Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『岸辺の旅』『GONINサーガ』

 テアトル新宿にて黒沢清監督『岸辺の旅』を先週観た。





湯本香樹実による同名小説を黒沢清監督が映画化し、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。深津絵里浅野忠信が主役となる夫婦を演じた。3年前に夫の優介が失踪した妻の瑞希は、その喪失感を経て、ようやくピアノを人に教える仕事を再開した。ある日、突然帰ってきた優介は「俺、死んだよ」と瑞希に告げる。「一緒に来ないか、きれいな場所があるんだ」との優介の言葉に瑞希は2人で旅に出る。それは優介が失踪からの3年間にお世話になった人々を訪ねていく旅だった。旅の中でお互いの深い愛を改めて感じていく2人だったが、瑞希が優介に永遠の別れを伝える時は刻一刻と近づいていた。(映画.comより)
 


 死んだはずの夫(浅野忠信)が現れて彼が消えていた3年間でお世話になっていた人たちの場所に妻(深津絵里)と旅をするという作品。どこか仄暗さやホラー的な要素はある。まず死んだ夫は電車に乗れるのかという、死んでも実体はどうやらあるみたいだという設定だったり、彼以外にも死んだはずなのにこの世界にいる人たちも含めてあの世とこの世のボーダーラインが曖昧になっている。観ながらかつて観た黒沢清監督の『回路』が脳裏をよぎったりもした。
 キャストも豪華だし夫が死んだ後も彼の浮気相手に対しての思いもあった妻が浮気相手(蒼井優)に会いにいくときの女二人のやりとりのほうがホラーというか一番現実世界で起こり得ている出来事や感情だったと思う。あと死んだはずの夫ともう一度セックスをするというのは妻は生きているのか死の側に取り込まれてしまうのかという気分にもなる。気持ち長いと思った。丁寧に描写しているんだろうが、もっとシンプルなほうが僕はいいと思う。あれは眠くなる。



 角川シネマ新宿の月曜日の最終回で石井隆監督『GONINサーガ』を観る。







バイオレンスアクションの傑作として名高い「GONIN」(1995)の続編。前作も手がけた石井隆監督が東出昌大を主演に迎え、前作の登場人物たちの息子たちに焦点を当てた新たな物語を描いた。社会からつまはじきにされた5人組による、暴力団・五誠会系大越組襲撃事件から19年。五誠会は若き3代目の誠司が勢力を拡大し、襲撃事件で殺された大越組の若頭・久松の遺児・勇人は、母の安恵を支えながら、真っ当な人生を歩んでいた。そんなある日、19年前の事件を追うルポライターが安恵のもとに取材に現れたことから、事件関係者たちの運命の歯車がきしみ始める。東出のほか、桐谷健太土屋アンナ柄本佑安藤政信らが出演。前作出演者からは、俳優を引退した根津甚八が一作限りの復帰を果たしたほか、鶴見辰吾佐藤浩市が続投している。(映画com.より)


 前作『GONIN』を観ていなくてもわかる内容になっている。今作で前作からの話や因縁については語られるからだ。僕は安藤政信さんをスクリーンで観たかったという理由だけで劇場に足を運んだ。復讐というか因縁というものは正直終わりがない。だが、復讐心があれば人はどんな過酷な時でもそれが支えになって生きていける存在でもある。だが、復讐が果たされた時にはどうなるのか、あるいは復讐の終わりには関係者はすべていなくなるしかないということでもある。安藤くん扮する三代目の父である二代目がテリー伊藤さんだったりとか、根津甚八さんが今作限りで役者で復活していたりだとかキャストも豪華だし、竹中直人さんの殺し屋はマンガ的リアリズムみたいな存在だけど面白い。元アイドルで組に弱みを握られている土屋アンナは悪くはないのだがあの少女がああなるかって言われるとちょっと疑問が、なんかメインの五人が濃すぎるので紅一点の彼女はもっとすれている精神性でも見た目は大人しいほうがかえってその憎しみが出たのかもなって思う。『バクマン。』に続いて桐谷健太はいい役だと思う。安藤くんがわりとしょぼい組の三代目っていうのも悪くはないが彼が主役かなにかで映画を観たいものです。はい。