Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「リアルのゆくえ」

likeaswimmingangel2008-08-26

 渋谷のリブロの新刊コーナーで大塚英志東浩紀「リアルのゆくえ」という新書が出ていて手に取って、文庫の新刊コーナーでいとうせいこうノーライフキング」の文庫があって、一緒に買った。
 あとは大塚英志原作・山崎峰水黒鷺死体宅配便3」の文庫とサタミシュウ「おまえ次第」を購入。給料日辺りに発売される新刊はつい買ってしまう、うーむ、足下を見られているが仕方ない。
 「黒鷺〜」に関しては既存のコミックスをまんま文庫版にしているのだけど大塚英志関連本は買ってしまう、サタミシュウ「おまえ次第」は前の2作持っているので3作目もってことで、帯には前二作で10万部らしい、ほんとか?そんなに売れてるの?でも帯の青春SM小説ってのはなんか違和感。


 その後、小降りの中パルコのシネクイントにて松山ケンイチ主演「デトロイト・メタル・シティ」を観る。原作も読んでて好きだったし、映像化したクラウザーさんを観たかったので。客は19時半でも満員で立ち見もいた。若い層、まあ大学生ぐらいが多かったかなあと言った感じ。


 主人公・根岸崇一(松山ケンイチ)はオシャレ系ポップミュージシャンになるために故郷の大分から東京の大学へ進学し、送ったデモテープが発端で悪魔系デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」通称「DMC」のカリスマギターボーカル・ヨハネ・クラウザー二世としての日々を送っている。大学の同級生で憧れていた相川(加藤ローサ)さんと偶然の再会をするが・・・。


 やりたくないデスメタルバンドとして認められ有望視され、やりたいオシャレ系ポップミュージシャン(シブヤ系)としては芽もでない中で苦しむ根岸の悲哀は笑える、自分だったらイヤだ、でも他人事だから笑えるのがこの作品の笑いのツボだったりする。


 根岸は小沢健二コーネリアスシブヤ系に憧れている、彼の携帯の着信音はオザケンの曲だった。
 大学で歌っているのは本物のカジヒデキだったし、とデスメタルに対してオシャレ系ポップミュージシャンとしての渋谷系があるのだけども、客は大学生ぐらいが多かったけど、大概の連中は知らんだろう、渋谷系を。
 僕だって間に合ってないというか記憶にほぼないし、そっち系聴き始めたの二十歳過ぎてたし、二十代後半の僕が小学生低学年の時にオザケンが「HEY!HEY!HEY!」でダウンタウントークしてるのがわずか記憶にあるぐらい。この漫画ってたぶん、そこら辺を抑えている人の方が余計に面白く感じるはずなんだよね。


 あと漫画読んでても原作者がぜったいにメタル好きじゃないのはわかる、好きだったらこんなに面白い扱いにはしないから。普段のクラウザーさんは面白いと思った、日常に現れた非日常なんで劇場内はかなり笑いがあがっていた。まあ、そんなに笑えなかった自分がいたけど。


 笑えない理由はたぶん、半月前に観た大人計画女教師は二度抱かれた」だと思う。ここ最近で一番大爆笑したのはこの作品だったし、一番しんどいじゃんとも思った作品。大人計画の舞台はとても素晴らしいのと同時にそのダメージをけっこうな間引きずってしまうのがやっかい、普段なら笑える事も無意識に比べているのかどうも笑えない自分がいる。


 他のお客さんは笑っていたからまあおもしろいんじゃないのかなと言った感想、まあ、相川さん役の加藤ローサが思ったよりもクラウザーさんに罵られていないところとかどうなの?そこがけっこう笑えるポイントじゃないのかい。
 事務所的にNGだったのか?ならけっこう似てるというか下手したらもっとかわいいAVの柚木ティナことRioでいいんじゃねえかと思ったりした。


 一番いらなかったのはライブシーンだったけど、もっと爆音でいいんじゃないかな、シネクイントそんなに音響悪くないだろうし、それにもっとむちゃくちゃしないとさあ、デスメタルのライブってあんなにも普通でいいのか? ロッキンオンジャパンフェスの方があれよりも全然暴れてるぞ。ライブシーンだけでもPV出身監督とかに任せた方が、普段のシーンはいいのにライブシーンがダメだから肝心なとこで気持ち盛り上がらないよ、普段からライブ行ってる人間としては。


 観ながらクラウザーさんって現実にいるとしたらデーモン小暮じゃんと途中から思ってしまった。
 だって、吾輩って言ってるし、(以下ウィキペディアより)地球上で閣下を一躍有名にしたのはフジテレビ「笑っていいとも!」のテレホンショッキングに出演したことである。そのときに自身の年齢を「10万24歳」と答えた。とか、この人の方がキャラに忠実だよ。


 メイキング作ってたドキュメンタリー作家の松江さんがデーモン小暮閣下のドキュメンタリー撮ったら観たいわあと考えてしまいました。実際に根岸君がクラウザーに扮するようなことを実際の世界で何十年やってることがもう素晴らしいし、ギャグだよ。絶対に面白いよ、というか観てぇ。


 まあ、この映画が面白いか面白くないかというと面白いのだけど、ライブシーンが残念ということに尽きて、ただ主演の松山ケンイチに関してはすげえなと思う、制作サイドとの共犯者ぶりがクラウザーを作り上げていると思う。ただ、公開規模とかバジェットとかデカクなりすぎてムチャできない辺りが残念というか、いっぱいの人に観せる為にムチャできないような気がしてそれがもったいないなあ。


 帰ってから「リアルのゆくえ」を読む、買ってから少ししてこれって「新現実」に載ってた二人の対談をまとめたやつだと思い出した。
 第四章からなっているが、01年、02年、07年、08年アキハバラ事件の後の語り下ろしの構成。
 読んでてなんで自分がいとうせいこうノーライフキング」を知っていて買おうと思ったのかわかった。本の中で「ノーライフキング」の名前が出てきてた、たぶん以前にトリッパーか新現実に連載された時に読んでて記憶の中に残っていたらしい、ある意味刷り込みかもしれないし、たまたま文庫として復刊されていた偶然にもよるけど。解説が「リアルのゆくえ」に何度も名前があがっていた香山リカだったりした、他には必然的に宮台真司の名前も。


 第三章以降、大塚英志がすごく東浩紀に苛立ちを露にしているのがわかる。
 責任の所在とかあるだろうし、大塚英志は芸風的なところにあるけど怒ったり喧嘩したりとかしてよく連載を辞めるし、なぜかあとがきは大塚氏からの申し出で消されているんだけど、その後書きにたいして東浩紀があとがき書いてるんだけどなんだ? けっこう大塚英志のあとがき好きなんだけど、文庫版とかあとがきだけのために買っちゃう僕としては残念。


 最終章の秋葉原事件東浩紀の内面に変化があってことがわかる。
 秋葉原事件が「いいタイミング」で起きたと言い、若手論壇に「思想地図」「ロスジェネ」で注目が集まり始めていた。大塚英志世代の宮崎勤「連続幼女殺傷事件」の時のようなタイミングの「よさ」が似ていると言っている。ということは加藤容疑者を、彼のした事を引き受けていくということなんだろうけどその覚悟ができたということだよね。大塚英志宮崎勤の裁判に顔出し、手紙でやりとりをしたように、積極的に関わっていこうとするのかな。どうでしょう?


 大塚英志って「アフターダーク」以降の村上春樹は評価してたんだな、オウムの中に見たジャンクで作られた思想が自分の中にもあることを村上が見つけてしまってからの作品に関して評価している。これは「初心者のための「文学」」の補講の「海辺のカフカ」を読むでも現れていたけど。まあ、あいかわらず村上龍は評価しないのね。最近ようやく「半島を出よ」読み始めた、一年以上放置プレイしてたけど。


 新海誠佐藤友哉のことも出てくるが、二人とも「新現実」で書いてたよな、確か。佐藤友哉の作品には共感しないんだけど「水没ピアノ」とかはやっぱり同世代を生きてる人が書いたような感覚はあった、まあ好きか嫌いかは別問題だけど。


 それにしても大塚英志関連の本が増えすぎた。あと本当に「多重人格探偵サイコ」いい加減に終わらせてくれ、高校の時からやってるから。なんか「摩陀羅」同様に未完のままで終わらせそうで怖い。

ノーライフキング (河出文庫)

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おまえ次第 (角川文庫)

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