花沢健吾「ボーイズ・オン・ザ・ラン」第10巻(最終巻)の感想はどうも消化不良な所が否めない。
救いのあるようなコミックスだけに追加されたエピソードは必要かどうか?あれを僕は救いだとは思わない。逆に残酷だとすら感じる。
神懸かっていた展開をしていたし、時代性があると言えばあった。
これほど「モテ」「非モテ」が話題になったり、00年代は一種「童貞」も大きなキーワードだったと思うのだが、このマンガはそれをきちんと捉えていた。
だから多くの読者(男性)は主人公・田西に自分を重ねたし、笑いながらも痛さを感じていた。痛さを笑うのだ、自分にもある部分だから笑って痛くて突き刺さって読み終わった後に痕が残る。だから染みる。
だから期待もしているし、田西がどう動いて変わっていくかが見たかった。だが、10巻の展開でいくと物語の途中で切れたようにしか感じない。
シューマイ先輩(先輩と言っても小学生だが)の学校でのこと、そこに田西と花が関わっていく。
最後の台詞はよくわかるし、いい台詞だと思う。
田西、花、シューマイの三人が「家族」になろうとするのは救いがあるのかもしれない。
「ユリイカ」「紀子の食卓」などでもある種の疑似家族の中で救いや癒しを現代社会の中で照らしていたし、最近だと「ラストフレンズ」のシェアも疑似家族的な面がある。
崩壊したものを再生させようとしているのか?
ヤンサンの休刊で「クロサギ」「Dr.コトー」等の人気作がスピリッツに移籍するので何本かの作品が打ち切りになるだとか、スピリッツの編集長が「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が嫌いなので打ち切りになったとか噂も流れていたけど、この作品はここで終わったらダメだろう。続けていかないと。
花をレイプしようとしたクソガキどもと一緒にいた元ボクサーの安藤とかの散りばめていた伏線とかなんだったんだ?
花を旦那と離婚させて花とセックスしてそこから先は?
「家族」になることだって難しいだろうし、大事なのは「家族」になった後に起こる出来事と「家族」を継続していく難しさと喜びだと思う。
それを書ける作家だと思うし、この作品はもっと短く終わるか、長いスパンで続けていくことで希望を見出せる物語になったと思う。
と考えると最終回を読んだ時にはガッカリしたが後にすごい終わり方だったと思い直した古谷実「シガテラ」の終わりの方が時代に批評性があるのかもしれないなあ。だって、「シガテラ」の最終回って現実性をマンガに持ち込んで、しかも思春期の思い込みなんて年齢を重ねて社会に出ればどうってことないって言ってるようなもんだし。あれはあれでかなりしんどいけど。
でも古谷実作品って主人公がモテない、童貞、友達いないとかなんだけどその彼に近寄ってくる女や彼女になる子はかわいくて胸がデカイという一番現実性がないとこだったりしてそれが古谷実の読者への一番の皮肉なのかもしれないなあと思ったりもするんだけど。
なにが言いたかったというとコミックスに付いてたエピソードはなかったことにして「ボーイズ・オン・ザ・ラン」どっかで続き連載してくれないかなっていうことなんですけどね。
TBS RADIO 文化系トークラジオ Life http://www.tbsradio.jp/life/
「秋葉原連続殺傷事件」の回のポッドキャストもPart8まで配信。
最初はいつもと違うような声だったcharlieもだいぶいつも通りに戻って、社会学者の立場で話していて復活って状態。届けれる言葉がある人はきちんと言葉を届けるべきだと思う。
さて、次回はどんなテーマになるんだろうか?
ボーイズ・オン・ザ・ラン 10 (10) (ビッグコミックス)
- 作者: 花沢健吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/06/30
- メディア: コミック
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