Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

だから、飛び散る

 深夜の本屋、いつものように休憩中の立ち読みに。伊坂幸太郎「モダンタイムス」の通常版と特別版が置いてあり、特別版は連載時の花沢健吾さんのイラストが入って1ページ二段になっていて分厚い、通常版は一段でイラストなし、で価格が千円違うと言うのは如何なものだろう?
 特別版を買う気満々だったのだが、二段にしたためににか、文字のフォントが大きくてなんかセンスがないような、古川日出男著「聖家族」も二段だったけどもう少しフォントが小さくて小説の雰囲気がするのだけどフォントがデカイ二段ってなんかズルしてページを稼いでいるような気がしてしまった。


 「聖家族」は2000枚だったかな、まあ一冊で出すなら二段になるだろう、「モダンタイムス」は1200枚ぐらい、二段にしなくても問題はない。「ゴールデンスランバー」と変わらない程度、イラストつけてもそこまでページ増えないような気がする。
 僕は伊坂幸太郎作品はほぼ全部持っているし大好きな作家さんで、花沢健吾さんの「ボーイズ・オン・ザ・ラン」もこの数年で重要な漫画だと思ってる、最終巻の終わり方は僕的には微妙だったけど。その二人がコラボした作品だけど、どうも二段にするほどでもないし、イラストを追加したからといって千円も価格が違うのは読者に対して誠実か?と思うと特別版でなくていいやと思った。ちょっと残念な気持ちになった。


 コンビニでプレステージの本があった、プレステージとはAVのメーカーだ。表紙の女の子は「ひな」という名前でよくレンタルのAVコーナーで色んなメーカーにも出てるロリ顔なのだが、少し前ならロリ顔系なら堤さやかとか笠木忍とかいて、その辺りは好きだったのでよく借りていた。笠木忍はけっこう好きだったなあ。まあ、どんどんAV女優は現れては消えていくのだけど、気がつけば普通に自分よりも年下の女の子が増えている、平成生まれとかざらに。
 まあ、お世話になってるけど思うのは、昔いて消えた女の子たちは今何してんだろう?みたいな。やっぱり消したい過去の一つになるだろうし、知り合いとかに知られれば関係性も嫌でも変わりそうだ。
 ちょっとでも人気が出てれば数年後引退しても廉価版のモザイク処理されたものが店頭やレンタルッショップに並ぶ、整形でもしてないと知らないうちに知り合いが昔の映像を見て気づいてしまうかも。なんて考えたりする、どんだけ暇なんだだろう、僕は。

 
 AV女優探偵みたいな小説も本気でありだと思ってて、本業はAV女優で知り合いとかが事件に巻き込まれて事件を解決しようとするんだけど仕事もあるし、中々解決に結びつかない。仕事場で男優さんと絡んで終わった後に男優さんに話すと男優さんとの会話の中でヒントを見つけて事件を解決していくような、その男優さんはやっぱり加藤鷹さんみたいな人かな。
 でも、話すだけでヒントを得てしまうとエロさがないな、イっちゃった瞬間にシナプスとかに一気に電流が走って脳内(堤幸彦演出でよくあるようなイメージで)で次々と事柄が繋がって犯人がわかってしまうみたいな、絶対にこの発想エロだ、いやアホ過ぎるな。
 でいつのまにかコンビみたいになって絡みのない日にも待ち合わせして事件現場に行ってはなんでか絡んでシナプスが一気に・・・ってな具合で事件を解決するようになっていく、基本的にAV女優が事件に巻き込まれる展開、「金田一少年の事件簿」みたいに。行く先々で事件に巻き込まれて解決せざるおえないみたいな流れで。エロmeets推理って中々ないような、しかし推理が考えられないな。やはりアホ過ぎるな。


 AVのことを書いたので昔読んだ話を、たぶん松尾スズキさんが何かで書いてたか話してた内容なんだけど。記憶が曖昧なのでだいたいこんな流れの話だったはず、で確か実話だって言ってたはずなんだけど。読んだ時にすごくいい話だと思った、終わり方とかね、実話だから余計にスゴイってのもあるんだけど。


 四十過ぎのA子は結婚していて旦那が交通事故に遭って半身不随になった。A子は介護をするが、やがて生活苦になりAVの仕事を始めるが次第に高額なギャラのスカトロのジャンル専門の女優になっていく。
 旦那はまだ入院したまま、介護をしながら撮影で糞や尿にまみれる日々を送る、精神的にも肉体的に疲れを感じていくA子だった。誰かが旦那に奥さんの仕事のことを言う、旦那は自分の不甲斐なさと悔しさから死のうと思う、手首を切って。
 しかしそれは未遂で終わる。A子が駆けつけると旦那はベッドで寝ている、起きた旦那はわんわん泣き、謝る、がその姿に彼女の心は動かない、すでに疲れ果てている、なぜ自分が死なないのだろうかとすら考えている。
 仕事のために旦那の病室から出て行く。旦那はベッドから崩れ落ちるようにして床に腕で這いながら窓際へ行く、窓をなんとか開けて風が室内に流れこむ、雲の少ない晴天、晴れわたっている。
 妻が病院の入り口から出て行くのが見える。だから旦那は妻のA子の名前を叫びながら落ちていく、どこへ?
 空に堕ちることはできずに、重力に逆らえずに、地面へ。A子は見ている、旦那が堕ちてくるその場面を。数メートル後ろの地面に。旦那の体は、いや頭は潰れて脳漿がA子にも飛び散っている、潰れた旦那を見てA子は「すっきりした」と行って歩き出した。


 つげ義春の短編とか山本直樹の短編にあっても不思議じゃない展開。