Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『パターソン』


 『パターソン』を公開初日にヒューマントラスト渋谷に鑑賞。18時過ぎの回だったけどかなり席は埋まっていた。当然ながら年齢層は高い、落ち着いた感じでよかった。







 作品は町と同じ名前のバスの運転手のパターソンの毎日のルーティンと詩的なものがすごく心地よい。最後にパターソンを訪れてきた日本人(永瀬正敏さん)がやってることは僕も今年、ブコウスキーの墓参りしたことに通じてるんだなあ、とか思ったり。なんかあるんだろうな、そういうもの。


 パターソンと奥さんの関係性、愛しいのが伝わる。彼女が200ドルとかするギターを買う時の彼の表情、買うと決めた彼女に逆らうこともせずに彼女がしたいようにさせる。その瞬間の表情がすべてを物語っているようでセリフで語らせないのがいい。彼女は自分がやりたいことをどんどんやっていく夢見がちな芸術肌の人、だからこそ彼が書いている詩に可能性を感じているし、みんなに知ってもらうべきだと思っているし言う。彼はそこまで誰かに見せたい、読ませたいという欲はないのだろう。だけど、妻が言うならという感じがすごく彼の生活のようで謙虚さがある。
 日本人の詩人とのやりとりで彼の詩人としての資質を感じる。「翻訳をするというのはレインコートを着ながらシャワーをするようなもの」(セリフを忘れかけている)というニュアンスのことを永瀬さんが言った。だからこそ、永瀬さん演じる日本人の詩人はウィリアム・カーロス・ウィリアムズの『パターソン』の詩の舞台を観に来たんだろうなと思う。
 愛犬・マービンの散歩に行ってバーで一杯だけ飲む。そこでの人間関係、世間話も小さな町だけど彼が大切に思っているのがよく伝わる。


 毎日の始まりは奥さんと寝ているベッドから。その奥さんとの寝ている形というか寝姿がすごく愛おしい感じが伝わってきてとてもいいい、毎日ちょっとずつ違うんだけどそこも。