Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「サウンドトラック:東京」

 9月に入って今年もあと三分の一、三分の二は終わった。リキッド 5thでZAZEN BOYSを観て、十日にはZAZEN BOYS×立川志らく マツリセッションがあるので、ここ数日はZAZENをけっこう聴いている。

 
 8月はわりと小説よりは雑学系の本をたくさん読んだ、再度読み返していた古川日出男著「サウンドトラック」は下巻に入った所で読むのをやめていた。で、BGMのようにここ数日はZAZEN BOYSを聴いていたので九月だし一気に「サウンドトラック」下巻を読み切ろうと読んだ。


 細部の記憶がなくなっていておおまかには展開がわかっていたのだが、忘れている箇所が多いのに気づいた。東京が亜熱帯になってしまっている、だから隅田川神田川が交わる場所にボートを停めて住んでいるボートピープルのように暮らしていた主人公の一人であるトウタと、鴉使いであるレニが傾斜人を一掃して旅立つその時、スコールがもはや当たり前でパンツがぐちょぐちょになってしまうほどに水位が上がっているその東京の神田川をひたすら西に、川を辿っていけばボートでやがて神田川の源流である井の頭恩賜公園に辿り着く。


 それはフィクションだけれども、水位が上がればボートで隅田川から井の頭恩賜公園までは実際のところ行ける。これは読んでて思った。このボートが隅田川に混ざり乗り込まれる神田川を源流に遡る行為は、古川日出男著「サマーバケーションEP」における神田川の源流である井の頭恩賜公園から隅田川に、そして隅田川東京湾へ流れることを確かめに行く行為の真逆のことだ。ただ、ボートで遡るには単純に水位が上がっている東京というフィクションでなければならない。


スプリングバケーションEP
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20080428


 僕が古川さんの作品にどっぷりハマるきっかけは↑の「サマーバケーションEP」を一人でやってみようと貫徹していろんな感覚がリズムがなんとなくわかったからだった。古川作品のキーワードの一つは「川」であるのはいろんな作品を読むとわかるし、インタビューでもいわれている。自分の名前の中に古川と川が入っていることが大きいのだろう。川はやがて海へ流れ出すという大きな流れの一部であり全体でもある。


「Love Fall」
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20081118


 ↑は三島賞受賞「LOVE」の舞台を歩いて今度は目黒川から東京湾へ、そしてネタ探しもあって東京タワーまで歩いた。確かに東京は23区内は思いのほか狭い。歩く事で物語の精子を受精するということを「古川日出男REMIX」で言われていた。


 「サウンドトラック」の中で重要なキャラとして出てくるクロイという鴉。いつも誰か繋がっていたくないという古川さんは、孤独である事で鴉に認められているように感じると。「QJ」の向井秀徳特集での向井さんのいう「ひとり」と同じ感覚だろう。向井さんのインタビューを読むとかなり古川さんと考え方や感じ方が呼応しているというか似ている。


 マツリセッションをする立川志らくさんはどう呼応するのか、あるいは・・・。かなり面白い事になりそうだ。


 東京湾を見ながら、歩きながら「Sabaku」を聴くと驚くほどに景色と溶ける、融解する。やっぱり新刊がいつ出るかわからないけど去年一度読んだ「聖家族」を読み直そうかと思う。しかし、長さがもの凄いからなあ。


 こないだ買ってた道尾秀介新刊「花と流れ星」も短編集で1話ずつ読んでいるんだが、この人長編だと小説のトリックというかギミックで最後に驚かされると言うかスゲエともふざけんなとも思うオチなんだが、短編はあんまり毒がない感じで、「鬼の跫音」もそうだったんだけど短編はあんまり面白さを感じない。これだったら乙一さんの短編集の方が短編のレベルとしては断然高いと思う。最近乙一さんの本読んでないけど。

サウンドトラック 上 (集英社文庫)

サウンドトラック 上 (集英社文庫)

サウンドトラック 下 (集英社文庫)

サウンドトラック 下 (集英社文庫)

サマーバケーションEP

サマーバケーションEP

LOVE

LOVE

雨ン中の、らくだ

雨ン中の、らくだ