Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『離陸』

 絲山秋子著『離陸』謎は謎のままに残すというかわからないことは説明されてもわからないのだという春樹チックな部分もありつつ、居なくなった恋人や妻に放置プレイされてやがて現れる世界の謎によって自分が壁を通り抜けたり井戸の底に潜ることで世界の心理≒世界と自分の関係性に対話するような村上春樹的な世界へのひとつの返答のように読んでいると思えた。が、しかし大きな父性は戦後民主義が今の世界を示しているように失敗しもはや見当たらない。
 これは窪作品にもあるのだけど父性を失った世界では母は父でもあるというかならざるえない。『さよなら、ニルヴァーナ』もその主題はもちろんあるのは連載を読んでいればわかることだ。そしてそのとっくに失われてしまったものに固執して祖父の敵を取ろうとしているのかしょうもない自己実現(野望)のためにクソみたいなことをして戦争したがっているのが今の総理大臣だろう。
 『離陸』では主人公は移動し続けるが同時に失い続ける。看取るわけではなくただ大事な人や心を許した者から置いていかれるだけだ。それは僕ら自身でもある。僕らはいつも置いていかれるしやがて誰かを置いていく。


 『離陸』を読んで二年前に祖母の兄である初生雛鑑別士だった大叔父について調べて北アイルランドに行ったりして書こうと思って頓挫したままの小説もこういう書き方がベストなのかなと思ったりした。
 昭和九年の排日運動の最中にロスに行き数年後にイギリスに渡り第二次世界大戦勃発時に日本勝つっしょと思って残ってマン島の収容所に容れられて終戦後に日本に帰らずに北アイルランドマン島で一緒にいた同僚と二人で任された養鶏場をやっていた。
 亡くなる何年か前に自身の父と母の葬式のために日本に帰ってきただけで戦争前にイギリスに一緒にやってきたが戦争が始まって日本に帰ったセクサー(鑑別師)仲間の何人かが数十年後に北アイルランドを訪ねてきて日本に帰ったらどうかと聞かれてもその一緒に住んでいた同僚が亡くなるのを看取ってひとりになっていたのに「日本にはもう自分の居場所はない」と言った大叔父のことがなんとなく思い浮かんだ。それを書き上げるための力をつけていかないといけない。


 二年前の昨日は今のバイトが決まって水道橋博士さんが近々メルマガをやるって言われていたので博士さんにメールを送って連載をやらせてくださいと直訴した日だった。その翌日に『園子温初期作品DVD-BOX』を販売メーカーの方から宣伝してくださいということでご縁があっていただいてそこに収録されている『BAD FILM』について僕は第一回のメルマ旬報での連載で園子温監督とその『BAD FILM』について書いたのだった。
 『水道橋博士のメルマ旬報』に参加させていただいたおかげでいろんな人と出会えたりお世話になったりよくしてもらっていることを日々感じる。恩を返せてないばかりかますますお世話になっていて本当に申し訳ない気持ちですが。
 確かに周りの人たちが凄すぎるというのはいいことでもあるし同時に悪いこともある。僕はただの凡人であることを思い知らされるし自分ではどうにも歯が立たないことをリアリティを持って知らされるので井の中の蛙にはならずにすむというのもある。
 でも、そういう方々と自分はまるで違うわけだし当然のことながら戦い方も違ってくるし、参考にできることもこういうやり方もあるんだって事は感覚としてわかるのは本当にありがたいというか幸せなことなんだと思う。さすがに今のままズルズル言ったって未来は真っ暗でどうにもならないから色々と考える日々なわけです。
 メルマ旬報と今のバイトが三年目に明日から入る感覚なのでこの一年でバイトを辞めれるように自分の文章でできるだけ稼げるようになるということを明確に意欲的にやっていかないとダメだなとこの所ずっと考えていた。考えていても当然物事は動かないのでとりあえず手を動かして少しでも来年の今日も同じ状態でいないようにしていく。という決意しかない。とりあえず十一月は集中して一作書き上げて応募する。あとはひたすら攻めるしかないのだから。守るものないし。

離陸

離陸

藝人春秋

藝人春秋

園子温 監督初期作品集 DVD-BOX(SION SONO EARLY WORKS: BEFORE SUICIDE)

園子温 監督初期作品集 DVD-BOX(SION SONO EARLY WORKS: BEFORE SUICIDE)