羽海野チカ著「3月のライオン」四巻を読む。この作品を読むと思い出すのは末次由紀著「ちはやふる」が脳裏に、脳裏のどこかから浮かんでくる。「3月のライオン」は将棋を「ちはやふる」は競技かるたを題材にしている。
どちらも天才という存在が出てくる。天才と凡人という対比でもなく、主人公達は努力や困難によってレベルが上がり将棋の世界でのトップ、競技かるたのトップを目指しているがその世界での覇王ともいえる存在の前で彼らや彼らの仲間や先輩達がそれまでの人生をかけて臨んでも敗れていく。
天才と呼ばれてしまう存在とはなんだろう。このふたつの漫画は勝負の世界であり、勝ち負けははっきりと出る。天才は、孤高であり孤独なのかもしれない、ただ圧倒的すぎるその力が畏怖される。表現の世界にも天才と呼ばれる人はいることはいる。ただ、勝ち負けがはっきりとつかない世界での天才と勝ち負けがはっきりする世界の天才は意味合いが違うのかもしれない。
僕はたぶん天才という人に会った事はない。僕は勝ち負けがはっきりつく勝負の世界に身を置いていない。勝ち負けのつかない、売れるとか売れないとかあるけど受け手の問題や好き嫌いが大きく作用する表現の世界での天才というものに出会っていない、尊敬する人や影響を受けている人たちはいる。彼らは余裕で悠々と表現しているわけじゃない。死にそうになって魂をすり減らしてでも伝えたい書きたい撮りたい鳴らしたいと足掻いている。そういうことを間接的にでも知っているから天才という感じではない。
天才というのは技術や訓練で手に入れる事の出来ないものを資質として生まれながらに手に入れている、あるいは最初からある種の壁を越えてしまっているような人なのかもしれない。「3月のライオン」での勝負の世界、魅せられてしまった世界が勝ち負けが出る世界ならば勝ち続けないといけない。だけど頂点に立てるのは一人しかないという世界。
表現は売れる事や売れない事、食っていけるかどうかという事は本人の問題としてあるが、表現に魅せられて始めてしまった人間は辞めるかひたすら作り続けるしかない。他人に評価されることではじめて表現かもしれないとも思う。食っていこうとするならそこからしかない。
jonsi Go Do
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