Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『私が死んでも代わりはいるもの』


 最果タヒさんの『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』にエヴァオマージュが。タヒさんもエヴァ世代か。




 夜、小雨が降り始めている。家路を帰るために自転車に乗っている。ポケットからスマフォを取り出すと通知されているランプが光っている。速度を少し落として画面を見ている。歩いている人たちを追い越しながら画面と前を交互に見る。同じように自転車に乗ってスマフォの画面を見ている女の人がいて、横に並ぶ。互いにスマフォを見た瞬間に互いのハンドルが当たってバランスを崩して倒れる。スマフォが放り出される。僕のXperiaは割れずにする。彼女のiPhoneは割れる。そんなことで転けた二人が起き上がり言い争いになる。はじまりはいつも雨、たいていiPhoneはいつも割れる。その後深夜のスーパーで彼女が寝間着みたいな格好で男と買い物しているのを見かける。近所でその男と言い合いになっているのを見たりする。ひとりで歩いているのを見る。一度TSUTAYAでひょんなことから話をする。でも、付き合ったり知り合いになるという関係性にはならない。そのうち見なくなる。でも、スマフォが割れた時に泣きじゃくっていた彼女の顔は印象的で忘れられない。恋に落ちそうだけど落ちない平凡な自分の人生だなと思う。はじまりが自転車の衝突だし、自転車は一人乗りだからそれぞれの人生を同じ方向に向かっても運転するのは個人なんだよなって思ったりする。何年か経って歩いていると目の前からその彼女が自転車に乗ってくる。表情はあまり変わってない。向こうは当然僕には気づかない。自転車の荷台には小さな子供が座っていて彼女が少しだけ振り向いて優しく話しかけている。僕はその子供と目が合ってちょっと微笑んだ。



 昨日浮かんだ短編な感じのやつをメモ代わりに。

かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。

かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。