「夏の教室」 - Spiral Fiction Note’s diary

　昨日から大塚英志｢夏の教室｣を再読し始めた。この小説には「夏の教室」「冬の教室」「海辺の教室」の三編が収められている。「冬の教室」それだけで徳間デュアル文庫から一度出ている。この三作「教室」シリーズは18歳になれるかどうかという通過儀礼をモチーフにしており大塚英志原作マンガ「東京ミカエル―Seventeen’s wars」と世界観は通じている。

　「東京ミカエル」17歳の少年少女だけが巨大な壁に囲まれた東京で目覚め、定期的に彼らを「間引き」しにやって来る軍隊から1年間生き延びるゲームを強いられるという話で、大人になることの困難さや不条理さがテーマ。

　「夏の教室」は「東京ミカエル」同様に壁に囲まれた東京での物語であり、「冬の教室」はその壁の中で一年生き延びた18歳になった主人公がその壁の中で出会った人魚という女の子に会いに辺境の地、冬が終わらない町に。「海辺の教室」は「夏の教室」に出ていた敦史というキャラクターが出てきて世界の果てに辿り着きそこにいる少年少女との出会いと彼がそこから出て行く話。

　三作を読むとこの作品「教室」シリーズの設定や世界観がわかってくる。かつて日本だった国が、間引きのために17才は集められて18歳まで生き延びたものは、等など、これらは「東京ミカエル」にも通じている。「東京ミカエル」「JAPAN」「海辺の教室」は世界観が共通で、「ミカド」が出てくる。

　「封鎖都市三部作」として「東京ミカエル」「JAPAN」「機械生物都市ノーランド」があるが、連載中に打ち切りに近い形や終わっていない状態だったりと完全にもとまっているとは全作読んでいるが思えない。尚、「東京ミカエル」は大江健三郎「芽むしり仔撃ち」がモチーフになっている。

　大塚英志「夏の教室」あとがきより

　「死」を待望する感情の向こうにもう一人、「出発」を待望する自分はいつの時代にもいるはずだ。それがあまりにも近しい感情だから区別はつきにくいし、「死」という一番、不確かなものに確かさを感じるという錯誤から逃れるのも簡単ではない。それでも出発を焦燥する、その不確かな感情ははやり描いておきたかった。
　とはいえ、その先にはたいていの場合、「死」と同じくらいの絶望やひどく退屈な日常しか待っていないけどね、と同時に描くこともぼくは忘れない。そういう皮肉めいた大人になろうというのは大人になってからずっと自分に科してきたことだから譲らない。

　ぼくはぼくの固有性の証明のために小説を書いているわけではないので君は君の固有性の証明のために小説を読むようなさもしい大人になる必要はない、ということだ。

　思いのほか早く読み終えた。もう何度も読んでいるのだけど細部を覚えていなくて読む度に思い出しては忘れると言った具合だ。

　今日はGirlsの初来日ライブ。今年初のライブだ、楽しみ。まあ、ボーカルがマコーレー・カルキンに似ているのは否めないけど。

Girls - Lust For Life [Don't Look Down]

　来週はシアタートラムで今年初めて観に行く舞台。快快（faifai）「インコは黒猫を探す」を観に行ったりします。
faifai.mov

　そういえば今日、芥川賞と直木賞発表だ。大人計画ファンとしては松尾スズキ氏が「老人賭博」で取ったらいいんじゃねっていうさ、去年の年末にCDJのDJブースでマイケル・ジャクソンとかパフュームのかしゆかのコスプレして踊り狂ってた人が取った方が面白んだけどな。直木賞は辻村さんが取ってしまったらいいと思うよ、読んでないけど。

鼻と小箱（大人計画）深夜番組出演1990年その１

　松尾さんと温水洋一さんが女で揉めて温水さんが大人計画から出て行く前かな。女で揉めたっぽいけどね、たぶん。松尾さんのエッセイとかで温水洋一はダメ人間すぎるとかけっこう書いているから関係は修繕されてないのかな。サークルクラッシャーがいなくても人間関係って壊れるものです、大人計画「女教師は二度抱かれた」ではもろにサークルクラッシャー女を出していたが、バンドにおける誰かの彼女とか狭い人間関係の中で色恋沙汰が連鎖反応するとだいたい信頼関係壊れるし、そういうの全快な舞台をコメディでやれば面白いのかな。