Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「非正規レジスタンス」

 石田衣良新作「非正規レジスタンス」、代表作である「池袋ウエストゲートパーク」の第八弾。
 気が付けばそんなに出ていたのかと思うのだが、読み始めた第一弾や第二弾の頃はマコトやキングと同じや年下だったのにすっかり彼らの年齢を越えてしまった自分がいる。マコトはいつものようにトラブルシューターとして池袋の街にいる。


 確か帯は衣良さん自身がコピーをつけているはずなんだが、「俺たちは、透明人間じゃない。」とある。その横の○の中には(ロストジェネレーションの声を聴け)とある。

 
 この作品は作品が書かれた時代、連載された時に話題になっている時事ネタ的な事件等をモチーフにしているので、単行本として出される時には少し前に話題になった出来事として読みながら思い返す事が多い。


 ロストジェネレーションの声を聴けというのはわからなくもないが、声はいつだって無視されて、その立場は社会の状況や政府の政策によって作られたり、勝手に失わされているだけだ。
 今の原油の高騰で生活はある程度の富裕層でない限りきつくはなっているし、区民税や所得税すらいつのまにやら上げられている、ロストジェネレーションじゃなくても声を上げている、叫びを上げている、でもそんな声は殺されているのが今の現状だ。世代論は必要かもしれないが、この国時代のいろんなほころびが国民の首を絞めている。


 この巻の半分の二話は読んだ、少しユルい感じもしなくもない、マコトが出ていってトラブルを解決しなくてもいいような、ある種の自作自演なものがあるので少し読み応えがない。
 最後の「非正規レジスタンス」次第で感想は変わると思われるが、どうやら派遣の日雇いで働く人間がメインの話らしい。最近の殺傷事件の犯人が派遣だったりして日雇い廃止のようなことを言っているが、それがなくなったら今でもしんどくて死にかけのやつらはもっと食えなくなって死ぬぞ、何の解決にもならないと思うし、変えるのは派遣会社のマージンの取り分とか、二重派遣の禁止とか労働者を助ける仕組みを作ることが本当に必要なはずなのに、派遣そのものを無くしたら問題解決でしょみたいなことをしようとする頭デッカチなお役所的なやり方で増々悪い方向に向かいそうな気がする。


 衣良さんの本は読みやすいので早く終わるのでいいのだけど、その時の話題や事件のことを話に盛り込むので忘れてしまいやすい気もしなくもないのだが。一番面白いのは「骨音」の西口ミッドサマーレイブだとは思う、I.W.G.Pでは。

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉