Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「ビッチマグネット」

 舞城王太郎「ビッチマグネット」を読む。つい買ってしまった感があるんだが。第142回芥川龍之介賞候補作品の一つではある。この前に読んだ松尾スズキ「老人賭博」も候補作品だった。


 ちなみに他には大森兄弟「犬はいつも足元にいて」、羽田圭介「ミート・ザ・ビート」、藤代泉「ボーダー&レス」が候補作。この三つは未読なのでなんとも言えないがTwitter上では「ボーダー&レス」の評判がよかったかな。
 松尾さんの「老人賭博」は著者の前作「クワイエットルームにようこそ」も芥川賞候補だったが、映像向きかもしれない。画が浮かびやすいんだな、あとは台詞の面白さはさすが実力人気共にある劇作家である松尾さんって感じ。


 どちらも長くはない。というか芥川賞は短編・中編作品を対象としており長さに明確な規定があるわけではないが、概ね原稿用紙100枚から200枚程度の作品が候補に選ばれているのと「作品の短さ」は本になったときに読みやすくまた値段も安くなることから、直木賞に比べて作品の売り上げが伸びやすい理由となっている。


 そんなわけで「ビッチマグネット」も短い。読んだ感想だと著者の舞城王太郎阿修羅ガール」(第16回三島由紀夫賞受賞)の亜種みたいだなって思った。どちらも主人公の女の子の目線で語られ饒舌なガールズトークで物語が展開していく。「ビッチマグネット」は家族の話である。弟と浮気して出て行った父親、父親に捨てられた母親の家族。弟がビッチな女を引き寄せていろんなことに巻き込まれていく、ビッチを引き寄せるという所からタイトル「ビッチマグネット」がきている。


 短編でもなく長編でもないのでもっと短くて一気に叩き込んでもいいし、もっと長くして拡げる手もあったかもしれないが、僕は「阿修羅ガール」のイメージが強いのでちょっと半端な感じと強さがない感じでもったいないなって思った。もっと暴走して置き去りにしてほしいと思うんだがこの作品では舞城王太郎はそうしていない。だから物足りない。


 普通に小説に興味ない人にとっては直木賞芥川賞三島賞も関係ない。今そんなに小説に興味ないけどたまに小説読む人が読んでて人気ある作家は伊坂幸太郎さんや森見登美彦さんとかだからね。


 松尾さんはツイートで「老人賭博が芥川賞候補にノミネートされましたー! って、素直にはしゃげないのは、あの落選した時の梯子外された感の苦さを知っちゃってるんでねえ・・・・。あれ、けっこう心に来るのよ、周りの担当の落胆ぶりとか目にすると。次の日「腫れもの」みたいな目で見られるし。でも本売れるといいなあ・・」とあって、一度梯子を下ろされた経験があるとなんか嫌みたい。


 きっと「老人賭博」も映画化すると思う。けっこうな確率でね。「ビッチマグネット」よりは「阿修羅ガール」がオススメです!


 あと僕は基本的には三島由紀夫賞作家がわりと好きです。古川日出男さんといい、青山真治さんといい、読んで好きになる作家はわりと三島より。第142回直木三十五賞候補作品の辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」が受賞したら初の80年代以降生まれが取る事になるのかな、たぶん。
 ドラえもんが好きな、藤子不二雄F先生が好きな人には辻村深月「凍りのくじら」がめっちゃいいというか主人公の気持ちとシンクロすると思う。


 昨日はVampire Weekend「Contra」とサカナクションアルクアラウンド」を購入。どちらもよい。「Contra」は爽快な感じがして聴きやすいしなんだか面白い。サカナクションは三月にアルバムが出るらしい、Sigur Rosのボーカル・ヨンシーのソロアルバム「GO」も出るので三月も楽しみ。
 ヨンシーがソロツアーで来るのが今年一番期待していることだったりはするんだが。
Jonsi - Boy Lilikoi

阿修羅ガール (新潮文庫)

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老人賭博

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クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

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凍りのくじら (講談社文庫)

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Contra [輸入盤CD] (XLCD429)

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アルクアラウンド(初回限定盤)

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