『BRUTUS (ブルータス) 』2010年 6/1号の特集『ポップカルチャーの教科書』を読む。「お笑い」では水道橋博士さんが師匠である北野武と同世代である松本人志について「北野武と松本人志を巡る30年」寄稿している。
これは一冊丸ごとで講談社新書とかソフトバンク新書から出たら買って読みたい。この30年というのは僕が生まれる少し前からのことで気が付けばテレビで王者になっていた彼らを間近に見ていた博士だから書けることは興味がある。僕はとんねるずの『生ダラ』からダウンタウンの『ごっつええ感じ』に、そこで完全にダウンタウン病に冒された世代。
76世代と86世代に挟まれた81年生まれ(僕は早生まれの82)の学年はどちらかというと76世代価値観に近い。携帯が一般的に高校生の僕らが買う事ができるようになった辺りとインターネットの普及が十代後半から二十代前半にあった。『ロスジェネ』は『ごっつ』世代とリアルタイム『エヴァ』世代を含んでいて、その辺りの問題が『ゼロ年代』的な価値観に通じていたのかもしれない。
同特集での高橋源一郎氏の「『日本文学』から『ニッポン文学』へ。」の「『ニッポン』はいまやあらゆるものが混ざり合う場所だから」というのがこれからの、今現在の『文学』だと感じる。よりハイブリッドな『ニッポン文学』になっていくのがこの十年なのかもしれないなあ。
さらに菊地成孔氏『対偶概念で読み解く、日本のポップシーン。』での「流派-R系」の加藤ミリヤ、青山テルマ、湘南乃風等の特徴として●ケータイ小説的な歌詞、●スキルやファッションは本格的なブラックミュージック←→「セカイ系」の椎名林檎、aiko、アジカン、サンボマスター等の特徴として●高い文学性、●マンガ、ゲーム、映画との親和性とある。
確かに携帯で打てるような文字だけの歌詞には僕としては惹かれないので「流派-R系」を聴かないのはそういうことなんだろうなと再確認。結局僕は「セカイ系」に親和性を感じるのだろう。
演劇では『大人計画』の松尾スズキ氏が『渦中で実感した、演劇の流れと変化』を。『大人計画』自体が演劇ファンではなくサブカルに手を出していた『宝島』に紹介されて演劇ファンではなくサブカル好きの間で話題になっていったことを書いている。97年に岸田賞を受賞した『ファンキー!〜宇宙は見える所までしかない〜』で周りの評価や集客が劇的に変わった。88年に旗揚げした『大人計画』は約十年で変化していった。
今はサブカルというものがすでにないような、メインカルチャーとかそういうものが細分化されて、二十年前とかには存在してたサブカルやカウンターカルチャーに対してのメインすらもないような状態なのかもしれない。
『大人計画』がサブカル好きの間で話題になりというのは、クドカンの活躍でもわかるように2000年にドラマ『池袋ウエストゲートパーク』が始りそれまでメインではなかったサブカル的なものがカルチャーを席巻して、結局メインにはなれずに、全てが細分化しサブ化していく過程だった気もする。『オタク』や『サブカル』が大衆化されて呑み込まれてある種で定番化したためにその意味が急速に変化し奪われたのが『ゼロ年代』のカルチャーだった気が書いていてなんとなくした。
松尾スズキさんが注目する演劇人は『ポツドール』主催の三浦大輔と『劇団、本谷有希子』主催の本谷有希子の二人。わりと松尾さん寄りな気が。『ポツドール』は観たことないな、映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の監督をしてたかな。この映画はどうも熱さみたいなこの作品をやりたかったんだって感じがしなくて否定的な事を『タマフル』に送ったら読まれてしまった。
『文化系トークラジオ Life』関連だとサブパーソナリティーの佐々木敦さんが『「ニッポンの思想」30年を読む30冊。』と速水健朗さんと編集者・伊藤ガビンさんで『注目の映像メディアに潜む、技術の歴史とは。』が掲載されていた。
極私的カルチャー30年史には何人か出ているが映画監督の園子温さんが出ていた。『80年代の自主映画は全滅したが、自由だった』っていうのは園監督『俺は園子温だ!』を観た事があるのでわかる気がする。過剰さがあって、リスカとかが演出になってしまう、共感されてしまう今とは違い、橋から普通に飛び降りたり、好きな女の名前を叫んで部室を壊したり、バリカンで自分の髪をどんどん切って泣いたりとか、それらが自主制作の中にハードコアパンクとしてのアイデンティティとして刻まれていた。
影響を受けた作品が挙げられていて、ジョイ・ディヴィジョン『CLOSER』が園さんの世界観を形成していると。レディオヘッド『Pablo HONEY』は『CREEP』が店で流れてて店員に誰こいつ?って言って買ったらしい。『「新説」ザ・ワールド・イズ・マイン』には「残酷表現を広げた点で刺激を受けた」って、園さんがこの作品を映像化したら凄そうだけど。
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