Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『俺俺』


監督/三木聡
エグゼクティブプロデューサー/藤島ジュリーK.
原作/星野智幸


亀梨和也/永野均、内田有紀/サヤカ、加瀬亮/タジマ、中谷竜/ヤソキチ、
小林きな子/安西など


大江健三郎賞を受賞した星野智幸の同名小説を、アイドルグループ「KAT-TUN」の亀梨和也主演で映画化。監督は「インスタント沼「転々」三木聡。日常に不満を持ちながらも平凡な生活を送る青年・永野均が、なりゆきでオレオレ詐欺をしたことから、自分の知らない「俺」が増殖し、やがて「俺」同士が互いを削除しあうという異色サスペンス。「ミリタリーマニアの俺」「巨乳の俺」「全身タトゥの俺」など、亀梨が20人以上のキャラクターを演じ分ける。家電量販店で働く均に奇妙な仕事の依頼をしてくるミステリアスなヒロイン・サヤカ役で内田有紀、均の上司・タジマ役で加瀬亮が共演。ふせえり岩松了松重豊松尾スズキら三木組の常連俳優も顔をそろえる。(映画.comより)



俺たちはキャラクター化している 三木聡×宇野常寛『俺俺』対談
http://www.cinra.net/interview/2013/07/02/000000.php
↑この対談読んでそうだ観に行こうと思ってヒューマントラストに。やっぱりジャニーズものは女性客ばかりですね、当然ですが。
でも、ジャニーズも制作に関わっていてこうやって劇場に足を運んでくれるお客さんいるからできる冒険というものもあるし、それが前面化したのはV6岡田くんがぶっさんを演じた『木更津キャッツアイ』の人気とその後の映画二本に現れていたと思うのだけど。
だから、ジャニーズのタレントが出る映画はメジャーなものでありながらも実験的な事も映画監督の作家性とタレントがうまくかみ合えば異様なエネルギーを生む可能性がある。




今作はどうかと言えばケミストリーは起こったとは言えないのではないかと僕は思う。正直この映画よりも先に三木監督&宇野さんの対談を読んでしまって期待値が上がりすぎていたこともあるだろう。


僕は三木さんの熱心なファンではないが数本は映画館で観ているし『熱海の捜査官』なんて大好きだ。小ネタや岩松了さんやふせえりさんや松尾スズキさんなどのいわゆる常連チームの笑いは好きだし『時効警察』での雰囲気ももちろん好きだ。
今作は<「俺」が増殖し、やがて「俺」同士が互いを削除しあうという異色サスペンス>とあるが削除し合うのは後半のごくわずかであり増殖した「俺」すなわち亀梨和也の顔が何人もいて亀梨ファンなら楽しめるのか?うーむどうなのだろうか。


増殖する「私」と「世界」というのはまあ古典的なSFな感じもするし、僕が好きな作家だと漫画家の西島大介著『アトモスフィア』がそれをやっていてなぜ世界が増殖するのかというオチをマンガ・アニメ的なリアリズムできちんとオトしているのであれを知っていると今回のはやはり弱いと感じるし、途中から増殖する理由とか特になく増えていくので興味が失われてしまう。


加瀬亮がちょっと嫌みな社員で出ているのと内田有紀がなんか不思議な謎のお姉さんみたいな感じで出ているのはいいとは思う。内田有紀さんは離婚して『クワイエットルームにようこそ』の映画に出てからなんかかなり好きな感じになった。あと色気が増したというか、なんか微妙にエロくていい。


星野さんの原作を読んでいないのでどこまで映画用に直されているのかがわからないが星野さんは純文学の人なイメージだしエンタメに向いてる感じがあまりない。三木さんはシティボーイズなどエンタメをやってきた人だからうまく相乗効果が起きていないような気がやっぱりしてしまう。


やっぱり『アトモスフィア』がオススメかな、増殖する「私」と「世界」についての物語は。

アトモスフィア〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

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アトモスフィア (2) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

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