Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「甦りの血」@東京フィルメックス

 昨日は寝てなぜか一時間で目が覚めてしまった。雨だったので朝は走らなかったんだが、そんな日ぐらいはじっくり寝たかったけど起きてとりあえず銀行に行って家賃とか諸々振り込んで、給料日と同じ日に発売になる角川文庫の新刊の古川日出男著「僕たちは歩かない」と青山真治「Helpless」とアンソロジーの「ひと粒の宇宙」を購入。


 家に帰ってから「僕たちは歩かない」を読む、これは百ページ少しの短編なのですぐに終わる。まあハードカバーで出た時のもあるので初めて読むというわけじゃないけど。
 こちら側ではないあちら側の東京を見つけた料理人見習い達の物語、あちら側の東京は24時間ではなく26時間あるという少しファンタジー要素も入りながら、展開される。古川さんが何度か短編で書いている東京の物語には彼岸と此岸、つまりこの世とあの世を行き来する話が何作かあるがこれはその系譜。


 青山真治著「Helpless」はまず表紙の絵が田島昭宇氏な時点で小学生の頃から「摩陀羅」読んでファンな僕はジャケ買いに匹敵するのだが、青山真治監督は映画も好きだけど小説も何冊か読んでていてかなり好きな小説家の一人でもあるし、この作品は「Helpless」「ユリイカ」「サッドヴァケイション」の青山真治作品の「北九州サーガ」の第一部にあたる。


 「ユリイカ」は映画をずっと観てなくて小説を先に読んで濃厚な作品だったのを知って映画を観た。ちなみに初小説ながら三島由紀夫賞受賞、ちなみに古川日出男氏も「LOVE」で受賞。なぜか三島賞作家を買ったんだなあ〜。「サッドヴァケイション」は映画がする前に小説が出てすぐに読んでこれは映画で観たいって思った。


 「サッドヴァケイション」の主役の健次を演じたのは浅野忠信さんで、「Helpless」の主役を演じたのも浅野忠信さん、演じたのは同じ人物で「サッド〜」は「Helpless」の数年後の物語。「Helpless」の最後には浅野忠信さんのインタビューがなぜか載っている。ふつうは解説とかなんだけども。浅野さんが青山さんを語るという感じのものが収録。


 監督・青山真治にとって劇場映画デビュー作が俳優・浅野忠信にとって初主演作品だった事は非常に大きかったと思う。最近聴いた「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」での「アイドル集団としてのJAC」でコンバットRECさんが深作欣二監督が「風来坊探偵・赤い谷の惨劇」で監督デビューした時に千葉真一さんが初主演してその後一緒に成長し盟友となっていたことを語っていたがそれを思い出した。


 世に出るタイミングというものがかなり重要なものとして表現者にはある。誰と出会って共に出て行くかとかそのタイミングや出会えるかという運がその後に大きく影響してくる。だから青山真治浅野忠信がどちらも初同士で世に出て行った事で普通に出て行くのとは違う強さが信頼が生まれたのかもしれないなあと思った。


 それで三時ぐらいには有楽町の朝日ホールで東京フィルメックスの特別招待作品部門「甦りの血」を観に行く。豊田利晃監督の6作目にあたり主演は元BLANKEY JET CITYのドラマー中村達也さん。僕は「ナインソウルズ」が好きだったので観に行こうと、豊田さんが覚せい剤で捕まって公開が中止になりかけた「空中庭園」はレンタルとしたけど途中までしか観てない。




 豊田組でいうと渋川清彦、板尾創路マメ山田さんらが出ている。ヒロインのテルテ役は草刈正雄の娘の草刈麻有。音楽はTWIN TAIL中村達也勝井祐二照井利幸×豊田利晃)で衣装は伊賀大介、なんとなく伊賀さんっぽいと思ったら最後にスタッフロールで確認。


 ストーリー・善か悪か、人か魔か。人間が全世界を支配する以前の時代。その世界から追放された一人の男は、地の底から「蘇る」。それは、人間として生きるため、愛する者を守るため。


 闇の世界を司る大王(渋川清彦)が患う業病を癒すために招かれた天才按摩オグリ(中村達也)。「あの世行き」を怖れる大王にとって、この腕利きの男は必要不可欠であった。しかしオグリの兼好な身体への以上なまでの嫉妬心と、忠誠を誓わない小栗に腹をたてた大王は、彼を「あの世」へ葬る。しかしオグリは身体と心の自由を奪われた姿で現世へ戻ることに―。
 姫・テルテ(草刈麻有)は偶然にも森の中で、そんなオグリと再会を果たす。彼に想いをよせるテルテは彼を「人間」の姿へと蘇らせるために、一心不乱に地の果てにあるという「蘇生の湯」を目指すのだが…。テルテの無償の「愛」は、オグリに再び「生きる」命を与えることができるのか?たとえどんな憂いある時代であっても、現世を全うし、「生きたい」と強く願い人間から溢れだす「生命力」。この普遍的なテーマに、アダムとイブのような愛の起源を盛り込んだ本作は、大胆な音楽と映像の融合で観る者すべてを魅了する。


 と公開予定のユーロスペースからコピペ。


 去年も同じ場所で園子温監督「愛のむきだし」を観たのだけど、主演がAAAの西島君だったので女子高生が非常に多いのが印象的ではあったが外国人のプレスの人がかなり多数いて満席だった。今回は外国人プレスは前回ほどいなく、空席もだいぶ目立っていた。そういう意味でも前回は特別な空間だったのだなあと思った。まあ僕は嗚咽に限りなく近い号泣を最後の方はしてしまったし。


 「甦りの血」を観ながら思ったのは長いと感じた。実際には83分なのでテンポが悪いのだろう、画的にはそれだけで成り立つ感じの撮り方とか画だったり、それが長くスクリーンに写っていたように感じた。↑にあるがテルテがオグリに想いをよせる理由というかなんでそうなったのかいまいちわからない、それらしいシーンがなかったような。
 なんかこんなとこにいても長生きできないから逃げろみたいなことをテルテに言ったぐらいだったろうし、テルテが彼に想いをよせるのがわかりづらかったのでその後現世に甦った彼を台車のようなものに乗せて引っ張って行くほどの感情が彼女にあったと思えなかったので感情移入はできなかった。


 時折きれいな画がスクリーンに写しだされるんだが、なんか物語をあんまり語らない映画なのかなって思った。最初からTWIN TAILの音楽が鳴り響いているんだが、それにだいぶ助けられていると思ってた。今作では物語を語ると言う事に重点を置いてないと観ていて思ったので内心興奮も期待も少なくなった。僕は物語が観たいので。


 クライマックスでCGを使ったシーンがあって、ネタバレにならない程度だと首に関連するシーンはふざけているのかなって、もっとマジメにふざければいいんだけどそこまではいききってないから白けてしまった。



 終わった後に豊田さんの「Q&A」があってそこで「この作品はTWIN TAILの音楽がありきです」という発言をされていた。どうりでなんかPVちっくな画が多いというか画として成り立つけど物語が感じられないのはそこだったんだなって思った。それを聞いてから途中で劇場から出て帰った。家に帰ってから一時間半ぐらい仮眠してバイトに行った。


 もっと疾走するような感じの作品の方が豊田さんはいいなあと僕は思う、次回作を期待しておこう。


 サンボマスター「ラブソング」を聴いた。この曲はものすごく響く。激しくはないけども心情をものすごくゆるやかに包み込む山口さんの歌い方が素晴らしいし、サンボマスターネクストフェイズだと思った。


 会えなくなった、忘れる事の出来ない女の子の事を歌っている。だからそれは過去の事、過ぎ去ってしまったのに心に取り残されたままで次第に大きくなって心を支配していく。その感情はもうどこへにも行けない、だから苦しみ悶える。
 生きていくということは過去が増えて未来がすり減る事だ。過去は地層のように重なっていく、残り時間が少なくなっていけばいくほどに。未来に想いを馳せることよりも過ぎてしまった過去の地層に想いを馳せてしまう、それは不確定な事ではなく既に起きたことだから。懐かしくて温かくて哀しくてもう想い出の中にしかないから。


サンボマスター「ラブソング」


 清志郎さんが亡くなってから僕はRCや清志郎さんの曲を聴きだしたんだが、聴いているとサンボマスターってかなり影響されたんじゃないかなって思うことが多々あった。ソウルというか何か清志郎さんとボーカルの山口さんいは通じるものがあるんだと。この「ラブソング」はサンボマスターにとってRCの「スローバラード」みたいに大事な曲になるんじゃないかな。

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