nicolas四周年イベント「“アニバーサリー”の先に」に行ってきました。窪美澄さんの単行本『アニバーサリー』という小説を軸にして窪さん自身の朗読とニコラのご飯、お客さん自身の大震災の日から、自分の親子関係なんかをそれぞれ話したりするイベントでした。
小説『アニバーサリー』に関しては二年前に書いたブログの感覚がずっと残っている。 http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20130402
話すと考えがうまくまとまらないしこうやって書くと書くほどにこぼれ落ちていくことに本質があるのではないかと思ってしまう。だけど書き残すと読み返せるから。
救われない物語に人は救われると僕も思う。僕もそうだし。答えを出すことはエンタメとしては正しいと思うけど、これはAです!って回答を出して受け手がそれをはい、Aですねって受け入れるだけだったらやっぱり思考停止だと思う。AかもしれないしBかもしれない、もしかしたらCかも。
コミケや同人誌の世界は受け手である読者が送り手にもなることができて市場がデカくなって第一線で活躍する作家がアンダーグランドからメジャーグランドに出てきて活躍している。それは大好きな物語に隙間があって、あのキャラとあのキャラがこうなったら最高なのにみたいな想像力から派生してる。
思考停止だけはしたくないと思うからきっと僕は小説が好きだしやりたい放題やっている創作者の人たちが好き。
大塚英志さんが先月の講演で言われていたけど海外の日本語研究している学生の何割かは実際にマンガを書いている。そのことを指導教官とかは知らないで大塚さんが気付いて仲良くなって話すと指導教官が初めて気づくらしい。マンガとかアニメのコンテンツをただ海外に売るだけじゃあ文化は届かない。
そうやって受け手でもあり作り手にもなる日本のカルチャーが好きな人を誰も育てようとはしていない。そしてクールジャパンというダサい名前の元にただコンテンツだけを売りつけようとするから彼らも寂しい気持ちになっている。研究者や外国の大学に金を出して研究してもらえばいいのに。
でも、日本政府はそれをしなくて韓国や中国の政府はそれをやっているから今海外の日本文化研究している学科とかがどんどん減って韓国や中国の文化研究の学科になっている。だからお金の使い方が間違っていると大塚さんは言われていて自費で彼らを育てようとしている。
小説を読む人は同時に小説を書く人になりうるわけだから。窪さんも読んでる人を救おうとして書いているわけじゃないって言われていて、でも救われた人がいてそれで窪さん自身も救われたりする。大切な物語ってそうやって読んだ人の中に入り込んで細胞を書き換えちゃうような可能性がある。
でも、そういう大切な物語に出会うためにはたくさんの小説(コンテンツ)を自分が消費していくことでなにを自分が欲しているかとかなにが好きなのかとかわかるようになるし、それって経験値あげないと読んでも観てもわからないレベルのものも実際にある。
今はなんか損したくないってみんな思うから売れている、人気ありますよみたいなものだけを買うからビッグヒットとそれ以外みたいになっていく。実際それってすごくなにかを損してるしつまんねえなって思う。多種多様な価値観を知った方が面白いのにね。
- 作者: 窪美澄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/03
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (22件) を見る
- 作者: 窪美澄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (17件) を見る