Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『モテキ』

 昨日から公開された『モテキ』を新宿バルト9にてお昼に観てきました。時間をさらに巻き戻すと今日(24日)の深夜に恵比寿リキッドルームにてサカナクションのニューアルバム『DocumentaLy』の爆音視聴会=リリパみたいなものに行ってきました。


 彼女さんがサカナクション大好き度が年々増していまして、ある意味で着いていけない部分も出てきましたが、まあ前々回のリリパ『シンシロ』の時は行ったけども前回の『kikUUiki』は行ってないです。


 『MUSICA』の鹿野さんが司会したり、今回はDJでオカモトズの二人が回したり(ベーシスト・ハマオカモト=ダウンタウンの浜田さんの息子を観る度に「年を取ったんだなと思うわけですが」)したあとで来週発売の『DocumentaLy』をVJさんが映像を流しながら爆音でいち早く聴けるというやつでした。


サカナクション/ルーキー


 前日の金曜日は祝日でしたが出勤で人も少なくて結局五時には帰れずに六時過ぎまでやって仮眠したりして恵比寿に行ったのでけっこう体が疲労感。サカナクション好きがたくさんいて、その期待感のキラキラぶりに疲労感。僕は明らかに普通ぐらいに好きなのでそういう場所にいると場違いな感じと天の邪鬼気質からそうなってしまいます。


 しかし、僕が二回前に行った時はリキッドルームの二階のフロアでやってたんだけど今回は一階の普通のライブフロアだったので八百人ぐらいか、それが0時の開場&開演まで二階にいたらね、そっから入場したらきついわ。
 あれは完璧にリキッドルームのスタッフとかの運営というかもっと番号順にまとめるとかやれよ、ボケというヘタクソかという感じでまあ入るまでに疲れました。


 で、オカモトズのDJとかあって、サカナクションのメンバーが出てきてトークしてから爆音視聴会。ボーカルの山口君も言ってたけど今作はシングル『ルーキー』『アイデンティティ『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』三曲が入ってるからある種時系列になってしまう。
 震災後にまあいろんなことが作り手の中にありその葛藤から中々できなかったものだったり、何をどう伝えるかだとかそういう想いを後でのトークで話していた。


 山口君が前作『kikUUiki』が評価されなくて、そういうことからここに至るまでの『アルクアラウンド』2みたいのを求められてしまった事の反動とかの話もしてたけど、僕はまったく『kikUUiki』が響かなかった側なのでそのアルバムのツアーとか行ってるし武道館も行ってるけどはっきりいってそのアルバムの曲ではほぼライブなのに微動だにしないぐらいに乗れなかったんだよなあ、そのアルバム。


 今回のアルバムは聴いててよかった。けっこう聴くんじゃないかなって思った。ただ、シングル三枚入れなくてよかったのになあって思った。入れないと売れないとかあるんだろうけど『アイデンティティ』は好きじゃないから僕的にはいらない。『エンドレス』とかいい曲だと思うし、この年のドキュメンタリーとして多くの人に響くし届くと良曲だろうなあ。


 ただ、真ん中ぐらいの地味目な曲はくるり『ARMY』じゃね?と思うやつがあったんだがあの曲調と地味な辺りが。
 終わった後は鹿野さんとメンバートークとかあって、山口君がベースやキーボードがパーカッションとかドラム的なものを叩いてる所をこういうのあんまりしてるバンドいないと思うって言ってたけど、えっと、radiohead『There There (The Boney King Of Nowhere)』だったり僕の好きなDragon Ashでも最近だったらDJのBOTSさんですらも叩いてますやんか!というツッコミを脳内でしてました。山口君酔っぱらってたからなあ。


Radiohead - There There (The Boney King of Nowhere)


キャロットタワーエスカレーター下りながら太古の音、太鼓の音とか連想してた。アフリカの原住民とかも祭とかで太鼓叩いてるなあって。大昔から獲った獣の皮とかで太鼓を作って鳴らしてお祈りしたり、太古のリズムとして人間の本能に染み付いてるんだろうなあ、だからドラムが巧いバンドだとノレるんだろうなあとか。<って昔書いてるけど太鼓のリズムって本能的に人間の中に宿ってると思う。


 一曲目『アイデンティティ』が流れたリキッドルームのフロア揺れてましたね。ライブハウスには男女の汗や精液や経血なんかのニオイが混ざりあって密度を上げるから生暖かく人間くさい(岡崎京子さん風に言うと)。山口一郎が『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』のPVと同じダンスをステージでするというメタな光景が見れた。


サカナクション『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』


 『DocumentaLy』はよさげなので期待ですね。今年は何十年経っても特別な年になってしまうってのはまあそうだろうし、こういうクリエイティブなものにそれは当然反映される故に人の中に残っていく染み込んでいく確率は、シンクロする確率は高いのだろう。


 トークのあとはメンバーのDJでしたが、僕はあの手のDJではまったく踊れないので始発始まる頃に出ました。



監督・大根仁
出演・森山未來長澤まさみ、仲里依沙、真木よう子麻生久美子


派遣社員を卒業し、晴れてニュースサイトのライター職として正社員になった藤本幸世(森山未來)。波乱の“モテキ”を経て成長したかに見えたが、結局未だ新しい出会いもないまま。しかし、ある日突然“第二のモテキ”が訪れる。年下の雑誌編集者・松尾美由紀(長澤まさみ)、美由紀の親友で清楚系OLの桝本留未子(麻生久美子)、ガールズバーの美人店員・愛(仲里依紗)、毒舌のSキャラ先輩・唐木素子(真木よう子)など全くタイプの異なる4人の美女の間で揺れ動く幸世。果たして、幸世はモテキの波を越えて本当の恋愛にたどり着けるのか…? 昨年、TVドラマとして放送され話題を呼んだ久保ミツロウ原作による人気漫画「モテキ」を映画化。






 つうわけで『告白』『悪人』でヒットを飛ばしている川村元気さん企画・プロデュースだった『モテキ』映画版を観ました。客も昼の一時で九割型、ほぼ満員でしたね。
 漫画も一応読んでるしドラマも全話見てるんですが、どっちも見てなくても問題なく見れる続編になってた。ドラマでのサブカル好きが好きそうな楽曲と共に『モテキ』が来てしまった(じゃねえ?ぐらいな)藤本幸世(森山未來)の前に現れた松尾美由紀(長澤まさみ)、枡本留未子(麻生久美子)、愛(仲里依紗)、唐木素子(真木よう子)との物語。


 幸世がナタリーに就職する辺りから始まり女性陣と出会っていく、今回のメインのヒロインである美由紀との出会いがツイッターっていう辺りとか今っぽいシナリオですな。ちょこちょこ出てくるゲスト陣がサブカル界隈の人達なんでサブカル好きな人はまあ間違いなく楽しめますね。
 最後の方で亡くなったレイハラカミさんがちらっと出てますね、タイミング的にギリギリだったのかも。


 美由紀の友達の前髪パッツンの女の子って『SR サイタマノラッパー2』の主役の女の子っぽいなあ、たぶん彼女じゃないかな。見ながらあれ観た事ある誰だろうって考えてた。


 今作では長澤まさみがやっぱりよくて胸あるし美脚だし可愛いし〜って彼女をうまく使ってると思う。ただ、森山未來×長澤まさみと言えば二人の出世作『世界の中心で愛を叫ぶ』をどうしても思い出してしまい、後半はこれって『セカチュー』のあり得なかった別の可能性・可能世界・平行世界の話なのかと錯覚してしまったのは金曜深夜に『モテキ』ドラマがやっていた枠で放送してた『勇者ヨシヒコ』の最終回を観たせいだと思う。


 『勇者ヨシヒコ』はn次創作&ふざけMaxだったけど英雄神話な展開の正当派的な流れの「行って帰ってくる」になってた。でもそれは典型的な物語を踏襲だし、最後はなんかまた魔王みたいなのが出てきそうな気がするという映画化向けのフラグを立ててた。
 これは『ケイゾク』以降の堤さんとかああいう演出家系がドラマすると本気かギャグかわかりづらいけどそういうのやりますよね、期待か希望なのか皮肉かわからんけど。


 サブカルって何ですか?と聞かれてうまく説明できない事はここ数年何度かあるんだけど、メインカルチャーない時代にはほとんどのものが細分化されてサブになったらサブカルという概念はなくなるわけだけど、まあ僕ら三十路から上のサブカルにどっぷり浸かっていたような人には『モテキ』に出てくる小ネタのオンパレードは観ながら笑ってしまう、懐かしいものばかりだろうと思う。


 『スタジオボイス』『クイックジャパン』ロッキン系とかが聖書みたいに一時拠り所になっていたような人にはたぶん、僕はサブカル的なもの好きだけども僕の周りにいる文化系な人達ほどディープにハマってないのでわからなくはないけどそこに想い出とかないんだなあ、以外と。


 でも、小ネタな感じとかの面白さはわかるし。この映画でいうと藤本幸世が住んでるのが僕の家のご近所なんで彼の生活空間がモロに被るっていう・・・。駅前の西友とスタバとキャロットタワーね、ほぼ毎日に近いぐらい通りますし、でそこで踊り出した彼がジャンプすると埼玉副都心のスーパーアリーナ前に現れパフュームと一緒に『Baby cruising Love』を踊り出すっていうね。


 ナタリーが確か下北にオフィスあるんで下北沢の風景も出てくるし、三茶はまあそこから近いし、下北はサブカルの街だとやっぱ思うからサブカル的なものが好きな人には楽しい映像だろうなと。
 ただ、この映画最後の方まで観てると『DMC』(デトロイト・メタル・シティ)思い出しました。あれって渋谷系好きな男の子がメタルバンドをやってそのギャップやギャグぷりを笑わせてくれるんだけど、この作品の著者は渋谷系を実はバカにしたくて嫌いだからこそ出してた感があって、『モテキ』もそういうのが多少感じられた。


 サブカルってもはや終わっていて、実際には概念としては終わってるんだろうけど、監督の大根さんがサブカル大好き過ぎてこうなってんのか嫌いなのかは知らないけどサブカルという概念で映画が作れるってやっぱもうその分野は時代が過ぎてしまってるんだろうなって思うしもはやネタとしてしか使いようもないのかもしれないなあなんて観ながら思った。


 日経BPの柳瀬さんが呟いてたけど裏メッセージとしては「とりあえず働け」っていうのはまさにその通りだなって思った。観たらわかります、その意味が。


 ただ、真木ようこ出てるけど彼女のよさあんまし出てないような仲里依紗もある種おっぱい要員な気も。あと昔から好きな麻生久美子さんの役どころも噛ませ犬に近い感じかなあ。



 まあ、『セカチュー』の可能世界と思って観るのも面白かったし、この見方間違ってるけど今年の長澤まさみは来ているなあっていう。


N'夙川ボーイズ - 物語はちと?不安定


 たくさんの楽曲が流れたりフェスとかのシーンでライブも映ってたりするのもよかったなあ。星野源の曲もいいし、ここでフィッシュマンズみたいなとか、N’夙川BOYSってこういう音なんだとか、エンディングでかかる曲がもろに文化系な人が大好きなあの曲だったりとか。


 今年観たラブストーリー映画だと『ブルーバレンタイン』をオススメしますけどね。僕としては(笑)。


 けっこうヒットするんじゃないかな、さっき書いたみたいなサブカル・文化系小ネタ知らないような若い女の子もけっこう笑ってたし、まあ幸世のセカンド童貞を笑えるってだけかもしれないけど。まあ、毒にも薬にもならない感じはしなくはないんですがね。


 昨日っていうか今日のサカナクション観ていてツイートしたんだけど→


サカナクションが嫌いではなく好きな方。ただ、彼らは山口くんは狂っていない。僕が二十代以降惹かれるのは正しく狂っている人。園さんに古川さんや向井さんとか。その狂いに惹かれた後には今までの基準だと点数が低くなるのは当然。


だってロスジェネにおいてのダウンタウン(ごっつ時代)は狂っていたでしょ、彼らは価値観をいい意味でも悪い意味でも変えてしまった。境界線をなんなく飛び越えて賛否も含めて変える狂気=狂喜=凶器。


 僕が二十代後半から特に惹かれるのは正しく狂っている表現だなあと改めて思う。やっぱりライブに行ったらクラップハンズとか手拍子とかしないし、Dragon Ashは僕には別格なんでダイブとかするけどクラップハンズはしないな、基本的に。
 なんか息もできないぐらいの圧倒的なものが観たいよなって楽しませるよりは表現者の才能をみせつけられてこちら側が絶句するような表現に惹かれてしまう。


 数年前に大人計画の舞台観にいって一緒に観に行った友達と観終わった後に二時間ぐらいほぼ会話なくなるぐらいに打ちのめされるようなあの感覚。


 『モテキ』はカジュアルだからきっとヒットするだろうし観やすいんだと思う。でも、そういうものから外れたものを求める人も明らかに出てきてはいる。


 哀しい時に優しい物語に癒されるかというとすべての人がそうではないし、哀しい時に恐ろしく残酷なものだったりに癒されたりすることもあるから。


 幸世×留未子の終わりの方のくだりはコントに見えて面白かったけど、人の修羅場はコントにしか見えないという、悲劇と喜劇は紙一重。あとあのラストって何にも解決してなくね? お前仕事中だろ?って。勢いで突っ走ってる童貞感は出てるけどね。

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