Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『うるう』



デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』四巻。B&Bだよね、これ。




 14年ぶりに映画専門学校で取っていたイラストの授業の先生でイラストレーターのミラクル沼尾さんと飲んできた。ミラクルさんがメルマ旬報でもお世話になっている原カントくんさんがやってるヴィレヴァンのラジオに出たことがきっかけで、原さんがメルマ旬報関連のツイートをしてて元教え子の珍しい名字を見つけたことから飲みに繋がる、つう僕らしい再会を。今度は頭のおかしい付き合いのある教え子(先輩たち)と飲むときに誘ってくださるらしい。続けてれば時折懐かしい人たちと再会する、あとはノリで面白がろう。サシ飲み面白かった、学生の時は先生と飲んだことなかったけどね。



『うるう』
うるう年は四年に一度
次は東京オリンピックがある年らしい
それまでにどのくらいのことが起きているのか進んでいるのか
想像の先を行くことばかりだろう
未来はワクワクしているほうがいい
哀しいことは避けられないけど
それでもできるだけ笑っているように
君も笑っていれたらいいねって
遠くで思えるぐらいな平穏な一時を
僕は過ごせるだろうか
ねえ、どうだろうね



ウォーターフロント
電車の中にいるのだけど、視界は青の色
窓の外には魚が泳いでいる
車内も水で溢れていて、電車はいつの間にか水の中を走っていて
すべての水の中にあるといえる
だから、すべては青の色の中にある
目の前にいた彼女はなんともない顔をして車内を泳いでる
おいでよ、と彼女が笑うと口から酸素が溢れ出る
笑ってしまう僕の口からも
青色の世界を彼女の後を泳いで進んで行く
僕は走っているはずの電車の中を肺呼吸ではなく
もはや鰓呼吸しながら先頭車両に泳いでいく
ここはもう水際ではない
ここが最前線な青の世界、それがすべて
泳いでる僕らはいつだって鰓で呼吸して恋をする



『酔いどれ』
つまみは映画でビールを飲んでいる
スクリーンでもビールを飲んでいたから
ああ、同じだってプレモルの小瓶を口に近づける
体が少し熱いような、ふわりという感覚があって
輪郭がゆるやかにゆるんでいく
ビールばかり飲んでいると物語が追えない
最後の終わり方はどうだったかビールは教えてくれないけど
なんだか嬉しいという気持ちだった



『かわいい』
かわいいと感じていたことがいつか終わりを告げる
好きだという気持ちが景色を変えていくように
過ぎ去ってしまった景色はもう過去のワンシーンでしかない
繰り返していくことはできず
想いはもう一瞬のうちに満開になって君を彩った
花弁は散って舞って風に運ばれて
君の想いも、僕の想いも、いつかの風景の中にしかない
かわいかった君はもういない
そうやって僕たちはいつだってかわいかったとか好きだったとか
過去形がゆっくり消えていくのを待ちながら
かわいいが彩る日々を心待ちにしている



『The End + One』
終わりの風景に佇んでいるあなたが思い浮かべているのは
かつての誰なのだろうか
ふいに振り向いた先に見えた気がした人はもういないのに
なにか夏の日の残像みたくあなたは感じた
一番会いたかった人の気配を
すぐに風と共に残像も運ばれていってしまう
頬を撫でていく風の行く先を
あなたの瞳から流れる雫が
落ちながら教えてくれていた
あなたは歩き出す
かつてあなたの手を握っていた体温を思い出しながら
もういないことを握りしめて



『歯ブラシ』
寝起きまなこで目が覚めるために蛇口をひねる
顔を拭いて朝歯ブラシっでって感じで
カップに入ってる自分の歯ブラシと歯磨き粉と君の歯ブラシ
使われていない色違いの君のもの
君の歯ブラシはいくつあるのだろうって思いながら
歯ブラシして口をゆすって
うがいして元に戻す いつも通りのカップの中に
僕と君の歯ブラシと歯磨き粉
使われていない 使われることの可能性を思う
いつ捨てればいいのかって教えてくれない歯ブラシ
君の歯ブラシはあと何本



『フラワーガール』
フラワーガールが海辺で佇んでいる
近づいていくとこちらを見て
右手で顔の花を一本抜いてわたしに差し出した
ふんわりとした黄色い花
受け取ると花は燃え出して黄色い炎になって消える
フラワーガールはもう一本抜こうとする
それを断って海辺に座ろうと提案した
フラワーガールと打ち寄せる波を見ている
わたしの肩に花が寄りかかる
甘酸っぱい匂いがしていて
鼻を近づけると花が笑いかけてくる
遠くから匂いにつられたミツバチがやってきて
蜜を吸うと彼女はくすぐったそうに笑う
ミツバチはたくさんの蜜を蓄えて飛んでいく
その方向には地上に落下しそうなオレンジ色の夕日
萌えるような地平線にミツバチが飛んで行って
フラワーガールと夜に落ちていく



『カイト』
空から地上を見たいというから、
背骨をギュッと焼き鳥の串みたいに
引き抜いてグニャグニャになったあなたを天日干しして
糸をつけてカイトにしたら空に舞い上がった
そこからの景色はどうだい、
と手を離したら大気圏に向かっていった。
ずっとずっと上の方に、
太陽を目指すように僕と離れていった。



『通過』
大きな空の先に丸い虹が見えた
七色の光輪の間を通っていけたら
君の場所にたどり着けるのかもしれない
通過、通過、通過
近くにあると思ってもまだまだ先にある丸い虹
手を伸ばすと掴んでいるような錯覚
通過できない 通過できない 通過が遠い
次の雨が降る前に
通過 通貨 two羽化 雨下にはなるな
光輪の間の空が青すぎて目を閉じる
あっ通過した



『いまここ』
この世界には入れ違いと思い違いが大半を占めている
どうにもうまくいかない日々はいつもより多く寝てみる
とくに変化の兆しはないけども
肉体だけは丈夫にしておきたい
心が疲れた後に体までやられたら元の木阿弥
というより二段階で落ちてしまう
体力をつけよう体力を
本当に体力だけが自分を救うのだろう
さあ、走ろう 無理ならコンビニに行くぐらいの散歩を
春先に桜が舞う頃には
入れ違いも思い違いもなにもなかったぐらいに次のことを
春はもうすぐだというのに
冷たい風が夕暮れの商店街の埃をさらっていく
少しずつ夜の時間帯になって人々は家路を辿る
さあ、夜が来て朝がくる
明日は少し早く起きて走ろうか



『246』
滑り落ちそうな月の雫が浮かんでいた
夜空とビルの明かりが煌めいている東京
ヘッドライトの光が通り過ぎていくだけで
空から雫が落ちてこないけど
なにか思い出を彷彿させるような光を放っていた
246沿いの景色と共に
さあ、家に帰ろう
月を背にして
滑り落ちたものがあったとしても
今の僕には見えないのだから



『彷徨』
遠くに見えたものに唾を吐いてもなにも変わらない
オレンジ色の時間帯に飛んでいくカラスの美しさ
届かないことに諦めを飲み込むのではなくて
いかに飛ぶことができるのかやりかたがあるのか
必死に探すだけだしそれを発明するしかない
空の青さや橙色が消えた紺色と黒の狭間の中で
光るものになれたらいい
自ら発光するのかなにかの光を集めるのか
見え方と見せ方の在り方を
もっともっと叫びながら彷徨せよ



『いつか』
いつか来た道だと思うのだけど
それがどのくらい前だったのかわからなくなる
いやどのくらい先の光景だったのかもしれない
道は幾重にも分かれている
どれを選んでも結論は同じであるのならばそれは宿命だろう
過去も未来も現在も同時に存在している
今、目の前にある道は過去へ、未来へ同時に繋がっているが
それは確かに変えれる
宿命は見取り図のような装いで全てじゃない
選んだ道を掴んでいけば運命になって変わっていく
変えるなら今だ



『この町にはあまり行くところがない』
生まれた町には特になにもなかった
国道沿いにあったコンビニだって潰れていた
僕が東京から帰って見たら近所の家々は新しく建て替えられたか更地になっていた
大きな街の新幹線が停まる駅からバスに乗って帰る
国道沿いの景色はほとんど変わらない
墓石を作っている作業所みたいなとこも使ったことのないラブホもまだある
どんどん生まれた町に近づいてくる
曲がりくねった川が視界の隅にうつる
途中で小学校が同じだった男の子がなんにんかの集団で乗ってくる
彼は特殊学校にいた子だったが大人になった今は
あの頃の雰囲気をそのまま年取った感じでなにかが哀しい
その集団は大人しく窓の外の景色を見ていて
それぞれの家の近くの停留所で降りていく
大きな銀行が見えてくる前に僕は降りる
そこは祖父が亡くなった病院のところで
最後に見た時には半身不随で手を握るとなぜか僕だとわかったという
祖父がなくなったのはゴールデンウィークの初日で
いきなりのことだったから新幹線も乗車率が100%を超えていたから
品川から最寄りのその大きな街の駅までほとんど立っていた
バスから降りて病院の隣にあって潰れていないコンビニに寄る
知り合いには合わないままで買い物をして
国道沿いを歩いていく
通り過ぎる車にもしかしたら同級生が乗っているかもしれない
だけど僕も彼も彼女もきっと気づかない
歩いている町にはほとんど行くところがない
帰ってくると傾斜の激しい丘みたいな場所にある墓に参る
家の墓はかなり高いところにあって町が見渡せる
どこにも行けないと思っていた風景が広がる
5時になると時計台みたいなところから音楽が鳴る
いつも聞いていたそれはまだ鳴らない
背景にある木々が揺れる
遠くにあるさっき歩いていた国道沿いの車の音が小さく聞こえる
丘の上から町を見てもどこにも行きたい場所がない
急な坂を下って家に向かう
見慣れた家も古びていて家族も年老いている
道路を挟んで母屋にの反対側にある倉庫みたいな離れ
そこの二階が高校生からの僕の部屋だった
深夜に窓を開けて国道の方を見ると赤信号がずっと点滅していた
一階には毎年つばめが帰ってくる
巣立ったどれかが親鳥になって帰ってきて子育てをする
永遠と続いている帰巣本能が一階にはある
僕はここから出て行ったのはまだここがあるからだ
だけどここに帰ってくる理由もどんどんなくなっていく
この町にはあまり行くところがない



『理由』
風呂場に流れる血は水で排水溝に追いやられる前に写真で撮る
口の中が赤に染まっているそれも
裸は白くてところどころマーブルなソバカスみたいな斑点もある
金色に近い毛は光に当たると消えてしまうような錯覚がする
泣いている写真はなんのためなのかわからない
英語で書かれているから理由ははかれない
瞳はまっすぐで強いのになにか儚い
裸になるのはきっとそれが正しいと感じているから
その体で表せるものが彼女の存在証明かもしれない
雄弁に答えるように君の胸や陰毛は見える
きっとすぐに消えてしまうような美しさはもう
止まることはない
だから今シャッターが押される
いま閉じ込めた



『魚類を喰らう』
午前八時前、風が強く吹いている
小雨みたいなものは降っていなかった
空を見上げるとなにか落ちてくる
光るペンダントを持つ少女なんかじゃなかった
イカだった
どこからって空から落ちてきてコンクリートにベチャって
今度はイワシが五匹落ちてきた
どんどん魚類が落ちてくる
ビチャビチャとコンクリートを叩く
魚の大きさはどんどんデカくなってきて
カツオはさすがに当たったらヤバいと逃げた
空って海だったっけ
海のない街に魚類の群れが
上空を黒い翼の集団が旋回して
舞い降りてくる
カラスが魚類を嘴でつつく
イワシをどんどん飲み込んでいく
落ちてくる魚類を黒い鳥は避けながら食べ続ける
こんな世界間違っている



『遠く』
遠くまで見える家家家家、ビルビルビル、建物たち街の風景
見渡しているけどこれはわたしのものではない
ずっと先まで続くいろんな人たちの生活が孕まれている日常空間
どこにも行けるようで行けない同じように見える世界
ここにいるわたしが見えているものはなに
なにを見てなにを見ないでいるのだろう
見渡すすべてが焦土化していても
わたしは今見える景色をトレースして
現実を塗りつぶすだろう



『同じ夢』
なんかどっかの楽屋で知らない人とエロいことをしていた
雨が降って水浸しの町の道路
プールにシートを浮かべてその上を走るみたいに
草や木々の上を原付でなんとか渡りきる
先の家に入ったら蛇がいてどこかにどける
誰かが来て家を出ようとしたら
その蛇がまた現れたから外に出したら、
目が覚めた。



『プラスチック』
プラスチックな魂はグジャグジャと
駅から歩いてくる人たちの靴に潰されている
元の形には戻ることはない
中身はこぼれ出ているし外側も壊れている
誰かに蹴飛ばされて排水溝に落ちる
ドロップしてその泥水やゴミの洪水の波
浮かんで先へ進んで行く
海へ海へ
プラスチックは自然にはなれないから
どこまでいってもある意味では変わらない
海へ海へ
辿り着く頃には中身は違うもので満たされていて
外側も内側もなにか違うものになっている
でもプラスチックな魂はそのまま



『スルー』
どのくらい届いたのか誰か伝えてほしい
いつだって通り過ぎるだけの熱量の行き先は
もうぶつかっていくことがないから
存在していたかすらわからなくなる
想いのベクトルはもう手元から離れてしまって
跡形もない
だからその先でどうなったのか
おしえて欲しかった
もう通り過ぎていくだけのものは
ないようなものと同じだって
お願いだから
通り過ぎた先で幸せであればいい
違う熱量が大爆発しながら
新しい天地創造
通り過ぎた色彩の中で



『街』
すれ違う人たちの多さに立ち尽くす
自分とは関わりのない人たちの世界が同時に動いている
もう誰も彼もが己の生を全うしようと足掻いている
街の風が吹く方にあるのが幸せなのか不幸なのか
なんて誰にもわからない
ただ、できれば誰もが幸せな世界を望むのだけど
どうやらそれも無理らしい
僕の幸福だってどうなるかわからない
あなたの哀しみを引き受けるほどの覚悟もない
なにも言わずに聞いてあげれたらいいのに
でも、僕はきっとなにかを言ってしまうだろう
君の求めるものを持っていないから
通り過ぎる人たちの背中に孤独と勇気を感じて
いつだってみんなひとりで立っている
時には誰かに寄り添いながら笑っていたい
街の風景の中に溶け込んでしまった僕や君は
いつか笑って出会って別れるだろう



『ホットコーヒー』
あったかいコーヒーを
香りが漂って
少しばかり苦くて
喉元をすぎていく
ああ、まだ熱いから
冷めるのを待っている
ホットコーヒーが苦手だから
少しだけ冷めるのを
待っている
その間は香りを楽しんでいよう



『どうにも』
どうにもならないことが増えていく
そのどうにもならなさを引き受けていく以外に方法はどうやらないらしい
僕はそんな時に誰に電話したり話を聞いてもらうんだろうか
僕はそうなった人の話を黙って聞いていてあげれるだろうか
そんなものを持ち合わせているんだろうか
どうにもならないことばかり
どうにもできないことばかり
笑っていたいけどそんなに簡単じゃないよって
言われているような気がしてしまう
誰かが僕に電話をしてきて
誰かが僕に話したいと言って来た時に
黙って聞いてただ頷けるような
優しさに似たものを持ち合わせているだろうか



『逆鱗』
キラキラと光る鱗の輝き
それは水中に届いた光が反射している
一匹が犠牲になってほかの集団を助けるという
人間の死が、魂が海の底に沈殿する
死は塩になっていく
鱗は水中に浮かんでいるか
人の魂は、いや死というものも水中にある
しかし、底にある、地ではなく天に向かわず、海に
逆立った鱗に書かれている言葉は暗号だ
アナグラムであり言葉遊びだ
キラキラと光って輝いている
人魚が泳いでいる海の底にあるもの
人が作りし哀しき人魚と踊っていった魂たち
沈んでしまった底には光が届かない
だけど、忘れてはならないものが逆立った鱗みたいに光っている



『日々、われる』
乾燥している空気
段ボールが指先の水分を奪ってく
奪ってしまうからボロボロになって
指先からカサカサと冬の様子
指先から春はまだやってはこない
ひび割れて、ジリジリする
鼓動がそこにあるみたいな
血の流れみたいなものがヒリヒリと
日々、われている



『鯨歌』
鯨の歌が、骨音と共に聞こえて。
胞子の踊りが、舞いあがった。
さあ、いくつもの時間が屹立した。
「島」から、フランスから、メキシコから、東京から。
2026年、オリンピックもとうに過ぎ去った刻に。
競走馬の蹄が翔ける先に、
騎乗している青年の眼差しの向こう側に、
新しいサウンドトラックが鳴り響いている。
歌っているのは少女と鯨といくつもの時間か....
あるいは修羅の十億年か。



『赤い青』
新しいひび割れの中に芽吹いたものの色は赤
澄み切ったキレイな赤ではなくて
どこか黒ずんでいる赤さ
それは劣情に似ているように
空の青さとと対比するように淀みきっている
だけど、そこから黒さが薄れてしまったら
晴れ晴れとした気持ちでなにも覚えてはいないだろう
覚えていれることはなくなるだろう
赤黒さがドクンドクンと溢れだしていく
肌色の上にラインが引かれていく
青い色なんてないんだ
なぜなら体内に流れているのは
赤と黒
青は頭上か想像のなかにしかない



『猫』
トタン屋根の隙間に猫がいて
昼寝をしている
風は強いが冷たくはない
猫は近づいて一瞥だけして
目を向けてまたすぐに閉じた
太陽はどこか寂しげだ
猫は眠りこけて夢をみている
どんな夢なのか知らないけど
空から魚が落ちてくる夢かもしれない
鰯は青魚じゃない
新鮮な鰯はヒカリものだから銀色に輝いている
猫が見る鰯の夢は銀色の輝きに満ちている
トタン屋根は昔そんな色だったかもしれない
猫は夢なんか見てなかったりするのかも
見ているのは空から魚が落ちてくる夢
いや、猫が空を泳いでいる夢かもしれない
風が吹いて猫を撫でていく



『きっと』
きっと君はもう僕に連絡を取るってことはなくて
僕もきっとそうだし
だけど確かにあの時の時間は大事なもので
君に会えてよかったって本当に思ってる
僕だけかもしれないし君はそんなこと思ってないかもだけど
生活は続いていてやがて人生は終わっていく
どこかで君が幸せならいいと思えるぐらいには
懐かしい存在になってしまった
どこかですれ違ってもきっと知らないふりして
通り過ぎるだろうね僕たちは