールを飲んでた事もあるけど、僕は酒を飲むと一気に冷めることがある。そうなるとどうしようもない。


 音は鼓膜から入ってくるけど心に届く事はもはやない。曲タイトルがわかってた「THANK YOU FOR THE MUSIC」ももはや周りの幸福な風景の中も座って聴いてた。ここにいる感じがまったくしなかった。


 ロック系のライブの方がスタッフも危険なことがあるからしっかりしているなあって思った。危機感があるからスタッフは少しピリピリしている。ダイバーがいたりするから。僕はやっぱりロック系のライブの方がいいや。幸福な感じの音も好きだけどCDでいいや、ライブでモッシュやダイブが当たり前になってるのもある。


 だからbonobosはもうライブで観ない。フェスでも観ないと思う。あまりにもイメージが悪くなり過ぎた。


 帰りにお好み焼きを食べてたら周りの客が出版系の人らしく「1Q84」から村上春樹話をしてた。いいなあ、領収書で切れてと思ってしまった。

 
 家に着いてからラジオを付けると「ウイークエンドシャッフル」の「シネマハスラー」はこないだ僕も観た「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」でした、やっぱりボッコボコに酷評でしたね、ラジオの音悪かったけど笑った。確かにこの映画は物語としては構成的に無理がある。ライダーがたくさん出てるということだけの映画だから。


 で来週は「20世紀少年 最終章」だ、これまた宇多丸師匠が飽きれながら話すのが目に浮かぶ。


「空気」と「世間」と「レントゲン」とあと何か(劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」を観た時のブログ)
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20090818


 今日はシネマライズで「ノーボーイズ ノークライ」観て、イラストレーター・中村佑介さんの画集「BLUE」のサイン会だ。今日はいい感じになるといいんだけどなあ。

凍りのくじら (講談社文庫)

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東京番外地 (新潮文庫)

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死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

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Blue

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