「Modern Guilt」

　古川日出男著「LOVE」を読み直して、これは三島由紀夫賞受賞作だ。読み直して発売当時には読めてなかった部分が自分に入ってきて、読み直して新しく物語に親しんだ。目黒川を歩いて行けば東京湾に出るということが実感としてわかる。「サマーバケーションEP」で神田川が隅田川に注ぎ込んでそして東京湾に出たことを自ら歩いて知って体感したからこそ余計にわかる感じがする、とても。
　いつか、そうだな夏ではなく秋ぐらいには目黒川を池尻大橋ぐらいから歩いて東京湾を目指して歩こうかな、紅葉の感じの目黒川沿いを、秋の海へと。
　そして確かめよう、目黒駅は品川区にあって目黒区にはなく、品川駅は港区にあって品川区には属していないという事実を、いや真実か。

　「LOVE」が読み終わった後は古川日出男さんの今の所最新刊の本にあたる「ゴッドスター」を読み直す、速度があって、高速が光速になって。これは埋め立て地の物語、かつてはなかった。東京湾の人工の土地のそれ。母になったわたしとカリヲのオンとオンの話、一気に光速にシフトしてついて来れないものは置き去りにする古川文学。なんだか笑ってしまうんだなあ、この速度は圧倒的すぎて笑うしかない。

　読みながらふと、古川さんの作品は川から海へ、土地から土地へと連なる物語が多いのは古川という名字に川があるから、それがわりとキーとして古川さんの中にあるのかもしれないなあと思った。川はやがて海へと注ぐ、海へ出ていくために合流し交わってひとつひとつが連なって物語になっていく。

　だとしたら僕は？　碇本の名字は、碇とは船のイカリ、であって船が流されないためのもの。ある一定の場所に固定するもの。でもいつも船は海上にある限り揺れはするけども。僕もまた海に縁のある名を持つ。
　オヤジがいうには瀬戸内海には塩飽水軍という海賊が昔いたらしく、おそらくは名の通りなら船関係の仕事をしていた、あるいは水軍の下っ端だった可能性がでかい。確かに幼い頃から一番近い海は瀬戸内海だ。

　名に支配されるならば、数字が因果律を持つならば、名は意味を持ちうるならば、僕はゆらゆらと浮かぶ何かを留めることができるのかもしれない、と自ら意味をつける事も可能。自分を物語るというのはそういうことかもしれないし、自ら意味をつける事でそれができるようになるのかもしれない。物語は自らの外にあり、内にも同時にあるものだと。

　で続けて「ハル、ハル、ハル」を読み直す。短編が三つあるが最初の「ハル、ハル、ハル」は昨日までに読んでいた。
　残りの二つを今日読む。サウンドトラックは買ったBECKのニューアルバムの輸入版「Modern Guilt」を。
　「LOVE」に「BECKは幼い頃から聴きなさい」という叔母さんが出てきたり、古川さんのサイトの日記見てたら「Devils Haircut」という表記があったのでかなり好きなのではと思うんだが、どうだろ。
　三つ目の短編は犬吠埼というか房総半島の物語「8ドッグズ」で、里見八犬伝と関連して、もちろんイヌたちと関連して、八犬伝の犬士の珠の字、両肩に入れた左右に４つずつのタトゥー、それから虐待されているイヌたちを手なずけて、そう８匹のイヌたちを。イヌの話だった、僕が最初に出会ったのは友人宅での「ベルカ、吠えないのか」だったし、またしてもイヌが出てきた。

　僕は戌年で、でも幼い頃に近所の犬に噛まれてから苦手だ、未だに犬にはよく吠えられる。なんとなくイヌ繋がり。

　近所にあった川にはヌートリアがいて（以下・ウィキペディアより／ヌートリアは、ネズミ目（齧歯目）・ヌートリア科に属する（以前はカプロミス科に分類されていた）哺乳類の一種。南アメリカを原産地とするが、毛皮を取るために移入したものが野生化し、現在、北アメリカ、ヨーロッパ、日本を含むアジアに帰化して分布する。「ヌートリア」とはスペイン語でカワウソ（の毛皮）を意味し、原産の南米では本種のことを「Coipo」と呼ぶ。英名でも「Nutria」より「Coypu」の方が一般的である。かつての日本では、海狸鼠（かいりねずみ）、沼狸（しょうり、ぬまたぬき）などとも呼んだ。中略。西日本各地（広島県、岡山県、島根県、香川県と近畿・東海の各府県）に分布が拡大していたが、千葉県や静岡県の一部でも生息が確認されており、今後も拡大すると考えられる。特に岡山県にはかなりの数が生息しており、年間約800〜2000頭もが害獣として捕獲・駆除されている）、ヌートリアって幼い頃からその川で見ていたけど全国的なものではないんだよなあ。
　といた場所から離れて初めて知ることはある。
　あの川はこの前帰ったら工事っちゅうかなんかコンクリートひくようなことをしててヌートリア見なかったけど、たまたま見なかったのか？　あるいはどこかへ泳いでいったのかちょっと気になっている。ヌートリアが出てくる話はあんまり世の中にないよな、きっと。

LOVE

ゴッドスター

ハル、ハル、ハル

Modern Guilt