Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『予測不能な最悪の結末』

 前にiTunesでフリーでもらえる音源でやけのはら『GOOD MORNING BABY』をiPodに入れてて今日たまたまシャッフルで聞いたら気に入ってアルバムを借りに行ってしまった。


やけのはら / GOOD MORNING BABY PV


 『熱海の捜査官』の最終回で占部日美子(銀粉蝶)が東雲麻衣( 三吉彩花)に一番大切な事を教えてって言って東雲が耳元で呟く時に音量をマックスにするとやっぱり『実はわたしたちは死んでるんですよ』と言っている。


 となると最後に死んだはずのバス運転手の新宮寺有朋が運転するバスに東雲と星崎剣三(オダギリジョー)が乗ってくねくねと曲がってトンネルの先は完全なる死後の世界か輪廻転生にも思える。
 死んでいるわたしたちが向かえる場所、私は先に行ってますと占部が書き残していた事を考えると輪廻転生なのか、完全な死or天国か地獄へと思ってしまう。

 
 一話の冒頭で蛇川方庵(小野栄一)がバスを停める役割を果たす時に新宮寺に「わしは死んだのか」「ここは死後の世界か」と聞いている。この台詞が実は真実ならばこの世界は肉体が死んだ後の世界でまだ精神的に死んでいない成仏していない人達の世界とも考えられる。だからこの世界でラインの向こう側に行くことは精神も死んで完全に消滅か輪廻転生するためにさらに向こう側に行くことを意味しているようにも思える。


 最初に消えたバスのナンバー「4392」なので黄泉の国と読めるし、南熱海署の車のナンバー「5963」でごくろーさんと読める。
 星崎と北島紗英(栗山千明)が最初に車で熱海にやってきた時の看板は「南熱海は天国かも ようこそ熱海へ」ってあるし。彼らの車のナンバーは「7292」なので中つ国みたいな、狭間の場所。東京で起きている事件はなんら語られない。二人はその事件から外されてバス喪失事件に派遣された。二人はその東京での事件かテロか大災害で死んで天国のような南熱海に来ている。


 広域捜査官ってなんなんだろう? この世とあの世を橋渡しする何か? 南熱海にいる人達は単純に迷いこんでそのまま住んでいる人だったり死んだ事に微妙に気付いている人などが一緒にいるような気も。


 犬塚発見(少路勇介)は三年前にやってきた。電気屋でバイトをしていた。三年前に死んで南熱海にやってきて、こちらでは警察官になっているみたいな、でも他の人はずっといることになるしなあ、わかんなくなってくるというか接合性がなくなるし、まあ、演じてた少路さんは同じく金ドラ『うぬぼれ刑事』でもバーテンダーだったりと、そして『大人計画』所属らしい、まあ『うぬぼれ刑事』はクドカンだし、『熱海の捜査官』には主宰の松尾スズキさんが出てたけど、彼の雰囲気はよかったなあ。三木作品に出る役者さんって舞台出身の人が多いけどおそらく感覚をつかんで馴染むのが上手いんだろうな。


 星崎が最初に敷島澪(藤谷文子)と話した時に「先生は自殺した事ありますか?」って聞いてたし。
 学校のゴーギャンの絵画は「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこに行くのか」ってあってゴーギャンはこの絵を書いた後に自殺を図るが未遂に終わる、遺書のような絵だったとか。


 でエンディングでかかっていた東京事変「天国へようこそ」の歌詞、歌ってるのは英語だけど。


僕が未だ夢を見てると云うのなら そっちが真実なのか
君こそ“我が人生”とか言う大芝居を打ってるくせに
机上のそのまた紙の上に描かれた花を君は嗅げるの?
そうだな、僕だったら永久に芳しいものを選ぶだろう
話しかけないで
僕は君を吸い取って飲み干してしまう
お粗末な いのち
永遠に憧れるほど莫迦じゃないけれど


空に本当の顔が有るのなら 昼と夜と果たしてどっち?
ねえ、どう思う?まあ僕はどっちも該当すると考えるよ
物事の本質にはいつだって相反する二者が鎮座するね
両極を求め続けた罪へ ぴったり時間通り罰が下るんだ


さようなら 僕の希望
さようなら 僕の絶望
自身を飼い殺してしまった所為さ
僕は生きていると言うより死んでいる
やあ 僕は君を吸い取って飲み干してしまう
近寄らないで
一線を越えた真実を いま確認するのさ
僕は死んだ


 これは『熱海の捜査官』の世界観自体だろうし、ある種のネタバレにもなっているんだろう


 太田出版から出た『熱海の捜査官オフィシャル本』を読んだが明確には書かれていない。答えは各自でというのが三木監督も思っているし推測が推測を呼ぶゲームと楽しめるドラマと言っている。でも、ガイド本の中には地名だったり小道具や名前などに秘められた意味が少しだけ明かされている。


 なぜ電話機はふつうに浮いているのか? 東雲が最初に発見されたバス停「道反(ちがえし)」の由来は、日本神話で黄泉路をふさいでいた大石だったり、四人が乗ったバスが最後に目撃されたのは「殯ノ宮(もがりのみや)」で殯とは、貴人が死んでから本葬するまでの間、遺体を仮に収めて置くことをいう等々の情報がオフィシャル本に地味に書かれている。


 三木監督の『図鑑に載ってない虫』『亀は意外と速く泳ぐ』などもこの作品とある意味でモチーフは近いらしい。『図鑑に載ってない虫』は試写会に当たって観に行って三木さんと主演の伊勢谷友介が挨拶してたが内容をだいぶ忘れてしまっている。


 三木さんはインタビューで「去る側」と「残る側」の話をずっとやってる気がすると答えていた。

 
 『ツイン・ピークス』の影響もだいぶあるみたいだけどこのドラマは久しぶりに何度も見返してしまう作品になった感じ。十年前に『ケイゾク』を何度も見返したようなゾクゾク感がある。

 
 『ケイゾク』も柴田が実は死んでるんじゃないかっていう話とかありましたけどね。『ケイゾク/特別篇 PHANTOM〜死を契約する呪いの樹』は最初は『Aya's PHANTOM』みたいな事だったし、映画は『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』ともろに『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』だったけど、解釈がいろいろできる作品は好きだなあ。まあ、『エヴァ』とかもそういうラインにあるし。


 何度も見直せるけど真相は闇の中というかトンネルの向こうにしかないみたいなのは好きだなあ。

ディス・ナイト・イズ・スティル・ヤング

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熱海の捜査官オフィシャル本

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熱海の捜査官

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熱海の捜査官 DVD-BOX

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