Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

Spiral Fiction Note’s 日記(2024年1月1日〜2024年1月15日)

12月下旬の日記(2023年12月16日から12月31日分)


1月1日新年を迎えてからTVerで『あちこちオードリー』とか見ていて、深夜二時ぐらいに寝た。前日の大晦日には古川日出男著『曼荼羅華X』の『新潮』連載時にあった「なかった」ことにされて単行本に収録されたなかったパートを読んだ。その舞台は東京湾に浮かぶお台場、埋立地だった。以前発表されていた『LOVE』『MUSIC』『ゴッドスター』『ドッグマザー』という東京湾岸から始まり京都へ舞台を移していく作品群に繋がるものを僕は連載時からそのパートに強く感じていた。
「小文字のx」と「Y /y」に出てくる小説家の男は最後に猫たちとレインボーブリッジを歩いて台場から芝浦に向かっていた。そのことがどこか頭にずっとあった。
元旦もレインボーブリッジは開放されていて歩いて渡れるというのもわかったので、目黒川沿いを歩いて天王洲アイルまでいき、少し北上して芝浦の遊歩道入り口からレインボーブリッジに入って歩いて台場へ。
台場からは北上する形で豊洲市場を抜けて晴海へ。東京五輪の選手村があった高層マンション地帯の先、晴海客船ターミナルがあった場所まで行くことにした。そこに辿り着けば勝どき駅まで歩けば一回乗り換えれば家まで帰れる、というルートにした。

第2回:碇本学(ライター)『二〇一八年のサマーバケーションEP』vol.1


『二〇一八年のサマーバケーションEP』vol.2〜あるいは二〇〇八年のスプリングバケーションEP〜


東京五輪が終わった翌年の2022年元旦までは『サマーバケーションEP』の舞台である神田川沿いを毎年歩いていた。その最終地点が晴海客船ターミナルだった。


去年はここから北上して東京タワーを右目に見つつ、豊川稲荷赤坂別院まで歩いた。


ノースルートとサウスルートがあって、基本的には選んだほうから反対側へはいけない。僕は東京湾を見たかったのでこちらにした。
元旦の太陽の光はまぶしくて、空気はとても澄んでいた。毎年歩いてるけど、元旦はほぼ晴れていて雨が降った記憶がない。
人がほとんどいないのもあるけど、歩いていると太陽の光が自分に降り注いでいて聖なる光に祝福されているような気持ちにもなる。



豊洲大橋から晴海に向かっているとかつてあったはずのの日は跡形もなくなっているかのように見えたが、あの塔のような黒くて細い建造物だけは見えた。



東京五輪の選手村として利用された高層マンション付近も歩いたが、住民もまだそんなにいない感じがした。その近くに建てられているスーパーも営業は開始しておらず、二年前の元旦にきた時にゴーストタウンだなと思ったけど、それは変わっていなかった。
二年前には工事中で入れなかった晴海埠頭公園は五輪開催に合わせて整備されていて何組かの親子連れが遊んでいた。この辺りの高層マンションはファミリー層向けなので、この先この辺りには子ども達がどんどん増えてくるだろうし、にぎやかな景色が広がっていくのだろう。だけど、基本的には富裕層と呼ばれる人たちになるだろうから、ある種他のエリアと比べるとかなり異なる街になるかもしれない。



上が今年2022年、下が2024年にスマホで撮ったもの。



上が今年2022年、下が2024年にスマホで撮ったもの。


上が今年2022年、下が2024年にスマホで撮ったもの。

スマホの充電がこの辺りで10%を切っていて、勝ちどき駅までなんとかもったが、電車に乗っている間に切れていた。家から勝ちどき駅まで4時間42分で22.79キロ歩いた。

家に帰ってから新年の挨拶のメールを書いたりした。ちょっとうとうとしていた。地震の揺れには気づかなかった。スマホでXを見た時に大きな地震が起きていることを知った。

毎年元旦恒例である新年会が18時からだったので家を出た。去年はそのお店の都合もあって違う店だったが、この6年ぐらいはそのお店で元旦飲んでいる。
お店にあるテレビでは毎年音声はミュートされているが「格付けチェック」が流れていて、それを見ているような見ないような感じで飲んだり食べたりしていた。今年は燃えている輪島の街並みだった。ご一緒する人の知り合いや親戚が能登とか津波が来るところに数名いるというので連絡をとっていて遅れて到着してきた。
東日本大震災から13年。今回の地震が起きた地域に住んでいる人たちの生活が元通りにはならないだろう。復興には時間もお金もかかる。その間にそこで暮らせなくて離れた場所で暮らすことになった人が帰って来れるわけではないし、以前のようなコミュニティは同じ形では再生はできない。また、地方や都市に分けれる問題かどうかはわからないが、震災後にはそれまで燻っていた問題などが表出してしまって、対立を生んだりもしてしまう。みんなが同じものを求めるわけではない、思想や意見が異なることで敵対することも出てくる。そういうものうまくまとめて話を聞きながら調整する役割が政府や市役所とかになるのだが、そこにも利権や思惑が出てきて一筋縄ではいかない。
だからこそ、13年前の教訓や反省を活かしてほしいとしか言えない。国や行政、政治家たちの行動や発言が復興にはほんとうに大事なものだし、なにをしてやらないのかを決めるという民意を聞いて反映してほしい。だけど、自分たちの利権や利益を手放さないのだとしたら、政(まつりごと)には一切関わらないでほしい。でも、そういう人をずっと選挙で選んできているという現実もある。とくに地方では地元とずっと権力を持って当選してきた政治家との関係性が強いため、変化は起きにくいし。かといって彼らに台頭できる党や政治家がいるかといえば見当たらないという問題もある。でも、最優先すべきは被災された方々が少しでも早く安心できる環境を作ったり、今後のことを相談できたり考えることができるようにすることだ。それができるのは個人ではないし、自助ではない。国家や政府や行政にしかできないことをちゃんとやってもらうしかない。それができないのであれば、彼らに政を任せてはいけないし、次の機会に当選させるべきではない。
四時間ほど飲んで食べて話した。一年の始まりがお祝いしにくい雰囲気になってしまった。被害に遭っている人たちにできるだけ早い平穏が訪れることだけを祈るしかない。

 

1月2日
起きたらちょっぴり二日酔いぽかった。前日に焼酎を少しだけもらって飲んだけど、たぶんそれだと思う。日本酒とかビールではこうならない。朝風呂に入ってから朝活がてら作業を少しだけした。

先月突如シングルをリリースしたgroup_inouのミニアルバム『HAPPY』がリリースされたというニュースをナタリーで見てSpotifyで聴いた。
パンチ力は前よりも弱い気はするが、メロディと詞は前よりも複雑になっているのかも。これはさすがに復活ライブとかやりそうだし、ライブをやってほしい。ラストライブも行ったぐらいは大好きなユニットです。

radikoで『空気階段の踊り場』を聴いたら、去年のイベント時に水川かたまりが慶應大学入学後に岡山弁で話していて、「お前はじゃがいも星人なのか?」と言った同級生の男性をついに発見していて、イベントで対面していた。そして、彼が今やっている仕事のことが明らかになって人生ってすごいなと思った。
かたまりの過去に起きた出来事の伏線が回収されたオチと彼の今の仕事もまさに現実は小説よりも奇なりというか、普通に書くと嘘くさいようなことが起きていた。そして、誰かの人生をまるっきり変えてしまった側の人はわりと覚えてないという悲しい事実。



13時から去年お世話になった方の仕事のちょっとしたお手伝いをする約束をしていたので一時間ほど歩いて原宿表参道方面へ。19時に終わったが一日ではやはり終わらず翌日も作業を手伝うことになった。

帰りにスーパーに寄って何か買おうかと思ったらどこもやってなかったので久しぶりに、コロナパンデミック前以来の松屋へ。カウンターとかが一人ずつで仕切られていてとても窮屈でなんか美味しいけど食事をしたいとは思えない空間になっていた。

 

1月3日
昨日から寝違えたのか首がちょっと痛かったのだが、まだその痛みは続いていた。初夢はたぶんまだ見ていない。
昼過ぎまで読書をしてから昨日同様にほぼ同じ道を通って原宿表参道付近へ。観光客がかなりいて一蘭は前日同様に行列ができていたし、ラフォーレがある交差点付近は人手が多かった。
目的地に着いたが、先方が30分ほど遅れるとメッセージが来たので付近をフラフラと歩いた。普段来ない場所なのでその付近の地形がちょっと頭に入った。先方が到着してから昨日の作業のお手伝いの続きをやった。単調な作業が続くのだが、中腰になったりすることが多く、腰もだけど背中がしんどかった。首の痛みはこれで増した気がする。19時前になんとか作業は終わったのでご挨拶をして帰った。

ano「YOU&愛Heaven」Music Video 


元旦に歩いている時は年末にやっていたラジオをradikoで聴いていたが、anoの新曲『YOU&愛Heaven』が突如元旦リリースされたのでそれを歩く前に三回ほど聴いた。今年もあのちゃんの快進撃は続くのだろう。そして、武道館とか大きなハコでライブをすると思う。その曲のMVが今日アップされていた。


公園通りは青くライトアップされていた。ちょっとだけ雨が降っていた。

 

1月4日
初夢はまだ見ていない。首の痛みはまだ残っていた。新TwitterことXを見ていたら社会学者の鈴木健介さんのブログが紹介されていたので読んでみた。「反体制より脱体制」という言葉はなんかすごく腑に落ちるものだった。

たぶん、社会が変わる瞬間ではなく、「変わった後」でしか世の中の変化は自覚されない。たとえば「いまどきもうこういうのないよね」「まだこんなことやってるの」と多くの人が思うようになるとき、社会はもう既に変わっていて、その変化に合わせて社会が作り直される。面白いことに、その「まだこんなことやってるの」と言い出す人たちは、ほんの少し前まで「こんなこと」の中にどっぷり浸かっていたのに、いつの間にか、自分だけが社会の先進的な変化の中に躍り出て、私はもう変わっているのに社会がついてこないみたいな顔をするのだ。

そうした、脱体制の中心、アイコンとなるのは、やっぱり「美しいもの」であってほしいと思う。「正しいもの」や「善きもの」が、誰かと誰かの対立を生み、お互いを奪い合うようになっているいまだからこそ、互いの正義を置いて集まれる美しいものを、人びとは欲していると思う。

能登半島地震でもさまざまな虚実入り混じった情報がXなどでは錯綜している感じがする。そこにちゃんと情報を届けたい人や、そうでない人、ある種特別なことが起きてしまった際の高揚感や正義感で人々は明らかにテンションがおかしいし、喋りすぎている(ポストしすぎている)ようにも思える。
震災関連だけでなく、それに関した万博中止(僕もさすがにその案には賛成だし、もともと開催すべきではないと思っていた)に関するものが怒号のように飛び交っている。ここぞとばかりの攻撃の応酬になっていて、やはり人類にはSNSは早すぎたというか、議論になりようもないもので言いたいことだけを言い続ける、そして「リポスト」や「いいね」が自己顕示欲を助長させ、さらにポストしていくという悪循環が生まれているように思えてきて、正直知り合いの人たちの何人かはもう見ていられない。もう病気だ。SNS依存がひどい。目の前でスマホをぶんどって投げつけて壊してあげたほうが幸せになれるのはないかと思えるほどだ。だけど、僕がそこまでする距離ではないし、その人たちにそこまで気持ちや思いを使いたいとも思えない。
もちろんSNSなどで震災における必要な情報なんかはポストされて広まるべきだけど、あまりにもノイズが多すぎて混線してカオスがひどい。


7時前に家を出てから半蔵門線渋谷駅まで、すぐに銀座線に乗り換えて末広町駅へ。毎年正月にお参りにきている神田明神へ。早い時間帯だったこともあるのか、人はさほど多くなくてすぐにお参りすることができた。
せっかくなのでお守りを自分用と人にあげる用に購入してから帰った。
10時前には家に着いたので、近所のスーパーに買い物へ行ってから昼ごはんを食べたら眠くなってきたので昼寝をした。起きてから自分の作業のための資料を読んでから、スプレットシートの作業を開始。

夕方過ぎに一度家を出て、営業を開始しているトワイライライトへ。書籍新年一発目は店主の熊谷さんも知っているし、ここでなにかを買おうと思っていてちょっと前からタイトルと装幀デザインで気になっていた中村達著『私が諸島である カリブ海思想入門』を購入。

19時から菊地成孔大谷能生による『迎春!!!!!!! audible Presents 「DOMMUNE RADIOPEDIA」【大百科117】〜 超文化大百科!! season 5-13 <聴く文化融合!!>菊地成孔大谷能生の「XXX et XXX」〜DOMMUNISM的接続【第6巻】「デューク・エリントン大河ドラマ」』を聴きながら作業の続きを。本当は観覧チケット買っていたけど行ったら終わらないので諦めて動画を流しながら。

 

1月5日
仕事始め、まだ初夢は見ていない。リモートワーク前に今やっている企画の一週間に一度のオンラインミーティングをした。これを上半期には形にしたいし、スタートできればいいので僕がやる部分に関してこれから詳細をもっと詰めていかないといけない。
リモートワーク中はradikoで『ハライチのターン』『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』『令和ロマンのオールナイトニッポン』を聴いた。
令和ロマンは「M−1グランプリ」を優勝したのでこの枠だが、やっぱり高比良くるまは声が藤井隆さんに似ている。声ということは顔も似ているし、骨格というスピーカーが近いはずだ。漫才での動き、体の使い方もどこか藤井隆さんぽいなと「M−1グランプリ」の時に思っていた。しかし、固有名詞とかがラジオ中に出まくるがツッコミの松井ケムリがちゃんと拾ってどんどん返していく。知識量もすごいし、反応も早い。
冒頭から映画『TOKYO TRIBE』の話とかわりと細かいところも知っていて映画も観ているのもわかるし、先輩のニューヨークが好きで彼らの「オールナイトニッポン」の熱心なリスナーだったこともわかったりして好感が持てた。「X(クロス)」か「0(ゼロ)」のレギュラーになってるもおかしくなさそう。


休憩中に銀行に行くついでにTSUTAYAによる。いつものルーティン。文庫新刊コーナーのところに西村賢太著『雨滴は続く』があった。単行本の時に読んでいたが、彼の最後の未完の長編小説であり、僕はこの作品から西村作品を読み始めた。
西村賢太の分身でもある「北町貫多」は読んでいると個人的には付き合いたくはないが、良くも悪くも人間臭くて今の時代からはこぼれ落ちていくような存在で興味深い。感情や本能のままに動ける人だった。最後に作中に出てくる女性のモデルになった新聞記者の方の文章が追加されていたのでそれも読みたかった。

ACIDMAN - 輝けるもの 


年末に『PERFECT DAYS』を観に行った時に映画『ゴールデンカムイ』の予告が流れていたが、主題歌がACIDMANのこの曲だった。前に武道館ライブに行ってから観ていないけど、この映画きっかけで若い世代にもまた聴かれるようになるのかもしれない。

 

1月6日
6時に目覚ましをセットして起きたが、もう少し寝たいので二度寝へ。起きたら9時過ぎていた。ちょっと寝過ぎたが仕方ない。とりあえず、軽くストレッチをしてからいつもの土日のように散歩へ出る。
radikoでいつもの『三四郎オールナイトニッポン0』は年始年末の番組編成のためお休みなので、もう一回『令和ロマンのオールナイトニッポン』を聴きながら代官山蔦屋書店へ。


来週の月曜日が成人の日だから10日ぐらいに発売の河出文庫が早めに出ていたっぽく、『平家物語 4』を購入した。これで古川日出男訳『平家物語』1〜4巻(河出文庫:古典新訳コレクション)が全巻揃った。今は3巻の途中で木曽義仲が討伐される手前ぐらい。
帰りは夕方から有楽町よみうりホールで向井秀徳アコースティック&エレクトリックのライブがあるのでZAZEN BOYSと向井さんのソロライブの動画から音楽を聴きながら。


去年も向井秀徳アコースティック&エレクトリックのライブで来たよみうりホールへ。渋谷から電車乗ると20分ちょっと近いのでありがたい。
第一部と第二部にわかれている構成だった。ZAZEN BOYSNUMBER GIRLの曲もかなりやってくれて、ZAZENの曲の中でも個人的に大好きな『Water Front』『Amayadori』が聴けたし、このソロでははじめてやったはずの『ポテトサラダ』もバンドとは違うサウンドだがとてもよかった。ニューアルバム『らんど』にも収録されていてMVも公開されている『永遠少女』が圧巻だった。
アンコールからはThis is 向井秀徳は黄色いパーカーを着てきて「Vaundyです」と言っていたので、彼の曲のカバーでもするのかなって思ったらそれだけはネタだったみたいで、七尾旅人『サーカスナイト』と松山千春『恋』のカバー、『KIMOCHI』をやって締めは『IGGY POP FAN CLUB』だった。
前からYouTubeで何度も聴いていた『サーカスナイト』カバーを初めてライブで聴けたのも新年早々いいことあったなって思えた。この向井ソロだけでやっている曲とかは音源化されていないので、これはこれで形にしてほしい。
終わってから客席にお世話になっている方がいらしたので新年のご挨拶をした。


本日から今年の営業が開始になったニコラに帰りに寄って、最初はビールとスナップエンドウ塩とレモンとオリーブオイルを、二本ぐらいビール飲んで白ワイン、最後はアルヴァーブレンドで。常連が数人来たのでカウンターで簡単な新年会というかいつもの感じになってたくさん話した。

 

1月7日

8時過ぎに起きてから歩いてヒューマントラスト渋谷へ。金曜から公開になった滝本憲吾監督&岡山天音主演『笑いのカイブツ』を。午前中の早い時間だったがそこそこお客さんは入っていた。

「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの同名私小説を原作に、笑いにとり憑かれた男の純粋で激烈な半生を描いた人間ドラマ。

不器用で人間関係も不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することを生きがいにしていた。毎日気が狂うほどにネタを考え続けて6年が経った頃、ついに実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになるが、笑いを追求するあまり非常識な行動をとるツチヤは周囲に理解されず淘汰されてしまう。失望する彼を救ったのは、ある芸人のラジオ番組だった。番組にネタを投稿する「ハガキ職人」として注目を集めるようになったツチヤは、憧れの芸人から声を掛けられ上京することになるが……。

「キングダム」シリーズなどで活躍する岡山天音が主演を務め、仲野太賀、菅田将暉松本穂香が共演。井筒和幸中島哲也廣木隆一といった名監督のもとで助監督を務めてきた滝本憲吾監督が長編商業映画デビューを果たした。(映画.comより)

岡山天音の迫真の演技とかはすごいと思うところがいくつかあるのだが、話の流れというか展開がどこかちぐはぐでエンドロールで脚本のところに四人名前があったのでそれでうまく統制がとれていなかったのかなと思った。
「笑い」にすべてをかけた若者であるツチヤは、観ていて僕はうまく感情移入できなかった。「笑い」が好きならまず言葉があるはずなのに、彼は挨拶とかお礼も言えない。そのことは彼がはがき職人になって投稿して自分を認めてくれたベーコンズの西寺に指摘されて直すように言われる。人間関係不得意であろうが、彼は自分が「笑い」にすべてを捧げているのだから、もっと言葉を大切にしてほしいと思ってしまった。
実際になにかをするためにはやりたくないことを我慢することもあるし、やりたくもないコミュニケーションだって不可避になるが、それをしようとしないから彼は嫌われていく、いや孤独が増していったように見えた。
すべてを変えるような笑いを作り出せていれば、それなら誰かが彼の足りないところをやってくれただろう。だが、まだそのレベルではない、独りよがりな若者の社会や世間とのうまくいかないことを描いているが、心に響きそうなシーンとかセリフがあっても最後の部分で僕には届いてこなかった。
どっちかというとピンク(菅田将暉)のほうが異才に見えてしまう。また、ベーコンズはオードリーを参考にしたのだろうと思える部分が多々あり、西寺(仲野太賀)と水木(板橋駿谷)の服装やスタイルは若林さんと春日さんをトレースしていた。ここに来るまでradikoで『オードリーのオールナイトニッポン』を聴いていたのもあって、なんというかちょっと乗り切れないところがあった。

#1 ラジオ好き必見! 伝説のハガキ職人 ツチヤタカユキとオードリー若林の経緯【作業用、勉強、睡眠用 



と書いたあとに調べたらツチヤさんが実際にハガキを送っていたのは『オードリーのオールナイトニッポン』であり、若林さんから実際に作家見習いになればと言われて上京したようだった。なるほど。オードリーっていうのは使えないからベーコンズって名前にしたのか、でもベーコンズの漫才指導は令和ロマンだと言っていたけど、その辺りもなんだろう。吉本が製作とかに入っているってことなのだろうか。オードリーの事務所の後輩ということならばヤーレンズになるわけだし。
上記のYouTubeでかつてラジオでツチヤのことを若林さんがトークで話しているのだけど、例えばこの映画が公開されるとなって、実際に発表されてからオードリーのラジオでこの映画やツチヤについて言及していた記憶がない。彼が東京から大阪に帰ってからは彼に触れないということにしたのだろうか、その辺りは詳しくないのでわからない。
でも、YouTubeにアップされているこのかつてのトークのところは映画にちゃんと出てくるので、映画を観たあとに聴くと内容が補完されていく感じがした。それにしても若林さんに本当に面倒を見てもらって気にかけてもらっていたんだなってことがよくわかる。
劇中で西寺は人見知り状態だった時期を乗り越えた若林さんがいいそうなことをセリフで言っていて(本人なんだからそりゃあ、そうか)、ツチヤはそれでも逃げる辺りはやっぱりしんどかった。実話だというのもあるだろうけど、彼が成長している感じがしないこともあって、実際には少しは変わってはいるけどカタルシスを感じさせる展開がないのでそこが乗り切れなさにも通じている。
ヒロイン的なミカコ(松本穂香)も上京前に童貞を捨てさせてもらって、自分を受け入れくれる存在だと思っているから東京から逃げ帰ったあとに刑務所から出てきたピンクが働いている居酒屋に誘ったんだろう、と思った。その際に彼女に彼氏がいること、ツチヤにはやりたいことがあってうらやましかったと言われて彼は感情をどんどん吐露していくことになる。そこから岡山天音菅田将暉のいいシーンにはなっていくが、彼女もツチヤの母親も基本的には彼を否定しない聖母みたいな存在になっているのはちょっと気になる(小説か映画用に作ったキャラクターなのかな)。みんながツチヤのことを甘やかし過ぎだろうと思うし、人間関係不得意だからってそれを通されてもやっぱり彼に対して感情移入しにくかった。なんというか素材は素晴らしいけど調理の仕方を間違えたような、作るべきものをしっかりと作らなかった感じの作品みたいに思えた。

古川さんの連載『京都という劇場で、パンデミックというオペラを観る』最終回をよむために『文藝』最新号を買って帰った。
おお、最後にそういう着地なんだと思った部分もあるが、去年12月の角田光代さんとトークイベントでもっと時間軸を超えた大きな物語を書きたいという話をされていたので、最後に出てきたあの登場人物のことも合点がいった。この先、いくつかの時間軸でいろんな国や地域をえがく大作が書かれる始まりとしての『京都という劇場で、パンデミックというオペラを観る』と意識される日が来るかもしれない。

21時からライティングに関するミーティングを一時間。次にやる作業が今までとは違うものになるので、その説明をしてもらう。聞いてみるとなるほどなあって思うことばかりで、知らないことを知れるのはうれしいしおもしろい。
課題はわりと難しいのでしばらく頭の片隅において、アイデアを転がしながら、なにか形になってくるといいなと思う。こればっかりは時間がどうしてもかかる。

 

1月8日

起きてから昨日同様に渋谷へ歩いていく。『笑いのカイブツ』があまりにもしっくりこなかったので、三連休最後の日に何か観ようと思って前日にいろんな映画館のサイトを見ていてクエンティン・タランティーノ監督『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』がホワイトシネクイントで上映中だったのでそれにした。
せっかくのリマスター版上映だし、映画館でなら観ようと。成人の日で祝日の朝10時からだけど、かなりお客さんが入っていた。年齢層はさすがに高い(四十代オーバー)が二十代の大学生ぐらいもちょこちょこいたと思う。

クエンティン・タランティーノの監督第1作で、宝石店強盗計画に失敗した男たちがたどる運命を、独特の語り口で緊迫感たっぷりに描いたクライムドラマ。

宝石店を襲撃するため寄せ集められた黒スーツ姿の6人の男たち。彼らは互いの素性を知らず、それぞれ「色」をコードネームにして呼び合う。計画は完璧なはずだったが、現場には何故か大勢の警官が待ち伏せており、激しい銃撃戦となってしまう。命からがら集合場所の倉庫にたどり着いた男たちは、メンバーの中に裏切り者がいると考え、互いへの不信感を募らせていく。

キャストには本作の制作にも尽力したハーベイ・カイテルをはじめ、ティム・ロススティーブ・ブシェーミマイケル・マドセンら個性豊かな顔ぶれが揃った。2024年1月、デジタルリマスター版でリバイバル公開。(映画.comより)

最初の朝食での会話、話が進むごとに章仕立てというか、各キャラクター視点で裏ではなにがおきていたのかを見せるというやりかた、ポップだし物語としては倉庫で大半のことは起きているから、演劇ぽくもある。
終わり方としてはやっぱりあれがベストというか、あの終わり方でよかった。タランティーノ監督にとって長編第一作となったこの作品のエネルギーを感じたくて観ようと思ったところもあった。やりたいことをやる、自分の好きなものを爆発させるとなにかが生まれる。

今回の主役は、満を持して登場、
あの最悪の隣人、ポーキーです!

MOTHER2』で主人公ネスの家の玄関を
ポーキーが(とても下品に)ノックし、
すべての冒険がはじまりました。

ずるくて、よくばりで、ひきょうで、
おくびょうで、じぶんかってなのに、
どうしてだか、憎めないところもあって。
最悪のヴィランだけど、いつかのともだち。

良くも悪くも忘れられないキャラクター、
それが、ポーキー・ミンチです。

ホワイトシネクイントを出てすぐのところでほぼ日のポップアップショップ「ニューポーク・パルコ・シティ」があったので中に。
『MOTHER』シリーズに出てきた敵役(ヴィラン)のポーキーをメインにした展示とショップで、人気が長く続いているシリーズだからこそできることだなって思う。実際にシリーズ全部やっているとポーキーのことは好きにはなれないけど、主人公になれない側の人間の物悲しさをもっているキャラクターでもあり、確かに忘れられない存在だ。クリアファイルを三つ購入した。

夕方から作業を開始。途中夕食を買いに出たりしたが、街には人が多くて三連休最終日って感じで、数人は振袖を着ている女性と母親らしい人が歩いているのを見かけた。

作業中ダウンタウン松本人志さんが活動休止するというニュースが出た。降板した『ワイドなショー』に出演して経緯を話すという報道もあったりしてなんというか悪手というか、吉本興業自体もどうしたらいいのかわからないのかもなと思える。

Whitelands feat. Dottie - Tell Me About It (Official Video) 

 

1月9日
朝一で整骨院に行く。年末年始でガチガチになった肩甲骨や股関節をほぐしてもらう。臓器のところも胆嚢あたりが固いから肉とか油物を控えたほうがいいよ、と言われる。となると食事はどうしようか。カレーのレトルトとか肉とか焼いてお米を炊いて食べるという習慣をやめなければ。とりあえず、納豆と味噌汁とご飯、焼き魚とかなにか一品にしてできるだけ一日一食のドカ食いをやめるみたいなことから始めるのがよさげ。一色ぐらいはプロテインとかのほうがいいのだろうか。朝はトマトジュースは飲んでいるけれど。

リモートワークを開始。前日が祝日で三連休だし、先週金曜日が年始の初めだったこともあり、休みが多すぎて色々と作業が溜まっていた。とりあえず、スケジュールを見て余裕がないものから手をつけていく。読む文量もそこそこあるので集中力が切れやすい。チョコレート食べつつやる。一日で思ったよりは作業が進んだ。

作業中はradikoで『空気階段の踊り場』『JUNK 伊集院光深夜の馬鹿力』『フワちゃんのオールナイトニッポン0』をお供に。お昼ご飯はスーパーで買った鯖の味噌煮と納豆をにして、TVerで『ラヴィット!』前半を見ながら食べた。ラジオもテレビも年末年始の特別編成から徐々にいつも通りのプログラムに戻ってきた。
テレビはないので、能登半島地震についての報道がどのくらいニュースでされているのかはわからないが、あまりしてなさそうな感じは新TwitterことXのタイムラインで感じる。
12年前の東日本大震災時のTwitterは緊急の情報が飛び交って拡散されていた。僕も地震当日はメールも電話をつながらないので普段はしないやりとりをTwitter上で行うことで連絡を取るなどしてとても助かった。
でも、今のXのタイムラインはそれぞれの正義とかがぶつかりあって罵詈雑言と自分の正しさを示そうとするものばかりで、おまけに松本人志の性加害問題に、能登半島地震後の復興における問題とかなり関わってくる(人材とか資材とか重機とか諸々)大阪万博中止や延期などの意見もあり、なんというか地獄絵図みたいな感じがしてどんどん見る気がなくなっていっている。まあ、SNSとは距離を取る潮時なのかもしれないなと思ったりもする。

リモートワークが終わってから、『新潮』に掲載された対談の小川哲+高瀬隼子「小説家は嘘をつく」というのが読みたくなったので駅前へ。
Spotifyで『あのと粗品の電電電話』最新回を聴きながら歩いた。去年の11月ぐらいの収録らしく、年末年始の忙しさの話はなかったが、二人とも番組にゲスト出絵したマキシマムザホルモンのことが大好きなのがよく伝わってくるトークになっていた。そういう素の部分が出るのがラジオ、トークのいい部分だなって思う。

小川 別に純文学をディスってるわけじゃなくて、現実として起こってることの話をするんですけど、結局、芥川賞を獲ったあと、みんな長篇書くじゃないですか。正確にはみんなじゃないけど、生き残っているほとんどの人は長篇を書いているんですよ。芥川賞の選考委員をやってる人たちなんて、芥川賞を獲ったあとは長篇をずっと書いていますよね。それも、エンタメとか純文学とかって区別のない作品を書いている方々です。吉田修一さんも、平野啓一郎さんも。僕が大学で教わっていた松浦寿輝先生もそうです。だから、何というか、「結局、みんなエンタメ書くじゃん」と思ってしまった。
高瀬 ああ……。
小川 そうしたところから、「じゃあ、最初からエンタメ書いたほうが早くない?」と思って、エンタメからスタートしたんです。

小川 純文学の作家の人たちを見ると、サッカーの日本代表を思い出すんですよ。
高瀬 サッカー日本代表
小川 サッカーの日本代表って、ワールドカップに出場するために三年間かけてアジアの予選というのを突破するんです。アジアのチームって日本代表より弱いチームがほとんどなので、なんとかして引き分けにしようと日必死に守ってばかりなんですよ。
――相手チームが攻めてこない。
小川 そう、攻めてこない。日本代表はその攻めてこない相手をなんとかして崩して1点取るというサッカーを3年間ずっとやり続けるわけですね。そしていざワールドカップに出場すると、「これまでの3年間でやったことを一回全部忘れて」って言われて、自分たちがやられていたことをやるんです。自分たちより強いチームを相手にしなきゃいけないんで、必死に守ってワンチャンスを生かすみたいな。
(中略)
小川 そう。純文学の新人賞でデビューした作家さんって、芥川賞を獲るまで200枚程度の中篇を書くという、よく分からない種目を必死に訓練させられて、それを突破した人が芥川賞を受賞するわけ。でもいざ芥川賞を受賞すると、別に200枚程度の中篇という分量自体には大して意味はないから。みんな結局長篇とかを書くわけですよね。予選と本戦でまったく違うことをさせられている日本代表と同じです。
『新潮』189-190P 小川哲+高瀬隼子「小説家は嘘をつく」より

小川さんの言っていることはほんとそうだよなってことしかなくて、純文学よりもエンタメの新人賞のほうが二作目以降を出しているとかの話もあった。wikiで各新人賞を見ると確かに純文学系の受賞作家は赤文字が多い。つまり追記されるようなことがない、二作目以降が出ていなかったり作家として続いていないという悲しい事実が確かにある。

 

1月10日
起きてからミーティング用に出すものがまだ終わっていなかったので作業をして、オンラインミーティングを開始。時系列に出来事をまとめたりしたことで流れも把握しやすくなった。毎回このミーティングは一時間ほどやっているが、確かに前進しているのがわかるのはありがたい。春先に形になるのを願いながら続けている。

それからリモートワークを開始。昨日の続きでできるだけ〆切が近い作業を終わらせていく。今日は大きなものが一旦僕の手を離れて確認してもらう段階になったので一安心。このあともちょっと〆切が近いものがいくつかあり、それは僕の得意なものではないので時間がかかりそうなので中旬と下旬でなんとか終わらせる。


仕事が終わってからニコラできんかんと甘夏とマスカルポーネのタルトとアルヴァーブレンドをいただく。柑橘系大好きなので甘夏のデザートはうれしいし美味しい。きんかんの甘さもあって、苦味のあるアルヴァーとも相性がいい。

今日も作業中はradikoをメインに。『アルコ&ピース D.C.GARAGE』『JUNK 爆笑問題カーボーイ』『あののオールナイトニッポン』を聴いた。爆笑の太田さんは松本さん問題について芸人というものについて話をしていた。
あのちゃんは紅白での橋本環奈との「天使と悪魔の最終決戦」の再現をYOASOBI『アイドル』歌唱の際にやったことの舞台裏を話していた。演出で決まっていたと思いきや、そのこと自体は二人に任されたという感じだったのは結構驚き。ネットでバズるのはわかってるし、意図的に演出で入れていたと思っていたけど、最後には二人にやるかどうかは託されていたらしい。この一年で飛躍的な大ブレイクを果たしたあのちゃんのドキュメントとして自分で話す場所がラジオであり、もともとラジオも好きだったこともあってどんどんトークがおもしろくなっているし、彼女に起きていることを自分の言葉で話すことでファンも増えていっているのかなって感じる。
実際に僕もレギュラーになる前の単発ラジオであのちゃんに興味を持った。「オールナイトニッポン」というブランドは次にブレイクしそうな、するであろうと見込んだアーティストをちゃんと器用していて、彼や彼女が自分の言葉で話せる大切な場所となることでなんとなく聞いていたリスナーも知らずファンになっていく。そして、人気が爆発する流れを肌身で感じるように、パーソナリティーが話す言葉で現在進行形で聞ける特別な場所になり続けてきたのだろう。

 

1月11日
何かの夢を見て、初夢だから記録しておこうと思ったけど、寒すぎてすぐに目を閉じて二度寝。起きたら何かを見たけど何を見たのか全く覚えていなかった。寒くて布団から出たくない状態。
確か夜中にふと目覚めた時にメールを見たら、ずっと来ていなかったとある件に関する返信が来ていたのを見た気がしていたので、まさかそれが夢だったのかと思ってMacBook Airを起動したらそのメールは本当に来ていた。これで止まっていた作業は再開できるが、それにしても諸事情があるのはわかるが返信が遅すぎる。そして、その件に関する作業でできたものを送ってきてほしいという〆切がわりとすぐだった。もっと早く返信してくれていたら、こっちにもスケジュールの余裕とかあったわけで、なんというか不親切だし相手のことを考えてないんだろうなと残念な気持ち。今更言っても仕方ないので、反論もせずその〆切で提出するという旨のメールを出した。
とりあえず午前中にスケジュールに入れていた作業を開始する前に、この二ヶ月のスケジュールをその再開する作業に関して入れ込んで行ったり、すでに予定で入れていたものを変更して時間を確保した。
スケジュールを作ってから今日中に提出するつもりの作業を『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』を聴きつつ始めた。昼過ぎに一旦終わったので、外に出て請求書をプリントアウトして捺印してから、スキャンしたデータをスマホに保存した。


『新潮』の対談がおもしろかったので、小川哲さんの最新作である『君が手にするはずだった黄金について』を駅前の書店で購入した。発売した時から気になっていたが、なんか手を出していなかったもの。帰ってから原稿を読み返す前に最初の一編を読んだ。出てくる固有名詞が自分と近いものだったので、かなりリアリティを感じた。
原稿を確認して修正してから請求書と一緒に送信したのでとりあえず作業は終わり。

18時からGAGA試写室でジュスティーヌ・トリエ監督『落下の解剖学』試写があるので、15時半には家を出た。めっちゃさぶい。歩いて一時間二十分ほどの距離だが青山通を歩いていくが体がなかなかあたたまらないぐらい気温が低かった。

これが長編4作目となるフランスのジュスティーヌ・トリエ監督が手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞したヒューマンサスペンス。視覚障がいをもつ少年以外は誰も居合わせていなかった雪山の山荘で起きた転落事故を引き金に、死亡した夫と夫殺しの疑惑をかけられた妻のあいだの秘密や嘘が暴かれていき、登場人物の数だけ真実が表れていく様を描いた。

人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。息子に対して必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲むつまじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。

女性監督による史上3作目のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。主人公サンドラ役は「さようなら、トニー・エルドマン」などで知られるドイツ出身のサンドラ・ヒュラー。(映画.comより)

二時間半近くある作品で、最初の三十分ぐらい過ぎたあたりか、ちょっとうとうとしてしまった。何分ぐらい寝たかわからなかったけど、なんか暑かった。えっもしかして風邪引いたのか?と思ってほっぺやひたいを触るが熱くはない。暖房がかなり強めにかかっているのか、試写室の中がかなり暑く感じられた。外がかなり冷えているのでその寒暖差でうとうとしてしまったのかもしれない。物語はさほど動いてはいなかった。
視覚障害を持つ息子と一家の愛犬の演技が後半すごいことになっていく。あの犬の演技力はどうなってんだろう。あることで仮死状態になっている場面とかは白目をむいているというか、死んでるのかもっていう感じの目になっていて、すぐに蘇生されるのだけどそのあとの目の感じとか動きが恐ろしいほどリアルだった。
夫の殺害容疑をかけられた妻、殺人なのか事故死なのかは裁判で争われることになり、被告人となった母のサンドラに対して相手側の弁護人の俳優がとても良い味を出していた。物語としてはサンドラが殺したのか殺していないのかということよりも、夫婦の間で何が起きていたのか、死んでしまった夫との関係性が裁判の中でどんどん明らかになっていく。
知り合いの樋口毅宏さんが試写で観た際に強く感銘を受けていた。夫側に共感できるところがたくさんあるというポストをしていたから、観ていて「ああ、なるほどなあ」と思った。妻は自分よりもお金もしっかり稼いでいるし、社会的にも認められていて有名であり、弁も立つからどんどん自分が惨めになっていき相手のことが怖くなってくるんだろうなと夫の気持ちもわかるような内容になっている。
パルムドールを取ったと言われるとそうなんだなあって感じで、ル・シネマで上映していても違和感のない感じのちょっと高級なタイプの映画かなあ。今の日本だとこういう作品って妻に弱い夫には共感されるだろうけど、それではヒットに結びつかないし、どういう売り方をしていくんだろう。
帰りも寒かったけど、来た道をそのまま歩いて帰った。スマホを見ていたら週末雪が降るかもってあって、週末までずっと冷え込むの嫌だなって思った。まあ、大雪にならなかったらいいけど。

 

1月12日
二度寝してしまった。リモートワーク開始前には起きたが、朝の作業をしている時間はなかった。昨日、寝る前に『四千頭身 都築拓紀サクラバシ919』を放送の半分である一時間聴いていたので、その残りからradikoで聴き始めて『ハライチのターン』『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』『ナインティナインのオールナイトニッポン』『マヂカルラブリーオールナイトニッポン0』をBGMがてら流した。
先週がたいていの場合去年の録音だったりしたので、生放送は今回からという人が多かった。ラジオになろうとする都築、新婚だけどテンションがあまり変わらない岩井と澤部、旅行に行ったことと子供について楽しそうに話しているおじさんのおぎやはぎ、高校時代の同級生の話を古典小説のように毎年しているナインティナイン、正月は劇場に出たと話すものの休んでいた考察をリスナーにされるマヂラブ、いつもの放送に戻ってきていた。
リモート作業は通常運転、今日やるべきことはちゃんとやったので問題なし、中旬以降にちょっと忙しくなりそうな気はしている。

元日から言葉が出ない。ほとんど言葉を書いていない。おととい織田作之助賞(その選考委員を私は務めている)の短い選評をしたためただけだ。たぶん「書いてしまう」ことが恐ろしいのだと思う。なにか言葉を書きつけてしまう、残してしまう、そして発信してしまう、そうしたことをしていいのか? と2024年の1月1日のその時刻以降、自分が自分に問うている。問われているあいだは書けないが、私は締め切りは破らない人間だから、こうして「現在地」の更新の日が来て、私はとうとう文字を書いている。そもそも私は、別に談笑はできたし、当たり前に仕事用の、また私用のメールも書けた、友人たちと LINE も送り合えた。だが「書いてしまう」ことはできずに今日のここまで来た。

古川日出男の現在地』「海と火と、それから 2023.12.23 – 2024.01.12 東京・宮城・埼玉・静岡・福島・京都」

古川さんの公式サイトのブログが更新された。この後に続くことは『平家物語』における都落ちしていく平家たちがしたことについてだったり、海という場所の話だった。読みながら今ちょうど読んでいる『平家物語3』の平家たちがどんどん源氏たちに破れていく展開を思い出していた。

The Smile - Friend of a Friend 


仕事が終わってから外に買い物にいく時にThe Smileの次のアルバムからのシングルカットされたこの曲や今年発表された新曲をSpotifyで聴きながら歩いた。

また、この曲の ミュージック・ビデオは、映画監督ポール・トーマス・アンダーソンが手がけており、1月18日から25日にかけて、世界各地の映画館で行われる上映イベント 「Wall Of Eyes, On Film」 の中で初公開される。本イベントは、新作アルバムとポール・トーマス・アンダーソン監督とのコラボレーションを讃えるもので、シドニーからブエノスアイレスまで世界16箇所の映画館で上映が行われる。ここ日本では、坂本龍一氏が音響を監修したことでも話題の映画館、109シネマズプレミアム新宿にて2日間限定で開催が決定した。 

アルバム発売前に超高音質視聴&上映会が109シネマズプレミアム新宿で行われるので、今まで一回もやったことがないけど、新TwitterことXのbeatinkのポストをリポストするっていうのをやった。なんかプレゼントとかでアカウントをフォローして該当のポストをリポストっていう宣伝に加担するのはずっと嫌でやってなかったけど、これはもし行けるなら行きたいから恥を忍んだ。
で、109シネマズプレミアム新宿のシアター8ってところを調べたらプレミアム感はすごい、普通に行ったら6500円の席らしい、で座席数も100ぐらいか、22日と25日の2日あって、日にちも座席も当選者には選べずに当選者にはDMで知らされるとのこと。今のところリポストしている数を見ると800を超えている、2日でMAX200人だとしたら倍率は四倍程度、微妙だ。当たりそうだし、外れそうな微妙な倍率。

 

1月13日
今日もまた二度寝、十時を過ぎていた。さぶい、さむいではなくさぶい。夕方から雪が降るみたいなニュースを二日ほど前に見ていたが、そのせいか非常に乾燥して冷え込んでいる。
夕方に新宿に行く用事があるけど、天気予報を見ると雨っぽい。雪にはならないのかもしれないけど、もし降れば今年初の雪になる。


ラヴクラフトが書いた一連の小説が「クトゥルフ神話」として体系化されているが、彼の小説を田辺剛さんがコミカライズしたものは何冊品も出ている。小説は読んでいるが漫画は読んでいないものがもう何作か残っていて、資料として読もうと思ったままだった『クトゥルフの叫び声』と『インスマスの影』を昼ごはんを食べてから読み始めた。
古きものたちなどの描写は海に関する生物との融合隊みたいなものが多くて、グレイと呼ばれる宇宙人が一般化する前のタコ型、軟体動物っぽい宇宙人的なフォルムをさらに禍々しく邪悪にしたようなものになっている。
小説を読んでいる時にも描写はされているけど、田辺さんがそれを元にイマジネーションを用いて描いた古きものたちなどクトゥルフの神々や古の存在たちはこれを見てしまうともう焼きついてしまうし、海外でもこの漫画が読まれるとよりこのイメージが定着するだろうという強さがある。悪夢に出てきそうなものたちだが、このラヴクラフトから始まった「クトゥルフ神話」というものの広がりが一番興味深い。

二時半過ぎに家を出たら雨が降っていた。地面が濡れていたが傘を差すほどの雨ではなかったのでそのまま渋谷まで歩いていく。
radikoで『三四郎オールナイトニッポン0』を聴いていた。今年初めての放送であり、生放送。年末の紅白や逃走中の話から年始のお休みにどこに行ったかという話をしていた。二人とも休みに行った旅行の話がたのしそうだったし、紅白をネタにした展開もおもしろかった。
小宮さんが「メタル」という単語を入れて歌手名や歌をいじると相田さんがすぐに「メタル」を入れて歌い出すという、打ち合わせとかしてなくてもそれがすぐにできてしまう辺りは、すごい安定感というかコンビの波長の合う感じがすごくおもしろい。


新宿三丁目に着いて時間があったので、紀伊国屋書店に行って店内をぶらぶら。来月観る予定の舞台『最高の家出』のポスターが貼られていた。ビジュアルを初めて見たけど、なんかすごくポップな作品になりそうですごくたのしみ。

今年三月に放送作家を引退する鈴木おさむさんが作・演出した『朗読劇「美幸」』を観るためにシアターマーキュリーへ。この劇場は初めてでマルイ本館の八階にあったんだが、最初バルト9がある方の別館と間違えて紀伊国屋書店から向かって歩き出したら、みぞれ混じりの雪が降ってきていた。服についたみずれっぽいものを見ていたらわりと白い雪もどんどん増えてきていて、風もちょっと横殴りの強いものだった。この量だと明日積もらないだろうなというぐらいの雪だった。


鈴木おさむの朗読劇「美幸」に酒井若菜、水川かたまり・浦井のりひろ・岩崎う大が日替わり出演(コメントあり) 

友人を誘っていたので開場前に8階で待ち合わせして劇場へ。初めて来たのだけど、キャパは100ぐらいかな、普段はお笑いライブとかをやっているところみたい。
タイトルが「美幸」なので鈴木おさむさんの妻である森山中の「大島美幸」さんのことを描いたものになるのかなと思っていたが、主人公の名前は「美幸」だったが、「大島美幸」さんとはまったく違う人のことを描いたものだった。
主人公の「美幸」のセリフを酒井若菜さんが、他のキャラクターなどを男性ブランコの浦井のりひろさんが朗読する形だった。
若菜さんは感情を込めないような感じで淡々と「美幸」としてのセリフを朗読していく。その淡々とした感じがやがて狂気に染まっていく、超えてはいけないラインを超えてしまう人の怖さみたいなものが漂っているようだった。実際に感情が露わになるのは後半の一部ぐらいだが、普通の人生を歩もうとしていた彼女がゆるやかに壊れていくのもあって、だんだんその狂気みたいなものが若菜さんの声や椅子に座っている状態の体から迸っている感じだった。
浦井さんは「美幸」が出会ってきた男性たちや弁護士などのセリフを朗読していく。彼女によって被害を受けた女性のパートナーだったり、彼女が傷つく要因を作る男性などを演じていくが、一気にボルテージが上がって怒る場面などもあって朗読劇における喜怒哀楽の怒や哀を多く担っていた。男性ブランコはコントも漫才もコンテストで上位に食い込んだり、毎年決勝に進出している凄腕だが、やっぱり演技力がすごいのだなと思えるものだった。
習字が得意だった「美幸」は幼い頃から漢字二文字で日記を書いていた。ある時期から自分が作った二文字でも日記を書くようになっていく。その中で作中で大きい役割を持つのが「顔晴」と書いて「がんがる」があり、二人が座っている椅子の奥のスクリーンに時折、それらの二文字が映し出される。
終盤に起きる「美幸」の復讐劇というか自分勝手な行為の中に「巨根」という単語を男性のある部分にタトゥーで入れようとするシーンがある。これは確かにおそろしく怖すぎるものだが、ギャグ的なことなのか怖いと思わせたいのかちょっとわからなかった。というか全体的に笑えそうなところと怖いところが混じり合っているので、どちらなのか釈然としない、噛みごたえはあるけど噛みきれないみたいな感じがずっと続いていた。
一時間四十分の上演時間だが、椅子の問題や空調の問題もあって、その時間集中するのが結構難しい感じがした。普段ここでやってるお笑いライブだったらここまで長尺のものはしないだろうけど、集中力を客に持たせないといけない場所であの内容でやるとしたら、たぶんここはあんまり向いていなかったんじゃないだろうか。
一緒に観た友人はもともと体調が万全ではなかったが、観ている時に貧血ぽくなってしまったようで、ご飯も食べずに解散することにした。

今回も永野節が炸裂‼️炎上覚悟で己の身を削った魂の叫び【しくじり放送室 】 


その友人と前にダウ90000のライブ「20000」を観にいくお誘いをした際に、ダウの番組に永野さんが出てくるのがおもしろいので見てと勧めていた。それで彼女も永野さんの動画をあれ以来けっこう見たと話をしていたので、帰ってからトンツカタン森本やニューヨークのYouTube番組にゲストで出てるのを見たりして、LOFT9で永野さんが出演するトークイベントがあったのでそれに行こうと思ってチケットを取った。
なんか、今年は永野さんのイベントとかをたくさん観るような気がする。上記の「しくじり放送室」は去年見ていたが、改めて見てみると彼が話している先輩芸人たち(ダウンタウン世代)とかが急に若手に優しくなったり、子供ができて今までと違うスタイルになったことについて、それまでよしとされていたことを信じてやってきたのに、裏切られたから謝罪してほしいみたいな気持ちが、お笑い業界だけじゃなく、けっこう今の四十代、ロスジェネと呼ばれた世代が社会的なことから一般の生活においても感じることに通じている気がする。だから、僕は永野さんの毒に惹かれている部分は間違いなくある。

 

1月14日
三日連続二度寝。寒過ぎて布団から出る気がしないから、目覚めてもすぐ目を閉じていたら寝ているパターン。9時過ぎに起きてから『君が手にするはずだった黄金について』の続きを読んだ。
表題作に出てくる主人公の同級生である片桐の話や、その次の短編『偽物』に出てくる漫画家のババリュージという人物は自分の中にある燻っているものに輪郭を与えるような、こうなりたくはないけどなる可能性がゼロではないという危機感であったり、何か焦げ臭い嫌なものを感じてしまった。
『君が手にするはずだった黄金について』のところで主人公の小説家が「作家は、むしろなんの才能もない人間のために存在する職業だ」というセリフがあり、そのあとに人間としての欠損、ある種の「愚かさ」が必要になると書いているが、それが『偽物』では反転して使われる部分があり、そこがゾッとする。前の短編でその部分を読んでいて、そうだよなと思っていた自分自身にいきなりラリアットされるみたいな、鈍い痛みがあった。


昨日ほどの寒さはない中、radikoで「M−1グランプリ2023」準グランプリだったヤーレンズの単発番組『ヤーレンズオールナイトニッポン0』を聴きつつ渋谷へ。冒頭からずっとボケ続けていて、固有名詞とかたくさん出てくる感じは先週の『令和ロマンのオールナイトニッポン』にも通じているというか、二組の頭の回転とボケ続けて、それを拾い続けて補足しつつツッコみ続けるというのは近いし、知性的だなと感じさせる。令和ロマンは慶應ボーイで芸歴もまだ若手で王者になったシンデレラボーイ、ヤーレンズは芸歴で言うと彼らよりも10年近く先輩であり長年売れなかったしラジオでも彼らと比べて学がないといっているという対比的な部分もある。ヤーレンズの二人は声の質が近いのでラジオだとちょっとハネにくいかもしれないと思ったけど最後まで楽しんで聴けた。
シネクイントで山下敦弘監督×野木亜紀子脚本『カラオケ行こ!』を鑑賞。八割ほどは女性のお客さんだったが、綾野剛ファンなのだろうか、原作漫画のファンなのだろうか。どういう層なのだろう。山下監督ファンという感じではないし、野木脚本ファンはもちろんいるだろうが、その辺はわからない。

変声期に悩む合唱部の男子中学生と歌がうまくなりたいヤクザの交流をコミカルに描いた和山やまの人気コミックを、綾野剛主演で実写映画化。

中学校で合唱部の部長を務める岡聡実は、ある日突然、見知らぬヤクザの成田狂児からカラオケに誘われる。戸惑う聡実に、狂児は歌のレッスンをしてほしいと依頼。組長が主催するカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける恐怖の罰ゲームを免れるため、どうしても歌がうまくならなければならないのだという。狂児の勝負曲は、X JAPAN「紅」。嫌々ながらも歌唱指導を引き受ける羽目になった聡実は、カラオケを通じて少しずつ狂児と親しくなっていくが……。

綾野が狂児を演じ、聡実役にはオーディションで選ばれた新星・齋藤潤を抜てき。「リンダ リンダ リンダ」の山下敦弘監督がメガホンをとり、テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の野木亜紀子が脚本を手がける。(映画.comより)

漫画が未読なのだけど、狂児と聡実という年齢の離れて境遇もまったく違う二人がカラオケという場所を軸に気持ちが通じる、友人になっていくというものではあるが、どこかBLぽさは感じられるし、安心して見られる関係性のようだなと思っていた。
実際のところ、メインである狂児と聡実の関係性があり、聡実は合唱部の部長であるが、彼と同じソプラノの二年生男子との関係(聡実は声変わりが始まっていて前のようなソプラノが難しくなっていく。そのことで二年生男子との関係性が変わってくる。弟が兄に対して本気でやれよと怒っているのだが、兄の身体が成長期によって変わりつつあることを知らないみたいな感じであり、お前もそうなるで、と見ながら思ったりした)、聡実と彼が幽霊部員としてかけもちしている映画部(映画研究部?)の同級生の男性、聡実と狂児が所属する組みのヤクザたち、という風に基本的には聡実と男性の誰かというカップリングというか関係性が描かれている。
合唱部の副部長である女子や部活の先生(芳根京子)や母など女性は出てくるが、聡実の人生や行動を変える存在ではない、というのもBL的な雰囲気を感じる一因だったように思われる。
原作があるから、それに準じている可能性も高いが、もう中高生の物語にすら男女の異性愛ヘテロセクシャル)を描く必要性や求めている人は少ないということなのだろうか。実際昨今の性加害問題もあるので、そういう流れが加速するかもしれないし、そういうものを見たいとか思う人が減って、同性同士のイチャイチャ感的なものを楽しめれればいいという人が増えていても不思議ではない。
山下敦弘監督の劇場公開作品はたいてい観ているが、山下さんの描く男性同士の友情感みたいなものや友愛は描き方や角度を変えればBL的な消費はできるのかもしれない。だから、山下さんが監督なのはさほど違和感はない。
文学だって明治・大正辺りの今では文豪として知られる作家たちの交流は友愛としか言いようのないものがあったりする。そういうものがまとめられてBL消費的なものができると文庫化もされている。
今作では成長期で思春期を迎えている聡実だが、作中では恋愛に関するものはほぼない。副部長と二年生と彼が一緒にいる場面を狂児に見られる場面があるが、狂児からすれば三角関係であったり、青春的なラブコメ感を感じるものの、当事者の聡実はそう見えているかもしれないがそうではないとはっきり言えてしまう、ぐらいに距離を置いている。そのことによってこの物語はより聡実と狂児の年齢の離れたまったく違う価値観や居場所の二人がカラオケという閉じた空間の中で友情を育むという物語になっていて、よりBL的な消費もできるようになっていた。
野木さんが脚本だからそのぐらい原作とは違う部分を入れているのかなって思ったけど、聡実の母が焼き鮭の皮を取って父の茶碗に入れるところで「愛は与えるもの」みたいなセリフから、それが行動になったものとしてその行動を描写していたけど、そこは野木さんぽいと思った。実際はわからないけど。

もうすぐセカンドアルバムの出るThe Smileのファーストアルバム『A Light for Attracting Attention』をBGMに『平家物語 3』を読み終わる。次巻で最終巻の4で那須与一が登場する。僕の生まれた井原市那須与一が扇の的を射落とした軍功(褒美)でもらった領地だったところがあるので、「扇の的」というお菓子があったりして幼少期から存在だけは知っていた。

 

1月15日
二度寝がデフォルトになりつつある朝、6時台に目が覚めたが寒くてまた寝た。起きたら8時過ぎだった。そこからちょっとだけ作業をしてからリモートワークを開始。
昼過ぎに外に出ようと思って玄関でスニーカーを履こうと腰をかがめたら腰の左後ろを痛めたというか鈍い痛みが。ぎっくり腰でもないけどなんか痛い。ひねったのか、寒いせいで硬くなっていて負担がきたのか、わからないけど痛い。


リモートワークが終わってからニコラに行ってモンブランとアルヴァーブレンドをいただく。外の寒さで冷えた体も芯から温まる。腰はまだ鈍い痛みがあるけど、仕方ない。
水曜日にオンラインミーティングがあるので、その前に提出しておかないといけないものを夜に作業する。

作業後に17日に直木賞芥川賞の発表があるので、買ったけど読んでいない加藤シゲアキ著『なれのはて』を読み始めた。明日中に読み終わらなければ、発表までに間に合わない。加藤さんの小説はデビュー作から読んでいて、全部ではないがこの人はいつか直木賞とか大きな賞を取るだろうと思っていた。この『なれのはて』は今回の本命のひとつだと思うのだけど、なんでこの装幀なのだろうかと発売した時から思っていた。
正直、この装幀だから単行本で買うのはやめていた。彼の単行本の中では一番ヒドい装幀だと思うし、実際ネームバリューもあって実力もあるから売れるのはわかっている。今回が初めて講談社から出版する長編小説だから、他の出版社から出たものと差別化したかったのかもしれない。だけど、この装幀じゃなかったほうがもっと売れたと思ってしまう。
実際のところ、受賞すればそういうことは関係なくなるだろう。そして、最後まで読めばこの装幀だった意味もわかるのかもしれない。

再来週土曜日27日にLOFT9で『ありまよとアオヤギの給料日ラジオ  23年下半期よかったものSP』というトークイベントが開催されます。友人の有田真代さんとライターの青柳美帆子さんが毎月やっているラジオのリアルイベントです。
2023年下半期の作品を、「本(小説/その他)」「マンガ/TVアニメ」「映画/ドラマ」「旧作・ノンジャンル」にわけて語るというものになっていて、「本(小説/その他)」では書評家の三宅香帆さんがゲスト、僕も「映画/ドラマ」パートでちょっと出ます。
このイベントを機会に去年の作品を読み返したり見返したりするいいタイミングになるかもしれません。たぶん、そういうイベントだと思います。
LOFT9 の上には映画館のユーロスペースもありますし、前日の26日からはホワイトシネクイントで『哀れなるものたち』公開も始まるので、渋谷でトークイベントと映画を楽しむ土曜日とかどうでしょう? 

今回はこの曲でおわかれです。
Hedigan's - LOVE (XL) @ EPOCHS 2023