Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『裁かれるは善人のみ』


監督/脚本/アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演/アレクセイ・セレブリャ(コフコーリャ(ニコライ)・セルゲーエフ)、エレナ・リャドワ(リリア)、ウラジーミル・ウドビチェンコフ(ディーマ(ドミトリー)・セレズニョフ)、ロマン・マディアノフ(ヴァディム・シェレヴャト市長)、セルゲイ・ポホダーエフ(ロマ)など








父、帰る」のアンドレイ・ズビャギンツェフが、ロシア北部の小さな町を舞台に、市井の人々と権力を振りかざす行政の対立を描いた人間ドラマ。2014年・第67回カンヌ国際映画祭脚本賞、第72回ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞し、第87回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。小さな町で自動車修理工場を営みながら、一族が代々暮らしてきた家で妻子と暮らすコーリャ。再開発のため、土地買収を画策する市長による強行策に、コーリャは旧友の弁護士をモスクワから呼び寄せ、権力に対抗するのだが……。(映画.comより)



 祝日で終了後にトークイベントがあったのもあってほぼ満席だった。客層はかなり上だった。年配層がほとんどといった印象。原題である『リヴァイアサン』だとやはり日本では伝わりづらいだろう。ロシアにおけるキリスト正教というかキリスト教圏内でない日本では邦題の『裁かれるは善人のみ』のほうが伝わりやすい。
 国家と個人、権力が堕落していてもその私利私欲と既得権益力のために権力者は力で個人を平気で叩き潰す、簡単に。あれ、ロシアの映画だけどどこぞのクソみたいな政権のことみたい。
 『裁かれるは善人のみ』はなんか『そこのみにて光輝く』観たときに近い感触というか純文学だなあと、思った。『そこのみにて〜』に政治的なモチーフ入れたら近しい気はする。つまり濃厚で答えを出してくれるものではないけど。
 市長は権力を使ってくる悪人だが、彼の心のもとはキリスト正教であり、腐敗した政治家も癒着している聖職者、ロシアだけの問題ではない。まだ神が見ているという視線があるだけマシかもしれない。
 実際にアメリカで起きた事件をモチーフにしているそうだが、しかし救いはない。妻や友人との関係なども含めて主人公であるコフコーリャは市長と戦うことですべての事柄が崩壊していってしまう。しかし、これは誰にでも起こりうることでもあると思う。国家はその利益や思惑のために簡単に個人を踏み潰す、いや国家というよりも権力というものは多少の犠牲は気にもしないのだ。だから、そんなものに利用されたくはないし取り込まれたくないと本当に思う。