Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『君の名は。』

 今日は休みになったので、まあ先週ぐらいに人数調整とか諸々で決まっていたんだが。やっぱり映画だと思い、『ゴーストバスターズ』を観に行こうか、今日公開の『ニンジャタートルズ影』を観に行こうか、チケットを買った直後に園さんに呼ばれたので観なかった「ケンとカズ」を再びか、で映画館を検索してたら新海さんの新作『君の名は。』も今日からだったから昨日の夜チケットを取った。
 平日だけどめっちゃ席埋まってる。やっぱり人気あるんだなあ、改めて思った。9年前の『秒速5センチメートル』をシネマライズで観てから、それ以降新海作品観てないんだけど、どういう感じなのだろう。
 試写を観た人の感想がツイートされているのをだいぶ前に見た感じだと、なんか『シン・ゴジラ』的ななにかがあるっぽいんだが。で、観た。『シン・ゴジラ』からの〜、『君の名は。』からの〜、『何者』で行くわけね東宝。微妙に繋がってんな、うまいねこの展開はと思った。実際には『君の名は。』と『何者』の間には『怒り』もあるのだが。新海さんだけがセカイ系で生き残った印象がなくはない。



監督・原作・脚本:新海誠
声の出演:神木隆之介立花瀧)、上白石萌音宮水三葉)、長澤まさみ奥寺ミキ)、市原悦子宮水一葉)、成田凌勅使河原克彦)、悠木碧名取早耶香)、島崎信長藤井司)、石川界人(高木真太)、谷花音宮水四葉)ほか




雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、男女の心の機微を美しい風景描写とともに繊細に描き出すアニメーション作品を手がけ、国内外から注目を集める新海誠監督が、前作「言の葉の庭」から3年ぶりに送り出すオリジナル長編アニメ。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」で知られ、新海監督とはCM作品でタッグを組んだこともある田中将賀がキャラクターデザインを担当し、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品に数多く携わってきた安藤雅司作画監督を務める。1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。声の出演は神木隆之介上白石萌音。(映画.comより)



 今作ではネタバレというか主人公の立花瀧宮水三葉の体が入れ替わるということ、そして二人は出会えるのかということが大きなシークエンスであり、実写だと『世界の中心で愛を叫ぶ』『いま会いに行きます』のテイストに近い。
 リア充の恋愛ものなんか観ねえよというアニメ好きもこのキャラデザ、新海作品ならばRADWIMPSが主題歌であっても問題はなく、そして涙するだろう。これは多分プロデューサーの川村元気さんが狙いに行っているんだろうと思う。そして、それは多分成功していてこの土日でお客さんも入るだろうしヒットする匂いがする。
 かつてセカイ系というジャンルがあってだな、新海誠はその代表格だった『ほしのこえ』で注目された一人である。僕と君の恋愛がセカイの終末を左右してしまうという問題と自意識の問題を孕んだ作品群、それはネットが普及し始めた頃に、誰とでも繋がっていける世界において有効に見えた。
 時間は確かに流れて、絡んだり綺麗にまとまったりしながら過去と現在と未来を結んでいる。世界は限りなく繋がり放題になっていった。その現在において、新海さんの新作はその先を描いたようには見えない、が多くの人の何かを満たす作品になっている。
 

 彗星の接近がもたらすもの、立花瀧宮水三葉がそれぞれの生活の中でお互いに惹かれていくこと、会いたいという気持ちがそれぞれの場所に向かわせる。故に二人は真実を知ってしまう。この作品ではその二人の距離がギミックによって構成されていて、うまくいっている。
 『シン・ゴジラ』のゴジラが災害と福島原発問題のメタファーであった後に今作だと何か弱い。『シン・ゴジラ』から除いた恋愛と家族についての物語の中に大きな出来事をぶち込むこと。その除いた部分が新海さんのお家芸であり魅力だ。セカイ系にしろ大きな災いも恋愛を盛り上げるための一つのアイテムでしかなくなっている部分をどう捉えるか。
 
 立花瀧の憧れの先輩である奥寺ミキとの関係、そこで彼は傷つくこともなく、まあ甘やかされた感じで良好な関係を続ける。そこは物足りない、彼が成長する部分はない。彼がのちに三葉に会いに行くのも障害はない。そして、知るのはその世界における真実であり、物語は謎の回収に向かう。
 エンタメ作品になっていて、間口を広くしたのもあるのだろうが、最後のエピローグはもっとばっさり切ったほうがよかったんじゃないか、少しだけ匂わす程度で、でも、タイトル的なことを言うセリフまで引っ張っていく。あそこがもっとばっさりのほうが余韻が残った気はする。