Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

SMASHING PUMPKINS@studio coast 8/11

likeaswimmingangel2010-08-13

 もう二日経ってしまったがスマパンのライブについて。スマパンとはアメリカのバンド・SMASHING PUMPKINSの事。1990年代グランジの代表的なバンドのひとつとしてニルヴァーナと並び称されていたので日本でも三十代ぐらいでその辺りの海外ロック好きには知られているしファンも多い。


ニルヴァーナのカートとスマパンのビリーはアメリカにおける『ジェネレーションX』世代である。『ジェネレーションX』とはケネディ政権の時代からベトナム戦争までの時代に生まれた世代。共に両親の離婚による傷が後々に影響を与えている。


 グランジの代名詞であるニルヴァーナSmells Like Teen Spirit』は『ジェネレーションX』世代の気持ちを色濃く現していると思われる。歌詞が「Hello, hello, hello how low,」とかまさに。


Nirvana - Smells Like Teen Spirit


 僕が初めて聴いたのは高校生ぐらいの時だろうか、友人の竹原がその頃海外ロックを聴き始めてオアシスやレディオヘッドニルヴァーナスマパンなどを家に行くとかけていた。
 僕はその頃特に興味もなくハマっておらず、レディオヘッドトム・ヨークの声を聞いて『何?この死にそうな声は』と言っていた。その数年後サマソニで『CREEP』のイントロが鳴った時にはフェンスに座って観ていたのだが絶叫した。


Radiohead - Creep (live SummerSonic, MTV, 2003)


 スマパンを観たのは前メンバー布陣と言ってもその時点で紅一点だったベーシストのダーシーが抜けて後任の女性ベーシストのメリッサ(スマパンは代々スタイルとしてベーシストは女性)で、ギターはジェイムス・イハ、ドラムはジミー・チェンバレンで行なった『マシーナ/ザ・マシーン・オブ・ゴッド』発売後の解散が決まった中でのツアーだった。大阪だったと思うが、それが2000年で10年前だった。


 正直に言うとそのライブを観てからスマパンにハマったのでその日聴いた曲などはほぼ知らない状態に近かった。メンバー全員がアコギを持って歌っていた『1979』なんかすごくレアな事なんだけどその凄さは僕にはわからなかった。隣で竹原が興奮しているのはわかったけど。


 それからスマパンをよく聴くようになってアルバム『サイアミーズ・ドリーム』収録曲『Mayonaise』が僕の人生で一番聴いた曲になった。だいたい僕の中ではこの『Mayonaise』とDragon AshCanvas』がいつも入れ替わりながら人生で一番好きな曲を争っている、その日の気分次第のようなものだけど。


Mayonaise - Smashing Pumpkins Live


 10年が経った。十代の終わりだった僕も二十代の後半を迎え三十路が寸前な年齢を向かえた。この十年が恐ろしく早くそして僕らの手ではどうしようもないほどのスピードで過ぎ去った、世界の時間軸を完全にねじ曲げた同時多発テロの9.11がありインターネットが世界を光速で繋いで立ちくらみを覚えるような情報の渦に巻き込まれていった。

 
 前ディケイドであるゼロ年代はあらゆる価値観が変化している過渡期だった。あるいは既存のものへの信頼が失われ信頼できるものが不透明になり全ての人が信じれるものを探すような、暗中模索を繰り返す十年だった。


 そういう中でスマパンの音楽は共にあった。だからこそ彼らのライブを観ると言う事はいろんな意味で感慨深いものだった。そして何よりもスマパンの中心人物でありボーカル・ギターのビリー・コーガンを観れることが、スマパンとして彼がギターをかき鳴らし叫ぶ姿が観たかった。


 実際には彼がスマパン解散後に組んだZWANでのライブを恵比寿に移る前の新宿リキッドルームで観ているし、その後ソロアルバムを出してSHIBUYA-AXでのライブも観ている。その時は入り待ちしてアルバムにサインをもらった。
 その時は前座という形で解散してしまった僕にとって大事なバンドのSyrup16gが演奏をした。完全なアウェイで五十嵐さんは咆哮し『笑ってんじゃねえぞ』と客に言ってSyrup16gらしさをかき鳴らしていた。


 サマソニに行くのを諦めていたのでスタジオコースト2Daysは嬉しかった。サマソニで観たいと思えなかったのと金がきつかったこと、ワンマンでやりそうな期待があった。2daysはワンマンでなかった。前日はムックと9mm、僕の行った日はアシッドアンドロイド(ラルクのドラマーのソロユニット)と凛として時雨と2バンドずつ前座というよりは対バン的な感じでのライブになった。


 新木場に行って最初に思ったのは凛として時雨ファンとアシッドファンが多くてスマパンファンが少なかった。平日の開場前からいるスマパンファンは少なめだった。最後にやるのがわかっていたのもある。


 三つの層に分かれているファンって感じが明確にあった。最初はアシッドだったがV系のファンのノリってこういう感じなんだっていうぐらいで歌は歌えてないしよいとは思えなかった。微動だにせずに終わるのを待った。
 それから凛として時雨。彼らは好きなバンドでもあるのでそこから音に揺られて体も揺れたし手も挙げた。ギターかアンプトラブルの間はドラムのピエール中野がドラムソロを数分やり続けるというハプニングもあったけど、時雨はやっぱりよかった。


 僕の中ではSyrup16gのようなものを感じている。凛として時雨の叫びのような咆哮はSyrup16gの五十嵐さんのようにまるで祈りのような咆哮で、それが音楽と重なってロックを鳴らしている。


 『Telecastic fake show』が来た時にはもうガンガンに揺れて気持ちよかったし、『nakano kill you』とかどんどん揺れた。凛として時雨は数回しか観てないけどどんどん進化しているような気がする。


凛として時雨 telecastic fake show


 咆哮する祈りが神に届かないのなら、その祈りとロックンロールで神を殺してしまえ、神に届かない祈りだとしても誰かには届く。


 彼らを観た事によって一組目の事は完全に忘却した。つうか凛として時雨との対バンでよかったよ、まあワンマンが一番よかったのはよかったけど凛としても観れてよかったし。


 で十年待ったスマパンが登場し、僕は真ん中のPAの前の柵に背中を預けて観ていたけど一気に年齢層が上がってスマパンファンでフロアが満たされていっていた。


 久しぶりにライブで叫んだと思うんだけど叫んだ。で始まったんだが一曲目は聴いた記憶がない、新曲か? サマソニや前日の内容を多少見ていたのだけどビリーは今の新しい体制のスマパンと過去のスマパンの曲を折り交えながらも新しいスマパンの方向性を魅せようとしていた。


 三曲目で僕が知っている曲が鳴る。再結成後に出された『Zeitgeist』からのナンバー。『Zeitgeist』以降の曲自体は日本でライブをしてないので、サマソニまで日本でプレイされていない。かなり新鮮な感じだった。サイトからダウンロードできる曲ももちろんやったし。


 ドラマーは前ドラマーのジミー脱退後(再結成の時ジミーはオリジナルメンバーでビリー以外では唯一残っていた)に公募みたいな感じで募集され決まっているのだが、彼は19歳なのだけども違和感はなかった。ジミーのような力強さはないけどもその方が今のビリーが目指すスマパンには合っているのかもしれない。ギターのジェフ・シュローダーはイハの様に華はなく地味。スマパンの歴代ベーシストは美人で最近新しく加入した名前がわからんがかなりの美女だった。


 四曲目で僕は泣いた。『Today』のイントロが僕の涙腺を優しく緩やかに崩壊させてその美しい音、目の前は滲んで僕は拳を高らかに挙げていた。多くのスマパンをずっと聴いていた人達がそうだったろう、歓声が爆発した。ビッグバンみたいに何かが生まれたように。


THE SMASHING PUMPKINS - TODAY (Live Japan w lyrics/letra)

↑これはサマソニの時の映像。


 新生スマパンの曲の反応と過去の曲の反応は圧倒的に違う。もうそれはどうしようもないことだ。それはビッグバンドとして仕方ないのないことだし苦悩する事だろうけど、あの時ビリーは嬉しそうに僕らに歌っていた。
 過去を完全に吹っ切って受け入れた上でプレイしていた様に見えた。だからこそ新曲と呼べるだろう『Zeitgeist』以降と以前の曲たちが今のスマパンの中で調和していた。


 僕が僕でいる限りスマパンスマパンだと言い切る事でしか前に進めなかった男が、メンバーの脱退、解散、不遇な時を越えてそれでも音を鳴らしてこれがスマパンだ、僕だと歌う彼が光り輝く過去を、いろんなものが変わっていく現在を呑み込んで未来を見据えて歌っていた。


 だから僕らも泣きながら叫び拳を挙げるしか応える方法はなかった。なんて幸せな時間なんだろうと思いながら。


 で、スマパンのサイトからダウンロードできる『A Song for a Son』をやったら地味に好きな『Stand Inside Your Love』をそして『ZERO』を。新旧織り交ぜて。昔だと『Disarm』『Perfect』『Cherub Rock』『Ava Adore』とか。『United States』『That’s the Way (My Love Is) 』『Tarantula』とかアルバム『Zeitgeist』の曲が聴けてよかった。


Smashing Pumpkins "That's The Way" on Letterman (w/ DL link)


 不思議だったのはビリーがなんでか「マイネームイズアケボノ」とか言い出してしこ踏んだりして滑ってたりした。あと本編後のアンコールの前にタレントのベッキー(なんか全然別人に見えたんだけど)現れてビリーの子供を妊娠したの言って僕の子供じゃないよというしょうもないやりとりのミニコントをやってたんだがあれはなんだったんだろうか、みんなポカーンとしてたんだけど。


 『Tonight, Tonight』とか『Bullet with Butterfly Wings』とか聴けたし最高だったな。一番好きな『Mayonaise』はやらなかったし、前日はやったみたいな『1979』も聴けなかったけど大満足だったし久しぶりにライブで体を揺らして声を出して心が高揚した。
 今年は数回しかライブ行ってないんだけど基本的に心に響かなくて、揺れる事もしない日とかわりとあったりして、けっこう心が死にかけて外部を遮断してる感じだったんだけど、また開けた感じでいろんなもので感じる事ができなくなりかけた気持ちをスマパンがまた引き戻してくれた。


The Smashing Pumpkins - Tonight, Tonight Live , MTV 1996


Smashing Pumpkins - Bullet with Butterfly Wings (Live NYC)


Shinkiba Studio Coast 8/11(Wed)
Setlist:


01.My Love Is Winter
02.Tristessa
03.Bleeding the Orchid
04.Today
05.A Song for a Son
06.Stand Inside Your Love
07.Zero
08.Tarantula
09.Disarm(Acoustic)
10-1.Over The Rainbow(intro)
10-2.?Drawn?(intro)
10-3.United States
11.Widow Wake My Mind
12.Perfect
13.Cherub Rock
14.That's the Way (My Love Is)
15.Tonight, Tonight
16.Tallulah Lu?(Sonata Arctia?/Acoustic)
17.Astral Planes
18.Ava Adore
〜Encore〜
19〜Bullet with Butterfly Wings


 ビリーが「東京っていつも『ステロイドを射ったディズニーランド』に見えるんだ!東京のスマパン(って書いてます)ファンのみんな、2回の素晴らしいライブをどうもありがとう!とても心に残るライブだったよ。またすぐ会おう!」とツイッターで書いてたらしい。とロッキンのサイトで中村さんが書いてたので知ってコピペしてみた。


 スマパンが大好きです。いやマジで本当に。だって去年書いた小説の第一部のタイトル『Mayonaise』だし。


The Smashing Pumpkins - Perfect

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