『毛深い闇』 - Spiral Fiction Note’s diary

　昨日、25日に『水道橋博士のメルマ旬報』vol.36配信されました。
　連載『碇のむきだし』の『夢幻ガール』は今回も西島大介さん書き下ろし挿画です。西島さんと共に『ひらめき☆マンガ学校』先生であるさやわかさんの新著『一〇年代文化論』も同日発売日でした。

　『一〇年代文化論』をさっそく読み終わった。〇七年頃の景色から今の一〇年代が見える。二十年代はきっと十七年辺りに出てくるものたちによって形成されて行くだろう、という予想、いや予感について。本書では「残念」という言葉の変化を絡めつつ書かれているが、確かに「残念」におけるニュアンスはだいぶ変化したものだと読みながら思った。
　最近読んだ柴那典著『初音ミクはなぜ世界を変えたのか？』と合わせて読むのもいいと思う。ボーカロイド、初音ミクの現象からそれらが広まる背景や文化の流れなんかがわかる。
　Perfumeについての話などは興味深い。彼女たちがロキノン系のフェスの一番大きなステージで歌うようになったりとかを見ていたのでいろんなものが融和している感じを受けていたから。
　秋葉原殺傷事件の加藤や黒子のバスケの犯人についても書かれている。次の十年代にはまた違った形で出てくる文化はもう数年すれば出てくるということならばもう動き出している、芽吹き始めているものであるということだ。だから面白い事はもう始まっているし追いつけるということでもある。
　渡辺あや脚本『ロング・グッドバイ』の第一話を見返していると『時代ってのは足が遅いんだよ、そいつはまだお前に追いついちゃあいねんだよ』って台詞があってこの新書とどこか符合した。

　メルマ旬報の樋口さんの連載が『帰ってきた、ひぐたけ腹黒日記』になっていて今度は相方っていうか編集者さんがポストの酒井さんになっていた。博士さんのラジオで言われてたけどつかさんの腹黒日記での当時角川、現、幻冬舎社長の見城さんとのやりとりみたいな作家と編集者ものだから新潮のスハンさんの次は酒井さんなんだね。
　今回の特別なおまけは未発表の『週刊藝人春秋』の劇団ひとりさんだったのでそこから読んだ。こちらは一冊の本になった時に収録されるのだろうか。

　今朝ブランチで女優の木村文乃さんが出ていて最近気になる女優さんだったので本の紹介コーナー出てて見てたんだけど彼女は窪さんの作品の映像化とかの時に主人公としてすごく合うんじゃないかなと思った。最近、気になる女優さんなんだけど。『よるのふくらみ』のみひろとか『クラウドクラスターを愛する方法』の彼に出て行かれた彼女とか。

　ニコラでお茶しながら園子温著『毛深い闇』を読む。小説『夢の中へ』の切子が出てきてる、舞台は園さんの地元の豊川市。
　山の中の死体のバレリーナはハリウッドに行った時のプレゼンしたという同じ名前の女の子がたくさん死んでるやつみたいな感じで『自殺サークル』小説が『紀子の食卓』に繋がったように『毛深い闇』も映画に繋がるかな。

　切子の自転車に関するところはスカラシップで撮った『自転車吐息』にも通じるし小説の『夢の中へ』にも通じている。園さんの地元の豊川市が出ている、『自転車吐息』で駆け抜けたあの商店街、『夢の中へ』でムツゴロウが最後走った商店街、最近では『みんな！エスパーだよ』で真野恵里菜が「私」という旗を持って駆け抜けたのは『自転車吐息』で園さんが自分で『俺』という旗を持ってやったことのセルフオマージュだった。そういう流れの先にこの『毛深い闇』はある。
　園さんがハリウッドに行った時になんとか大手の映画会社の大物に会えてシナリオをその場で思いついて話したら「うんうん、その先どうなんだ？」みたいな話があるが、それは同じ名前の女の子が森とかで何人も死んでいてみたいなものがあって、園さんはそれはいつかやってみたいと言われていた。
　今作ではいつもの園劇団と言えるように「ミツコ」が出てくる。母は「いずみ」だ。同じ名前の「ミツコ」が死んでいてという話と事故で目が見えなくなって父が死んでから網膜の手術をして見えるようになった少女である切子の物語がこの小説。
　この作品が映像化されたらやっぱり観たいし小説として発売されるのならそれはそれで楽しみだ。