19時より六本木ABC(青山ブックセンター)にて小説家・古川日出男さんの朗読ライブとサイン会があった。
今回は「ベルカ、吠えないのか」の文庫化にあわせたものだった。初めての古川ナイト、お客さんも店内に集まり始める。古川さんが登場するが、やはりイメージより写真で見た時より痩せている。
「聖家族」という最新作を100日間籠って編集者などからの連絡を絶って小説を書いているというのはサイトで知っていた。かなりの疲労が感じられはしたが何かやり遂げたという安堵の表情にも見えた。
トークが始まる、声がかすれているような質感。
100日間人とあまり話さない生活は喉をかなり弱らせてしまうものらしい。佇まいがカッコ良く見えた、この人が「ベルカ〜」を書き、「サウンドトラック」や「サマーバケーションEP」を書いた人だと思い、彼の目を見てた。
しかし先週の日曜からひいている風邪のせいで咳が出てしまう、なんとか抑えようとするが出てしまう、古川さんの声が途切れて聞こえてしまうし、周りの人たちにも不快な思いをさせてしまう、申し訳ない。
いよいよ、朗読が始まる「ベルカ、吠えないのか」の一部分を読み始める。空気の密度が変わったように、みんなが息を潜める、耳に集中する。始まる、声によって物語が浮かび上がる。
僕は咳をこらえる、耳に集中する、咳を耐えると横隔膜が痙攣するような感覚で僕は少し揺れている、咳は出ようとする度に抑える、絶対に出さない。横隔膜が震えだす、古川さんの読んでいる箇所はもちろんすでに読んでいる、古川さんの声に呼応するかのように痙攣から始まる揺れが体を満たし、僕は声に反応する。
「ベルカ」が終わると知らない外国の作家の本の朗読が始まる、確かエリクソンと言ってた。
スティーブ・エリクソン「アムニジアスコープ」の一編だったと思う、確かではないが。今度探して読んでみよう、あってるかどうかを確認するために。
「ゴッドスター」の後書きにレイモンド・カーヴァーの名前があってカーヴァーを読んでる古川さんも見てみたい。「ハル、ハル、ハル」がまた読みたくなった、声に出して読みたいからかな、疾走するグルーヴを。
朗読後少しのトークと質疑応答があり、サイン会になる。整理番号は02番だった。朝一で買いに行ったので早い。
2と3は僕にとってのラッキーナンバーだ、03/22生まれで当日は06/07だから、3×2=6、3+2+2=7でなにかあるような気がする、勝手にしている。
数字には何か因果律が潜んでいる。だからなにかいい気持ちになっていた。
すぐに、2番だから本当にすぐに順番が回ってくる。文芸春秋がこの日に作ってくれたという「犬幣壱百圓」、つまり100うぉんの紙幣をもらって整理番号の券の裏に書いた僕の名前を文庫に書いてもらう。
「なにもとって言うんですか?」「あっ、いかりもとです」「へえ、カッコいいね」という短い会話をして「サマーバケーションEP」を読んで実行した事を告げ、そのことを書いたブログのコピーを渡して「読んでください」と言いお渡しすると「ほんとに、読みます」と言ってもらう。
最後は握手してもらう、横隔膜の痙攣は終わっていたけど、握られた瞬間に少し揺れた、僕が。
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