Spiral Fiction Note’s diary

ライター&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「週刊ポスト」で「予告編妄想かわら版」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉ーーあだち充と戦後日本の青春」を連載中です。

『くそガキの告白』

 朝起きてぼんやりとテレビを見ていてそういえば今日からだって思った割引券をもらっていた映画『くそガキの告白』の上映時間調べたら公開初日でレイトショーだけじゃなくてモーニングショーもあったので一時間あればテアトル新宿に行けるわと思って家を出た。


 着いたら監督の鈴木太一さんやスタッフ関係者の人がいてジュースを一本もらった。チラシをずっと配る事とかUstで配信とかされていたみたい。始まる前に監督が舞台に立って挨拶を。実際に劇場公開初日でテアトルでかかるのはこのモーニングだったので感慨深そうだった。キングオブコメディ今野浩喜さんが主人公で映画監督を目指してるけどいろいろこじらせてる程度の事しか知らずに観賞。



監督・脚本: 鈴木太一
キャスト:今野浩喜田代さやか辻岡正人今井りか仲川遥香、北山ひろし、高橋健一石井トミコ


ストーリー:ブサイクな顔にコンプレックスを持つ馬場大輔(今野浩喜)は、映画監督を目標としているものの何を撮りたいかもわからず、32歳にもなって自分の感情を周りにぶつけてしまう。木下桃子(田代さやか)は占いやおまじないが好きな25歳の女優で、中学生のころに鑑賞した映画がきっかけで芸能界を目指して頑張ってきたが、仕事はエキストラばかり。そんな二人が撮影現場で出会い……。


チェック:映画監督を目指すニート青年とパッとしない女優が、夢と現実のはざまでもがく姿を赤裸々に描く青春ストーリー。本作で長編監督デビューを果たした鈴木太一が自身の半自伝的なストーリーをつづり、お笑いコンビ、キングオブコメディ今野浩喜が主人公を好演する。共演は、グラビアアイドルの田代さやかAKB48仲川遥香、今野の相方の高橋健一など。コンプレックスを抱えた主人公の鬱屈(うっくつ)した青春、東京都墨田区などを舞台に個性あふれる人々が織り成す人間模様が、エネルギッシュかつユーモラスに映し出される。(シネマトゥデイより)


 映画のメイキングをやっている大輔とその映画本編にゾンビ役の小さな役で出ている桃子が屋上で出会う。そのゾンビ映画は物語に大きく関与はしてこないけど出会いとして。あとは占いやおまじないが好きな桃子の今まで想いや感じた事を言葉にできなかった事によるその後の展開と現在の彼女を作り上げたメタファーみたいに観終わると思える。



 実家にいて時折映画のメイキングとかの仕事をしている大輔。映画サークルから友だちで今はそのゾンビ映画とか監督している松本准平監督『まだ、人間』にも出演していた辻岡正人さんが扮する。彼の現在と自分の現在、顔のコンプレックス。自分にしか取れない映画を撮るんだという大輔とその彼の現実との乖離によるいらだち。どうしようもない怒りがふがいなさが自分の嫌さが彼を時折死にたいと思わせる。だけど死ぬ覚悟もなく日々は過ぎている。


 夢という呪いについて。自分という存在について考えさせられる。


 メイキングにうつった桃子の奇妙な行動から彼女に近づいていくことになる。桃子役の田代さやかさんの事は今まで知らなかったけどすごく可愛らしい感じの人だった。どことなく酒井若菜に似ているような気もした。桃子に惹かれていく大輔の気持ちはやっぱわかるよなって。そういうのがきちんと伝わるように物語ができている。


 でも、桃子の視線の先には友人の監督がいる。彼が大学時代に作った作品に救われたという彼女とそれを聞いて憤慨し彼女をひたすら罵倒する大輔。大輔のそれらや撮影現場で桃子がした事を取材に行った先で出会うのが仲川遥香AKB48 渡り廊下走り隊)だったりする。それで彼は彼女が願った事を知ってしまったりする。


 こんがらがったまま大輔は苛立ちを母親にも向けある行動を取り、桃子の元に向かう。



 マスクマンみたいにマスクをしている大輔を観て思い浮かんだのは僕が好きなシューゲイザーバンドのLetting Up Despite Great Faultsのアルバム『Letting Up Despite Great Faults』のアルバムジャケだった。



 主人公の大輔の行動や言動に苛つきもするがただそういう自分が自分にないとは言えないので比較的近い感じで観れた。脚本の流れも観やすいし時間もちょうどよくテンポ良かった。映像もキレイな感じで取られていて画がいいなって思った。


 最後のほうで桃子の心の中にずかずか入っていっていろいろいう大輔。彼が撮りたいものをぶつけていく。その二人のやりとりはかなり劇場で笑いを誘っていた。僕も声を出して何度も笑った。あのシーンすごくいいなって。二人だけのシーンだけどそこあるのは真剣さ故に出てしまうおかしさと熱意。観ていてこのシーンを観るためにこの映画は存在してるのかなって。そのぐらいすごくいいシーンだった。


 途中で桃子の部屋で彼女がある種バーサーカー風になるシーンを見ていたら、大輔も桃子もある種の痛い子で病んでる二人の話になるのかなって思った。
 そういうのは前の十年代で見飽きたしなって思いながら。でもこれはもしかしたら桃子と友人の映画監督たちが仕組んで大輔を奮起させようとしている計画なのではと勘ぐって観てたりしたけど、そんなに世界は優しくないもんなって。もしそういうオチだったら嫌だなって。


 あのラストの二人のやりとりとか見たらすごく真っ正面からぶつかっていく映画だなって思った。想いや熱意をきちんと作り手が観客に届けるために作られているのが伝わる。これは口コミとかで広まって多くの人が観て心が揺さぶられる映画になるんじゃないかなって。


 公開は今日からなんでこれからですね、広がっていくのは。テアトル新宿でやってます。