Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『ディクテーター』『ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。』

 公開初日の金曜日22時の回を観に自転車で六本木ヒルズにあるTOHOシネマズに行って『ボラット』『ブルーノ』のサシャ・バロン・コーエンが、今度は世界一危険な独裁者アラジーンに扮した映画『ディクテーター』を観賞。



監督:ラリー・チャールズ
製作:サシャ・バロン・コーエン
主演:サシャ・バロン・コーエン(アラジーン将軍)、アンナ・ファリス(ゾーイ)、ベン・キングズレータミール伯父さん)、ジェイソン・マンツォーカス(ナダル)、ジョン・C・ライリー


ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」「ブルーノ」のサシャ・バロン・コーエンが、今度は世界一危険な独裁者アラジーンに扮する。ニューヨークで身元不明人になってしまったアラジーンが巻き起こす騒動を描くコメディ。国連サミットに出席するためニューヨークを訪れたワディア共和国のアラジーン将軍は、何者かに拉致され、トレードマークの髭を剃られてしまう。スーパーの店員となって潜伏し、反撃の機会を待つアラジーンだったが、国連サミットに偽者が出席し、ワディヤを自由の国にすると宣言する。アラジーンは自らの独裁者生活を守るため立ち上がるが……。監督は「ボラット」「ブルーノ」に続きラリー・チャールズ。(映画.com)




 最初にキム・ジョンイルに捧ぐって出てから始まるこの独裁者を主人公にした映画は生まれた頃から独裁者として育てられたアラジーンは自分がしていることが正しくないとは思っていない。どんどん気に入らないものは処刑にしていく。そしてアメリカに渡り伯父によって影武者と入れ替わられてしまい、なんとか国連サミットのあとの民主主義へなるためのサインを防ごうとする。
 極めて差別的な発言と行動をしていく彼を見ていると不謹慎だと思える事ではあるが笑ってしまう痛快さがある。サシャ・バロン・コーエン自体も非常に頭の良い人なのでそうやっておちょくることで世界を露にしていく。
 今作では最後に彼がいう「民主主義」について語る独裁者の言葉がアメリカに対してのディスであ皮肉であるが、ただ独裁国家よりは最低な民主主義だとしても独裁国家よりはマシだという意味のことを話す。でも、石油の為に戦争の理由を作り上げて戦争して儲けている国に対してのブラックジョークであるこの映画を作って公開させることができるアメリカという国もなんだか懐が深いのかバカなのか、表現の自由をきちんと守っている国のよさでもあるんだろう。


 僕としたら『ブルーノ』『ボラット』『ディクテーター』な順で好きだけど『ディクテーター』がつまんないわけではなくて劇場でもかなり笑った。ただ前二作の方が笑ったイメージがある。刺激には次第に慣れていくので仕方ない。劇場で笑うほどの作品ってそんなにないとは思う。



 土曜日は三鷹市芸術文化センター星のホールでマームとジプシー『ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。』を観賞。


作・演出 藤田貴大


ワタシは、通り過ぎた。あの頃、ワタシたちが。
たしかに、住んでいた。あの場所を。ワタシは。
ワタシは、通り過ぎた。


<あらすじ>
取り壊される家。そこに住んでいた人々。
或る家の始まりから終わりまでの時間を。
或る家の始まりから終わりまでの記憶を。
遡って。彩って。鮮やかに。思い出して。
ワタシたちの。過去と現在。そして未来。


<出演>
伊野香織、石井亮介、荻原綾、尾野島慎太朗、斎藤章子、高山玲子、成田亜佑美、波佐谷聡、召田実子、吉田聡


 名前は聞いた事があったマームとジプシーを観賞。作・演出 藤田貴大さんは第56回岸田國士戯曲賞を受賞していて今注目株で勢いのある劇団。


 日常をひたすら反復する。実家での玄関での出来事のパターンが5つほど、妹のアパートの玄関の出来事などのシーンが何度もリフレインされていく。三日の出来事を描いているがおそらく一時間五十分ほどの上映時間で最初の一日がたぶん一時間以上はあったはずだと思う。それはひたすら反復するシーンによって観る側にそのシーンを見せつける。ただノイズぽい音楽と反復な演技をしているシーンは次第に眠くはなってくるのが難点。


 儀式とは神話を反復することだが、日常を反復すること、そして失われた現実があるとそこにはノスタルジーしか残らない。気持ちのいい感情の発露になり自己啓発セミナーな肯定が芽生える。繰り返されることを身体を持つ役者が繰り返す事で同じモノも次第に変化していくという意味で反復の作用は演劇的なのかもしれない。
 初めて観たけどこの劇団がノっているのはわかる。世界は拡張されずに縮小した中で留まり呼応していく。円は次第にノイズを出しながらも一定の世界のみを描く。を出て行く姉、倒れた父がいる病院に行く姉と時間軸が実はきちんとされてない。
 個々人の細分の記憶違いな多重層な世界をやるのでないが部隊は役者の動きと音楽で躍動していた。僕はけっこう楽しく観れた。でもけっこう泣いている人がいたと思う。ツボにハマると効果は絶大なノスタルジー要素は強い。


 反復を繰り返すことの効用が活きていた、それは確かに気持ちのよいものを連れてくるがやはりドラッグみたいな自己啓発セミナーを思わせるのは世代の問題なのかも知れない。彼らは僕(30)よりもしたで27とかぐらいらしいからなのかも。僕らは『エヴァ』のアニメ最終回におけるシンジの自己啓発セミナーやオウムなどの修行と称したものでの自己肯定を見てしまったからどうも苦手と言うか嫌なのかもしれない。
 半径半メートルなコンビニ的な世界で物語るのはたぶんゼロ年代からの引き続きだろう、世界へ向けて照準を合わせていければもっともっと面白くなりそうだと思った。


 だけどすごくノッてると思うし面白いんだよね、それは確かで。


ワタシは、通り過ぎた。あの頃、ワタシたちが。
たしかに、住んでいた。あの場所を。ワタシは。
ワタシは、通り過ぎた。

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