「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の著者・花沢健吾新作「アイアムアヒーロー」一巻を読む。前作「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は童貞力満載な、いや満開なゼロ年代的なものであった。読む男子にとっては痛々しく、自分に重ね合わせて痛いからこそ笑ってしまう、そしてジリジリと染みる。
それはなんだろう、まるでオナニーのような。射精した後にある悲壮感、孤独感。自分じゃないからこそ主人公・田西を笑いながらも応援してしまう、だけど残酷なまでに彼はみっともない僕らのままでしかない。
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の最終回は確かにいただけない。僕からするとだけど。回収してない伏線が何個もあった。本当に打ち切られたとしか思えない、たぶん。漫画の世界は人気なかったら連載落ちするのは当然だろうし、編集長や編集者に嫌われたら終わる。
「アイアムアヒーロー」の主人公・鈴木英雄は漫画家のアシスタントをしている。連載していたこともあったが打ち切られている。連載がないのでアシスタントで食っている35歳。
彼女のような彼女じゃないような女性が登場。彼女もまた漫画家で、彼女からは彼女の元カレである人気漫画家・中田の名前が出る度に英雄は凹む。夢を諦められない、もはや他にどこにも行けない彼は苦悩しながら、また連載をして大ヒット漫画を書きたいと思っている。
ボーイズ・オン・ザ・ラン〜終幕〜
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20080702
うーんと、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の田西の時の痛さとまた違う痛さがある。この痛さがアッパーみたいにキレイに入らずK.Oされずにボディブローをされ続けるような鈍痛。花沢健吾作品にあるこの他人事じゃない痛さ。
古谷実作品(「ヒミズ」以降)の痛みもすごくゼロ年代的な95年以降のこの国の痛みみたいなものなんだけど、古谷実作品も花沢健吾作品も童貞的なものを描きながら時代の空気感を上手い事描いている、あるいはアイロニーのように作品の中に取り込む。
まあ、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は銀杏の峯田君で映画化。どうなんですかねえ、僕はやらない方がいいと思うんだけど。やるとしても最初の植村ちはるに関わる辺りだろうし。漫画ですごいのは植村ちはるって女がいかに糞めんどくさいかってことがわかるのが漫画だと最後の方なんでたぶんそこやらないと面白くはない。
TBSラジオ ザ・シネマ・ハスラー「20世紀少年<最終章>ぼくらの旗」
http://s01.tbsradio.jp/redirect/utamaru/432921.mp3
笑うぐらいにボロクソだね。先週のディケイドに続いて。まあ観に行くつもりなんでどれだけガッカリするのか逆に期待してしまいそうだ、漫画を映画化しればいいってものじゃないよね。漫画自体が最後の方おかしいと言うか収拾つかない作品をほぼそのまんま映画化したら・・・。
どうなんだろう、フクベエじゃないの? トモダチは。普通に考えてケンヂたちと最後に向かい合うラスボスのトモダチとして画になりそうで2章まで消えた人物はフクベエ(佐々木蔵之介)ぐらいでしょ。モンちゃんは死んでるし、まさか宮迫さんだったらショボすぎる。
今週の土曜のザ・シネマ・ハスラーは園子温監督「ちゃんと伝える」にサイコロがなったので楽しみですな。
「ちゃんと伝える」
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20090825
「20世紀少年」は第二章、第三章と年に二回、園さんは「愛のむきだし」と「ちゃんと伝える」と二作。これで「ちゃんと伝える」も高評価だったら年間順位にどっちも上位に食い込みそうだ。第三章はぶっちぎりで今年のワーストワン候補に一気になってしまったようです。下には下があるものですねと言われる映画って・・・。
「二十世紀少年」の監督は専門の大先輩である堤幸彦さん。で彼の新作はハロルド作石「BECK」の映画化です。主役が水嶋ヒロで、竜介が主役になってしまう「BECK」ってもはや「BECK」ではないのだが。
これは観にいくつもりもまったくないんだけど「BECK」も凄い事になりそうだな。堤さん映画で高評価なのって近年だと「明日の記憶」ぐらいなんじゃないか。
僕の予想だが、先々週の「ディケイド」と先週の「20世紀少年」と散々な映画内容だったために、映画としてダメというのはシナリオの時点でダメなんですが、それを二週続けて観ちゃった後に、「ちゃんと伝える」は園子温監督にしては日本映画的な撮り方をしててすごく丁寧な感じです。シナリオもよいし、宇多丸さんは良い評価をすると思います。
今週シネカノン有楽町で「ちゃんと伝える」観に行ったら宇多丸さんいるぞ! たぶん、有楽町で観るだろ、都内ここだけだし。
- 作者: 花沢健吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/08/28
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